【新潟記念】展開利を得るコスモフリーゲンの3連勝に期待 穴は前年覇者シンリョクカ
山崎エリカ

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外差し有利の馬場ながら、近年は先行~中団の馬が活躍
新潟記念は過去10年で逃げ馬の優勝がゼロに対して、追い込み馬は3勝。逃げ馬の3着以内は、2020年にジナンボーの2着が一度あるが、これは出遅れ後に後方の最内から進出し、3角手前で先頭に立ったもの。序盤から先頭という形ではなかった。
このように逃げ馬が苦戦する一方、追い込み馬は2着3回、3着4回ととにかく活躍している。これは夏の新潟開催最終週で馬場の内が荒れ、最後の直線で外を通す馬が有利なことも影響していることに加え、最後の直線で外を意識しすぎて、3~4角から早仕掛けしたことも影響している。
ただし直近6年は、逃げ馬が前半である程度リードを奪って、3~4角で仕掛けを待つレースが続いている。結果、追い込み馬よりも、先行~中団の馬が4勝、差し馬が1勝と活躍している。今年も外差し有利の馬場ではあるが、実力上位の逃げ馬が近年のようなレースをできれば、通用の余地は十分にある。
能力値1~5位の紹介

【能力値1位 クイーンズウォーク】
古馬の牡馬と初対戦となった2走前の金鯱賞を勝利。6番枠から五分のスタートを切り、楽に先行して2列目の外で進めていたが、デシエルトが飛ばしていったので、3番手を追走。道中は2番手のホウオウビスケッツをマークする形で進めた。
3角は同馬のひとつ外3番手で仕掛けを待ち、4角出口で馬場の良い外に誘導して直線へ。序盤で追われてから、ややもたついていたが、じわじわ差を詰めて先頭とは3馬身差ほど。ラスト1Fでグンと伸びて内のホウオウビスケッツをハナ差で捉えて勝利した。
金鯱賞当日はかなりタフな馬場で、前後半5F58秒2-63秒1の超ハイペース。前へ行った馬にはかなり不利な展開だったが、後続を大きく離して逃げたデシエルト以外は、実質的には差し競馬であり、展開には恵まれていた。しかし、今回出走馬の直近5走ではNo.1タイとなる自己最高指数を記録したことは高評価できる。
本馬は稍重馬場で時計が掛かった昨秋のローズSも勝利しているように、上がりの掛かる馬場や展開で、差す形がベスト。前走のヴィクトリアマイルは超高速馬場で追走にやや忙しさを見せていたが、アリスヴェリテの逃げで、意外と上がりが掛かったことや、外差し有利な馬場で16番枠だったことが好走要因となり、2着に善戦した。
今回は逃げ、先行馬が手薄で直近2走よりも上がりが速くなりそうなメンバーの組み合わせ。桜花賞から臨戦したオークス同様、内目の枠を引いたことで、好位から勝ちに行って最後に甘さを見せてしまいそうな感がある。
【能力値2位 コスモフリーゲン】
今年の日経賞を勝利したマイネルエンペラーなど、3勝クラスで善戦を繰り返すビッグレッドファーム生産馬は、オープン入りするとそのまま勢いに乗ることが多い。本馬もまさにそのタイプで、3勝クラスのサンシャインS(中山芝2200m)を2番手から抜け出して勝利すると、前走の七夕賞でも即通用して優勝した。
七夕賞では2番枠からトップスタートを決めてそのままハナへ。向正面でペースを落として馬群が凝縮したが、3角から促してリードを広げると、4角では激しく追って2馬身差で直線へ。直線序盤では2馬身差を維持していたが、ラスト1Fでさすがに甘さを見せ、ドゥラドーレスにアタマ差まで迫られたが、3着馬には3馬身半差をつけて勝利した。
七夕賞当日はタフな馬場状態で、前後半5F59秒4-61秒1とかなりのハイペース。内有利の馬場をロスなく立ち回ってはいるが、自ら差し、追い込み勢が有利な展開を作りながら逃げ切った内容は強かった。
今回は逃げ馬不在でハナへ行く気になれば、楽に主導権を握れる組み合わせ。前走のように逃げても悪くないが、内のグランドカリナンを先に行かせて2番手なら、より前が残りやすいペースに持ち込めるだろう。各馬が外差し有利の馬場を意識した騎乗であれば、そのまま前から押し切ってしまう可能性も十分にある。今回の本命候補だ。
【能力値3位 ヴェローチェエラ】
2走前の函館記念で初重賞制覇を達成。レースでは8番枠から五分のスタートを切り、コントロールして無理なく中団外目を追走。向正面でも中団の外で進め、3角手前ですっと動き出す。
3~4角でちょうどペースが落ちたところで、一気に先頭に並びかけ、4角で3頭分外から1馬身3/4差ほど前に出て直線へ入る。序盤で2馬身半ほど突き抜けると、ラスト1Fではさすがに後続に詰め寄られたが、余裕を持って1馬身半差で完勝した。
当時は超高速馬場ながらレース上がり3Fが35秒4も要したように、前後半5F58秒1-59秒5の緩みない流れ。後方有利の展開に恵まれてはいたが、それほどペースが落ちていない状況下で、4角では外を回すロスを作りながらも最後までよく伸びていた。
前走の札幌記念は5着。10番枠からやや出遅れ後に挟まれたことで、立て直して最後方列の外から追走。道中もそのままの位置で進めると、3~4角ではロスの大きい仕掛け。超高速馬場で上がりの速い決着なら大敗レベルの仕掛け方だったが、当時はタフな馬場かつ前崩れの展開になったことが味方して、5着に食い込んだ。
札幌記念では展開こそ恵まれているが、好位の最内から押し上げたトップナイフ(10番人気)が勝利し、3、4着も最内を通った人気薄だったように、内有利の馬場状態だった。本馬も後方の最内を立ち回れていれば、3着はあった可能性が高い。
今回は外差し有利の馬場状態で、15番枠と枠には恵まれた。ハイペースになれば馬場を利して浮上のチャンスはあるが、前有利の展開になった場合には届かない可能性が高い。逃げ、先行馬が手薄の組み合わせだけに、位置が後ろ過ぎて苦戦するのではないかとみる。
【能力値4位 ブレイディヴェーグ】
レベルがそれほど高くなかったとはいえ、3歳でエリザベス女王杯を優勝。その後、長期休養明けとなった昨秋の府中牝馬Sも制した実績馬。府中牝馬Sは5番枠からやや出遅れ後に挟まれて位置を下げ、後方から中団中目のスペースを拾い進めていく形。向正面で外に誘導し、中団やや後方で我慢させた。
3~4角で中目から外に誘導していき、じわっと仕掛けながら直線では外へ。序盤の伸び始めはやや地味だったが、ラスト2Fですっと伸びると一気に2列目まで上がり、ラスト1Fではしっかり抜け出して1馬身1/4差で完勝した。
当時は“コンクリート馬場”で前後半4F46秒9-46秒0のややスローペースだったが、ラスト2F11秒4-11秒0と加速する展開を、一気に差し切る非凡な末脚を見せた。ちなみに、同馬がラスト1Fで先頭に立ったところでのJRAの速度計では67km/hを計測していた。
上記のように本馬は末脚を生かしてこそのタイプ。2走前のドバイターフでは平均ペースで流れたなか、出遅れを挽回して好位の中目を確保。3~4角でもあまりペースが落ちない状況下で2列目の外と、勝ちに行ったために末脚が不発して、7着に敗れている。
本馬は芝マイルでも悪くないが、ベストは追走が楽な中距離。ただ1番枠となると、ある程度勝ちに行く必要がある。さらに今回はGⅠ・安田記念で4着に善戦後であり、相手強化かつ休養明けの一戦。初コンビとなる津村明秀騎手を起用した辺りにも、ここが目標ではないことが推測されるだけに評価を下げたい。
【能力値5位 シランケド】
キャリア5戦目の紫苑Sでは、1勝クラスの身ながら3着に健闘。その後、休養明けで挑んだ1勝クラスの戸畑特別(小倉芝2000m)では、馬体重14kg増と成長を見せ、オープン通用級の指数を記録して5馬身差で圧勝。この時点で後に活躍することは必至の、高い能力を示していた。
2走前の中山牝馬Sでは初重賞制覇を達成。11番枠からやや出遅れ、押して挽回し好位を狙ったが、好位列が雁行状態で窮屈になり、一列下げて中団の外を追走。道中は中団の外でホーエリートをマークして進め、仕掛けを我慢させた。
3~4角ではホーエリートの外から押し上げ、4角では同馬に張られて4頭分外を回るロスもあったが、直線序盤ですっと2列目に上がる。ラスト1Fで内のホーエリートとの叩き合いとなったが、アタマ差で振り切った。
当時は標準的な馬場で、前後半4F48秒2-47秒5の平均ペースだが、レース最速がラスト5F目の11秒4。向正面で逃げ馬がペースを引き上げたことでやや差し馬に有利な展開に恵まれた面はあった。それでも外々からロスを作りながらも最後までしぶとく粘った内容は高く評価できる。
前走のヴィクトリアマイルでは勝ち馬アスコリピチェーノとタイム差なしの3着。12番枠から出遅れ、後方からの追走。道中でじわっと挽回したが、後方馬群の中目で包まれてしまい結局、最後方列付近で3角に入る。3~4角では後方中目で動けず、単独最後方で直線へ。
直線序盤で中目のスペースを拾ったが、ラスト2F地点では前が壁。一度外に誘導してラスト1Fで捌き切るとグンと伸びて内目から強襲した。クイーンズウォークに並んでゴールしたが、ハナ差で敗れて3着だった。
当時は超高速馬場で、前後半4F45秒4-46秒7のややハイペース。アリスヴェリテがペースを引き上げてくれたことで、最後方からでも突っ込んでこれたという側面はある。ただ、思い切って馬場の良い外を狙っていれば、あるいはラスト2Fで前が壁にならなければ、勝っていた可能性も十分にある内容だった。
本馬はマイルの前走で、序盤の追走に苦労していたように、本質的には芝1800mくらいが合っており、舞台となる芝2000mでも悪くはない。ただ、前走である程度恵まれて自己最高指数を記録。その後の休養明け初戦となるだけに、今回は不安を残す。完全ピークの状態では挑めないだろう。
穴馬は昨年の新潟記念の覇者シンリョクカ
シンリョクカはデビュー2戦目の阪神JFでリバティアイランドの2着だった素質馬。その後は激走の疲れが強く残り、伸び悩んだものの、昨年3月の中山牝馬Sで3着と善戦を果たした。続く福島牝馬Sでは転倒のアクシデントにより競走中止となったが、復帰戦となった昨夏の新潟記念で初重賞制覇を成し遂げた。
前年の新潟記念では、4番枠からまずまずのスタートを切り、軽く促されると先頭列へ。外から競ってきたアリスヴェリテを行かせ、その外2番手を確保し、道中は同馬の3馬身ほど後ろで進めた。
3角からアリスヴェリテとの差を徐々に詰め、ラスト2Fで先頭に立つ。ラスト1Fでは外から迫るキングズパレスを振り切り、最後は中目を捌いたセレシオンの急追をハナ差で振り切って勝利した。
当時は標準的な馬場で前後半5F58秒9-59秒1の平均ペース。例年同様、最後の直線では外に出すほど伸びる馬場で、直線では多くの馬が外に進路を求めていた。そんななか、本馬は早めに仕掛けて外差し勢を振り切る好内容を見せた。
次走のエリザベス女王杯でも4着に善戦したが、その後は体調が下降線となり、続く中山金杯では12着に大敗。3走前の白富士S(L)でも6着に敗れたが、立て直された直近の2走では良化を見せている。
特に、前走ヴィクトリアマイルでは、差し有利の展開を好位馬群の外目から、最後の直線で馬場のど真ん中からしぶとく伸び、上位4頭とは0秒2差の6着に善戦している。
今年から新潟記念は、ハンデ戦から別定戦に変わり、昨年以上の好メンバーが集まった。しかし、昨年よりも展開には恵まれそうな組み合わせとなっており、完全復活しているようなら通用の余地がある。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)クイーンズウォークの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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