【新潟2歳S回顧】リアライズシリウスがレースレコードタイ4馬身差V インパクト十分も課題が残る内容
勝木淳

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リアライズシリウスの真価
新潟2歳Sはリアライズシリウスが後続に4馬身差をつけ、圧勝。2着はタイセイボーグ、3着はフェスティバルヒルで決着した。
リアライズシリウスが叩き出した記録はインパクトに満ちている。着差0.7秒差は2015年ロードクエストと同じで、1600m戦となって以降、2番目の着差でもある。勝ち時計1:33.4は2014年ミュゼスルタンに並ぶレースレコードタイ。大物登場と書けるだけの説得力は十分ある。
一方で、ロードクエストもミュゼスルタンも3歳春は勝てなかった。ロードクエストはその後も重賞をふたつ勝ったので、一切活躍しなかったとはいえないものの、新潟2歳Sで受けた評価ほどではなかった。リアライズシリウスへの躊躇はそんな歴史を踏まえて生まれる。たぶん、余計なお世話だろう。
今年も頭数が10頭と少なく、ご多分に漏れずスローペースになった。フォトンゲイザーがゆったり先手をとり、序盤600m35.7、800m通過は47.8と遅い。中盤で極端にラップは落ちなかったものの、後半800mは11.9-11.2-11.0-11.5。レース中間地点に向かい、ラップを落としつつ、最後の直線で一気に上昇する構成は新潟2歳Sの典型のようなもの。
これを2番手から粘ったリアライズシリウスの粘り腰は評価に値する一方、上がり最速を記録したフェスティバルヒルが3着止まりだったように、ライバルたちの脚力への物足りなさも残る。またリアライズシリウスもレース巧者というには、序盤のスタートの遅れなど不安要素がある。
今回は少頭数、みえみえのスロー、かつ外枠だったので、挽回に手こずることはなかった。これが多頭数で序盤から流れる競馬だったら、出遅れが致命傷になりかねない。
父ポエティックフレアの絶妙な配合バランス
そんな課題も若駒ゆえのことであり、長い目で見守りたい気分が強い。それだけ未完成な状態で重賞4馬身差は裏を返せば、可能性を秘めているのは事実だ。心身の成長とともに課題を克服する姿を楽しみたい。
父ポエティックフレアは初年度からリアライズシリウスを出し、一気に注目を集めた。同時にポエティックフレアが受胎率が低く、すでにシンジケートが解散されていることなども情報として表に出てくる。
英国2000ギニーなど8ハロンのGⅠを2勝したスピードは日本競馬にも適合できた。父系はニューアプローチ、ガリレオと日本の高速馬場で苦戦する血統構成だが、母系にはデインヒル、ニジンスキーと日本向きの血もみえる。
サンデーサイレンス系と交配できるポエティックフレアのバランスは絶妙なだけに、事実上、種牡馬としての道が閉ざされたのは残念でならない。サンデーサイレンス系飽和状態の解消という意味でも、救世主になり得た存在かもしれない。
ダリア賞2着タイセイボーグの好走
2着タイセイボーグは新馬勝ちからダリア賞2着と一貫して1400mで経験を積み、マイル戦で結果を残した。前走ダリア賞組はあまりにつながらないので、データ系の記事でも触れられなくなった。
連対馬を出したのは2010年マイネルラクリマが最後なので、過去10年データというくくりだと、惨敗という結果になってしまう。それもダリア賞2着馬の好走となると、09年1着シンメイフジまでさかのぼる。
今年の新潟2歳Sが10頭立てだったように、若駒のローテーションは近年、極めて慎重であり、かつピンポイントで結果とクラシックに必要な経験の両どりを狙ってくる。出世レースに有力馬が殺到すれば、その狭間に位置するレースが先祖帰りしている感がある。
タイセイボーグのダリア賞経由の好走は、過去のトレンドへの回帰の一環かもしれない。狭間のレースは、数をこなして積極的に出走してくる馬が経験を強みに好走する可能性があるのではないか。
3着フェスティバルヒルは皐月賞馬ミュージアムマイルの妹であり、上がり32.5の末脚は確かに血統的なスケールを感じた。一方で、前半800m47.8の緩い流れであっても、後方からとなってしまう現状は勝ちにいけない。ここは大きな課題だろう。
一方で無理やり先行させて機嫌を損ねたら、パフォーマンス発揮への妨げになりかねない。この辺が実にもどかしい。能力の高さはゴール前のタイセイボーグとの攻防からも見えたので、今後は立ち回りへの課題をいかに克服するかだろう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。
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