【クイーンS】先行力高いクリスマスパレードが有力 差し決着ならココナッツブラウンの一発に期待

山崎エリカ

2025年クイーンSのPP指数,ⒸSPAIA

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札幌芝1800mは内枠有利の舞台

札幌はJRA全競馬場の中でもっともコーナーの距離が長いコース。コーナーで外を回ると距離損が大きくなり、札幌芝1800mは最初のコーナーまでの距離が185mと極めて短く、外枠の馬はスタートも二の脚も速くないと初角の時点で外を回ることになる。

このためロスなく立ち回れる内枠有利なコースとなっており、クイーンS(過去10年)も1~2番枠は【4-4-5-7】と好成績だ。ただ今回は内の2頭は差し馬だけに、その優位性を生かし切れない可能性もある。

能力値1~5位の紹介

2025年クイーンSのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 アルジーヌ】
ここ4戦を指数-20以上の高レベルでまとめており、今回は能力値1位となる馬。4走前に牡馬混合のカシオペアS(L・京都芝1800m)を勝利した。

このときは8番枠から五分のスタートを切り、コントロールしながらの先行策。ほぼ馬なりで好位の中目を追走。道中は緩みなく流れたが、好位を維持したまま外に誘導されて3角に入った。

しかし、3~4角では前が雁行状態となり、再び中目にいき直線へ。直線序盤で追われると一気に抜け出して2馬身のリードを奪った。ラスト1Fでトゥデイイズザデイら外差し勢に詰め寄られたが、3/4馬身差で振り切った。

この日は馬場の内が荒れており、本馬は上手く内を避けてレースを進めていた。標準馬場で前後半4F46秒1-46秒7の平均ペース。緩みなく流れて後方有利な展開を好位から早めに抜け出して勝利した内容は高く評価できる。

また芝1600mの前走ヴィクトリアマイルでも勝ち馬とタイム差なしの4着。このときは3番枠からやや出遅れたが、促しながら追走して中団の内まで挽回。道中は前が飛ばしていくなかで、前のアドマイヤマツリとのスペースを詰めずに中団を維持して進めた。

3~4角では前のアドマイヤマツリとのスペースを詰め、4角出口で同馬の後ろから馬場の良い外へ。直線序盤で追われて3番手に上がり、ラスト2Fで前のアドマイヤマツリに並びかけようとしたが、ここで甘さを見せた。ラスト1Fでも踏ん張っていたが、内外から来られてクビ+ハナ+アタマ差の4着となった。

この日も馬場の内が荒れていたが、最後の直線でスムーズに外を走れていた。また前後半4F45秒4-46秒7のハイペースで前に不利な展開を、しっかり中団からレース出来ていたのも好走要因だろう。

このように本馬は芝1600m~芝1800m、超高速馬場から標準馬場までこなせる。近走のレースぶりに弱点を感じさせないが、どれも上手く乗られており、これ以上を感じさせない。

必ず押さえたい馬ではあるが、かつてのように馬を動かせなくなっている印象がある川田将雅騎手が鞍上となると、取りこぼしがあっても不思議ない。

【能力値2位 アリスヴェリテ】
京都で行われた昨年のマーメイドSで重賞初制覇を達成した馬。同レースは13番枠からまずまずのスタートを切り、軽く押して内のベリーヴィーナスに競り掛け、1角でハナを取り切った。道中もペースを緩めずに進めていたが、3角の上り坂でさらにペースを引き上げた。

3角では2番手のベリーヴィーナスに大きな差。4角でもまだ余裕ある手応えで6馬身のリードで直線へ。直線序盤で追われたがさすがに減速。ラスト1Fでしんどくなったが後続も苦しくなり、2馬身差で粘り切った。

このときはコンクリート馬場で前後半5F58秒3-58秒9の緩みない流れ。本馬はメンバー中もっとも軽いハンデ50kgに恵まれた面もあるが、全ての先行馬が11着以下に崩れる前に不利な展開を押し切ったことは高評価できる。

本馬は折り合う競馬では1勝クラスでも苦戦していたように、逃げてこそのタイプ。前走のヴィクトリアマイルでも大外18番枠からハナ争いを制して淡々としたペースで逃げ、0秒1差の5着に粘っている。

今回も逃げることが出来れば、実質内枠の競馬である程度ペースが速くても上位争いに加われると見ているが、本馬は2走前の福島牝馬Sでひとつ外の枠からアマイに被されたように、逃げ馬としてはゲートも二の脚も速くない。

今回も本馬のひとつ外の枠にテンの速いクリスマスパレードがいる。同馬はハナにこだわる馬ではなく、アリスヴェリテを行かせて2番手というのが順当な読みだが、クリスマスパレードは今年1月の中山金杯では、二の脚で内からハナを主張した馬たちに被せて逃げている。このことから今回はアリスヴェリテが逃げられない可能性も視野に入れたい。

【能力値3位 フェアエールング】
時計の掛かる馬場の福島や小倉の重賞で実績を上げ、2走前の小倉牝馬Sで重賞初制覇を達成した馬。その2走前は3番枠からまずまずのスタートを切り、軽く促して進めていたが、外の各馬が速く中団の内目を追走。道中は激流の中団中目でクイーンズウォークをマークしながら進めた。

3~4角では外に誘導しながら位置を上げていくクイーンズウォークを追いかけ、4角で好位列に並びかけて直線へ。直線序盤で追われてじわじわ伸びて2列目に上がる。ラスト1Fで甘くなったクイーンズウォークをかわし、先に抜け出したシンティレーションに並びかけ、1着同着となった。

ここは標準馬場で前後半5F57秒7-60秒7とかなりのハイペース。このときは外からハナを主張したアリスヴェリテに対して内のベリーヴィーナスが抵抗したことで激流となり、後方有利の展開となった。つまり、本馬は展開に恵まれての勝利だった。

今回はアリスヴェリテとクリスマスパレードが競り合えばある程度ペースは上がるが、現在の札幌芝が高速馬場とはいえ、2走前ほどペースが上がるとは考えにくい。

超高速馬場でややスローペースとなった初音S(3勝クラス・東京芝1800m)では6着に敗れているだけに、今回の条件は向かない可能性が高い。

しかし、前走の福島牝馬Sでもフィールシンパシーとの2着争いを制するなど、崩れていないことは評価できる。また今回は2番枠と枠にも恵まれた。

【能力値4位 クリスマスパレード】
2走前の中山牝馬Sで0秒1差の3着に健闘。このときは6番枠からやや出遅れたが、二の脚でじわっと挽回して2列目の外を追走。最終的には2番手、道中は先頭のペイシャフラワーから2馬身ほど離れた位置で進めた。

3~4角ではじわっと仕掛け、ひとつ外からペイシャフラワーとの差を詰めて1馬身3/4差で直線へ。直線序盤で追われてじわじわと伸び、ラスト1Fで一瞬先頭に立ったが、ラスト1Fで甘くなり外から差されて3着まで。

ここは標準馬場で前後半4F48秒2-47秒5の平均ペースだったが、ラスト2F目の向上面でペイシャフラワーがペースを引き上げたことで前不利なレースになった。本馬は同馬がペースを引き上げても2馬身差を維持したことで、ハイペースに巻き込まれて終いが甘くなった。

そんな中で後のヴィクトリアマイルで大接戦の3着となったシランケドと0秒1差なら上々。本馬もアリスヴェリテ同様にキレる脚はなく、前に行ってしぶとさを生かしてこそのタイプだが、アリスヴェリテよりも二の脚は速い。

前走のヴィクトリアマイルは1番枠から出遅れ。そこから促してはいたが、序盤からペースが速くて挽回できず、中団やや後方の最内を追走した。

3~4角で馬場の荒れた最内を通ったこともあり、最後の直線で追われてもじわじわ。ラスト1Fで内ラチ沿いから食らいついたが、勝ち馬アスコリピチェーノと0秒4差の9着までだった。

前走の敗因は出遅れて前に行けなかったことと、終始馬場の荒れた最内を通ったこと。本馬同様に出遅れ、3~4角で最内から挽回を図り16着に大敗したボンドガールも先週の関屋記念で2着に巻き返している。

今回は立て直されての一戦。本馬はゲートに甘さを見せるときもあるが、スタートさえ決まれば上位争いに加われるだろう。

鞍上の横山武史騎手は、序盤でしっかり出して内目に収めて仕掛けを待つことを得意としており、本コースでは2020年以降24勝と圧倒的に乗れている。今回は不利な13番枠ではあるが、二の脚の速さを生かして内目に収めてくると見て本命候補としたい。

【能力値5位 ココナッツブラウン】
前走の錦Sを非凡な末脚を見せて勝利した馬。その前走は7番枠から出遅れて後方2列目の内を追走。道中も後方馬群の中目で我慢させて3角に入った。

3角で中目のスペースをじわっと押し上げ、4角でも前のスペースを潰して4角出口で外目の進路を確保。直線序盤で一気にキレを見せて堂々の先頭に立ち、1馬身半ほど前に出た。ラスト1Fでそのまま鋭く突き抜けて2馬身半差で完勝した。

ここは高速馬場で前後半4F47秒5-45秒6のかなりのスローペース。ほぼ直線だけの競馬でラスト2F11秒0-10秒9。ラスト2Fで先頭と2馬身あった差を一気に詰めて1馬身半ほどリードを奪った。このとき70km/h台に到達しており、破格のキレ味だった。

本馬はデビューから馬体重二桁以上の増減を繰り返している馬で、大幅馬体減の昨秋ローズSや2走前の斑鳩S(3勝クラス・京都芝1600m)ではテンションが高く、掛かって馬券圏外に敗れた。

しかし、昨年の函館、札幌の滞在時は大きな体重の変動がなく、安定した成績を残しており、陣営もそれを見越して今回は7月中旬から札幌に滞在している。

このことから今回は前走から大きく体重を減らしている可能性は低い。差しが決まる展開なら本命も視野に入る一頭だ。

【能力値5位 ビヨンドザヴァレー】
4走前のターコイズSの2着馬。このときは12番枠からまずまずのスタートを切り、促して先行して2番手の外を追走。道中で少し我慢させ、2列目の外に下げて3角に入った。

3~4角で2頭分外からコントロールしながら仕掛けを待ち、4角で外からドゥアイズが競ってくるとじわっと仕掛けて先頭列付近で直線へ。直線序盤で追われて先頭列を維持し、ラスト1Fでも踏ん張っていたが最後はアルジーヌに差し切られて1馬身差の2着となった。

当時は超高速馬場で前後半4F46秒3-46秒9の平均ペース。道中で緩みが生じており、前有利な展開ではあった。しかし、内がやや有利の馬場状態で内に入れようと外枠から積極的に出して行ったにもかかわらず、一度も内に入れられなかったことは痛かった。

本馬はその後の中山牝馬S、阪神牝馬Sでも着差0秒2差の4着に善戦。中山牝馬Sでは2番枠から好スタートを切って、じわっと下げて中団の最内を追走。ここは向正面で逃げ馬がペースを引き上げたことで前に不利な展開。中団に下げたことが吉と出ての善戦だった。

しかし、2走前の阪神牝馬Sは2番枠からまずまずのスタートを切って、最終的には控えて2列目の内を追走。内と前有利な展開&馬場を考えると絶好ポジションだったが、道中で前のタガノエルピーダが壁となり中目に誘導。しかし、ここで包まれて位置が下がり4着と不完全燃焼だった。

前走のヴィクトリアマイルは15着と大敗。ここでは最序盤から脚を使って2列目の外を取りに行ったためハイペースに巻き込まれた。前走でしっかり崩れているだけに、今回は調整しやすいだろう。展開が向けば巻き返せる。

能力値5位以下からは3歳馬レーゼドラマを推奨

レーゼドラマはデビュー4戦目でフラワーCを優勝。このときは11番枠から五分のスタートを切り、押して二の脚の速さで先行。最終的には内のハードワーカーを行かせ、道中は同馬の外2番手で進めて3角で楽に先頭列に。

そのまま2列目をやや離して先頭を取り切り、4角出口で仕掛けて1馬身3/4差で直線へ。直線序盤で差を広げて2馬身半差。ラスト1Fでもその差を維持して完勝した。

このときは標準馬場で前後半4F47秒8-47秒7の緩みない流れ。例年のフラワーCは前半4F49秒台で速くても48秒台だが、今年は47秒台で通過し、3角から動いて後続の末脚を封じたことは高評価できる。

また2着のパラディレーヌがオークス4着、4着ジョスランが次走で1勝クラスのカーネーションCを完勝しているようにレースレベルが高く、本馬が記録した指数は古馬2勝クラスでも通用するものであった。

前走のオークスはフラワーCで好走した疲れで、16着に大敗。ここではハイペースで逃げるエリカエクスプレスを馬場の荒れた内から追いかけたことが、大崩れに繋がった。今回はそこから立て直されての一戦。成長期の3歳馬だけに伸びしろに期待できる。

今回は絶好調のR.キング騎手が鞍上。先週の関屋記念カナテープ(1番人気)同様に過剰人気に支持されているが、挑戦者の立場である本馬は5番人気くらいが妥当だ。しかし、本馬はデビュー2戦目の中京芝2000mを5馬身差で圧勝した素質馬だけに、ここも警戒する必要がある。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)アルジーヌの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の下線茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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