【クイーンS】機動力の源泉Fair Trialに注目 “単回収率181%”データ該当2頭に勝機

坂上明大

クイーンステークスの傾向と血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

札幌競馬2週目に行われる牝馬重賞・クイーンS。2015~19年は開幕週に行われていましたが、2週目に変わった近年も綺麗な馬場状態での開催が続いています。また、2020年1着レッドアネモス(11番人気)など穴馬の激走が多い点も本レースの特徴。本記事では血統面を中心に、クイーンSのレース傾向を整理していきます。

まず紹介したいデータは枠番別成績。1週目開催の頃から継続しているのが内枠有利の傾向です。札幌芝1800mという機動力が求められるコースのうえ、前述の通り綺麗な馬場状態で行われるクイーンSでは、内枠から器用に立ち回る競馬が理想となります。特に1、2枠の成績は特筆すべきもので、今年も内枠を引いた馬には大注目です。

クイーンステークス 枠別成績(札幌開催の直近9回) ,ⒸSPAIA


<枠別成績(札幌開催の直近9回)>
1枠【2-2-2-3/9】
勝率22.2%/連対率44.4%/複勝率66.7%/単回収率560%/複回収率323%
2枠【2-2-3-2/9】
勝率22.2%/連対率44.4%/複勝率77.8%/単回収率260%/複回収率211%

血統面ではネオユニヴァース系の活躍が目立ちます。ネオユニヴァースは母母Silken WayがSt. Simon系の血筋を豊富に引き継ぎ、母ポインテッドパスはHyperionの5・7×4やFair Trialの7×5などを持つイギリス産馬。長い繋と曲飛節が大きな特徴で、瞬発力自慢がそろったサンデーサイレンス産駒では珍しい機動力タイプの活躍馬でした。

代表産駒ヴィクトワールピサもトリッキーな中山コースを得意としており、その仔であるスカーレットカラー(2019年2着、2020年3着)とレッドアネモス(2020年1着)は本レースでも好走。今年は該当馬がいませんが、ネオユニヴァース→ヴィクトワールピサ系の分析はクイーンSの予想にとって大きなヒントとなりそうです。

クイーンステークス ネオユニヴァース内包馬の成績(札幌開催の直近9回) ,ⒸSPAIA


<ネオユニヴァース内包馬の成績(札幌開催の直近9回)>
ネオユニヴァース【2-1-1-3/7】
勝率28.6%/連対率42.9%/複勝率57.1%/単回収率670%/複回収率187%

ネオユニヴァースが内包する血の中で最も注目しているのがFair Trial。同馬は機動力や粘り強さを子孫に伝えており、ネオユニヴァースが伝える機動力の源泉となっていると考えます。

この血を内包する有力種牡馬はDanzig、Blushing Groom、Lyphard、Nureyev≒Sadler's Wellsなど。特にDanzig内包馬については過去10年で5勝を挙げており、昨年も1着コガネノソラ、2着ボンドガールと該当馬によるワンツー決着となりました。

クイーンステークス Danzig内包馬の成績(札幌開催の直近9回) ,ⒸSPAIA


<Danzig内包馬の成績(札幌開催の直近9回)>
Danzig【5-3-2-20/30】
勝率16.7%/連対率26.7%/複勝率33.3%/単回収率181%/複回収率105%

注目血統馬2頭

この章では前章で取り上げたレース傾向に合致する、注目血統馬を2頭ピックアップ。血統面を中心に解説していきます。

☆アリスヴェリテ
全兄に2019年北海道2歳優駿勝ち馬キメラヴェリテ、半兄にダート8勝馬リアンヴェリテがいる血統で、母が持つCozzene×Honor Grades×Rubianoから受け継ぐ軽快なスピードがきょうだいたちの持ち味です。

本馬自身もマーメイドSを逃げ切りで制しており、前走のヴィクトリアマイルでは0.1秒差の5着。強力なライバルがいない今回も単騎逃げが叶いそうで、LyphardやDanzigの血を併せ持つ点からも高評価したいスピード馬です。

☆クリスマスパレード
母ミスエリカはダートの中距離路線を中心に活躍したBlame産駒。Blame(父母父Danzig)はパワーと機動力を産駒に伝えるRoberto系種牡馬で、日本での産駒には2018年の紫苑S3着馬ランドネなどがいます。

本馬は父キタサンブラックからFair Trial血脈を豊富に受け継いでおり、父母の組み合わせ通りの機動力タイプに。小回りの中距離戦がピッタリの舞台であり、東京芝1600mから札幌芝1800mへの条件替わりは大幅なプラス材料です。

クイーンステークスの傾向と血統,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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