GⅠでも主役になれる素質、ペルウィクトールのスピード能力に注目 血統で見抜く新馬の力

貴シンジ

2025年7月27日(日)新潟3R出走予定 ペルウィクトールの血統分析,ⒸSPAIA

今週デビュー予定の注目新馬

出走する全馬が初出走となる「新馬戦」は、他のレースと予想のアプローチが全く異なる。調教で能力を見定める方法もあるが、実戦で同様の走りができるかは未知数だ。

従って、血統面からのアプローチが他のレースに比べて格段に有効となる。そこで今回は血統のなかでも“牝系”にフォーカスして、今週デビュー予定の2歳新馬のなかからピックアップした2頭を解説。デビュー戦の展望はもちろんのこと、血統から想定できる潜在能力や将来性についても深掘りしてみたい。


7/27(日)新潟3R・芝1600m ペルウィクトール

2025年7月27日(日)新潟3R出走予定 ペルウィクトールの血統分析,ⒸSPAIA



日本での牝祖は4代母プリンセスデリーデ。もともとヨーロッパで広がりを見せていたファミリーで、7代母Urshalimを根幹とする牝系からは英ダービーや英セントレジャーといった欧州主要レースの勝ち馬が出ている。芝適性が高く、スピードと瞬発力を持ちながら、パワーもありタフなのが特徴の牝系だ。

日本にファミリーが入ってきてからも、その特徴と活力は健在。ペルウィクトールの祖母にあたるブラックエンブレムは2008年秋華賞の勝ち馬で、母ウィクトーリアも現役時にフローラステークス勝ちを含む3勝を挙げている。

ウィクトーリアは繁殖としての能力も高く、ペルウィクトールの1つ上の兄であるウィクトルウェルスもここまで4戦3勝。春は大舞台に駒を進めることができなかったが、今後の飛躍が期待されている。

ペルウィクトールは父にサートゥルナーリアを迎え、2023年3月に誕生。サートゥルナーリアはスピードタイプを輩出できる血統構成で、祖母ブラックエンブレムの父ウォーエンブレムとは相性が良さそうだ。

今回はマイル戦でデビューを迎えるは、2000mあたりまでは走れそうな身体つき。スローになりがちな新馬戦でも勝ち負けはできるだろうが、能力全開はクラスが上がってハイペースになった時だろう。皐月賞やNHKマイルカップでも主役になれるだけの素質を持っている一頭だ。

<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1600~2000m/ベスト1800m
・能力:スピードS/瞬発力S/パワーS/持久力A
・同タイプ:ダノンプレミアム
・特徴:仕上がり早/圧倒的なスピード
※持久力=スピードの持続力


7/26(土)新潟3R・芝1400m ビタールート

2025年7月26日(土)新潟3R出走予定 ビタールートの血統分析,ⒸSPAIA


日本での牝祖は祖母ワイオラ。同馬は競走馬としては大成できなかったが、繁殖牝馬としては本馬の母トレジャーステイトの他にイギリスでノーフォークステークス(GⅡ・芝5F)を制し、ミドルパークステークス(GⅠ・芝6F)で3着の実績もあるApproveを輩出した優秀な繁殖牝馬だ。

5代母Bold Exampleもしくは6代母Lady Be Goodを根幹とする牝系で、6代母の分岐からはキングヘイロー、5代母の分岐からはフランス1000ギニーなどGⅠ・3勝のCulture Vultureなどが出ている。

もともとスピード豊かなファミリーだったが、3代母Rubies From Burmaがフォーティナイナーをつけられたことで、スピード性能の高さがさらに底上げされている。牝系の活力は抜群というわけではないものの、早期から活躍できるのが強み。2歳戦では積極的に狙っていきたい血統といえる。

ビタールートの母トレジャーステイトは現役時にダート1400~1600mで通算5勝。スピードで一気に押し切るような競馬をする馬で、実にワイオラの産駒らしいタイプだった。

本馬は父にインディチャンプを迎えた。同馬もトキオリアリティー牝系で何をつけても短距離馬になるようなタイプ。本馬は特にスピードの高さを持った両親の掛け合わせで、スタートから飛ばしていって一気に押し切ってしまうタイプだろう。

現状トモに甘さは残しているが、短距離馬らしい良い馬体の持ち主だ。今週の新馬戦の中では比較的多頭数のレースであり、オッズ妙味が出そうなら狙いたい。

<血統から想定できる潜在能力>
・馬場適性:芝
・距離適性:1200~1600m/ベスト1400m
・能力:スピードS/瞬発力B/パワーA/持久力S
・同タイプ:アエロリット
・特徴:スピード性能◎/短距離馬らしい好馬体
※持久力=スピードの持続力


《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

《関連記事》
【注目2歳馬】ルージュボヤージュが4馬身差で快勝 新種牡馬コントレイル産駒は10頭目で待望の初勝利
【注目2歳馬】モーリス産駒タイダルロックが4馬身差V 勝負所で馬なりのまま加速する好内容
コントレイル、クリソベリルら大種牡馬の後継候補が勢揃い 2025年に産駒がデビューする注目新種牡馬