【小倉記念】昇級戦でも能力値1位、展開利も期待できるメリオーレムが本命 穴馬も4歳オールセインツ
山崎エリカ

ⒸSPAIA
今年は時計の掛かる馬場
直近5年の小倉記念は、中京開催だった昨年を除いて8月の小倉開幕2日目で行われてきた。ところが、今年は6月下旬から始まった小倉開催8日目に行われる。2023年までは超高速馬場や高速馬場が多かったが、今年は標準馬場での戦いとなる。
舞台となる小倉芝2000mコースは、最初のコーナーまでの距離が472mと長く、200m短い小倉芝1800mと比べて差しが決まりやすい。例年よりも時計が掛かる馬場でスズカダブルやナムラエイハブが逃げ、2番手の展開となると、平均よりも速い流れになりそう。やはり差し馬に期待したい。
能力値1~5位の紹介

【能力値1位 メリオーレム】
近走は中距離路線を使われるようになり、指数が上昇中。2走前の府中ステークス(3勝クラス/東京芝2000m)では強豪アスクカムオンモアに敗れたものの、3着以下には2馬身以上の差を付けて2着。そして、前走のむらさき賞(3勝クラス/東京芝1800m)でオープン入りを果たした。
前走は7番枠からまずまずのスタートを切り、軽く押して進めたがペースが速く、やや離れた好位を確保。道中も前から離れた好位の中目で進めた。
3~4角でも前が淡々と流れていたが、好位の内目でロスを最小限に立ち回って直線へ。序盤で中目に誘導して前のショウナンラピダスとの差を詰め、ラスト2Fでも同馬とに差を詰めながら外に誘導し、ラスト1Fでショウナンラピダスを捉えてクビ差で勝利した。
ここは超高速馬場で、前後半4F45秒1-47秒8の超絶ハイペース。B→Cコース替わりで内有利の馬場状態を3~4角でほぼロスなく立ち回れていたが、前に不利な展開をある程度前の位置から押し切れたことは高評価できる。
近2走がコンクリート馬場や超高速馬場だったことから、現在の小倉の時計を要する馬場を不安視する声もあるが、本馬は標準馬場の西部スポニチ賞(2勝クラス/小倉芝2600m)でも3勝クラスで通用する指数で勝利しており、適性面でも問題がない。
また、このメンバーでは能力値も1位。3勝クラスを勝ち上がったばかりの馬が重賞で能力値1位というのは凡戦をイメージするかもしれないが、現在の3勝クラス(特に関西圏)のレベルが高いのだ。それゆえに、先週の七夕賞(勝ち馬コスモフリーゲン)のように3勝クラスを勝ち上がったばかりの馬が重賞で即通用という構図が作られている。よって本馬が本命候補だ。
【能力値2位 ディープモンスター】
2023年アンドロメダステークス(L/京都芝2000m)で自己最高指数を記録。ここでは大外16番枠から好スタートを決め、馬なりで好位直後の外まで進出。道中は前に壁が作れず、かなり掛かっていたが、向正面で中団馬群の中目に入れると折り合がついた。
3~4角では中目を通し、4角で外からテーオーソラネルが上がってくると、同馬を行かせてその後ろから直線へ。序盤でテーオーソラネルを追いながら外へ誘導するとじわじわ伸び始め、ラスト1Fでは一気に伸びて1馬身半差で勝利した。
このときはタフな馬場で、前後半5F59秒4-59秒8の緩みない流れ。外枠が響いて折り合いを欠いていたが、馬場の内側がやや荒れていたことや、後方有利の展開にも後押しされて自己最高指数を記録した。
このように、本馬は時計が掛かる馬場のハイペース戦がベストの馬。標準馬場でややハイペースとなった5走前のチャレンジカップ(GⅢ/京都芝2000m)でも、3~4角で好位列が凝縮するなか、後方から中団外目のスペースを拾って押し上げ、ラスト1Fで4馬身ほどあったラヴェルとの差を1馬身3/4差まで詰めて2着に善戦している。
前走の目黒記念(GⅡ/東京芝2500m)では4着。ここでは11番枠から出遅れ、後方2番手からの追走。最後の直線までほぼ動かず、序盤で外に出すのに苦労する場面があったが、ラスト2F手前で進路を確保するとじわっと伸び始め、ラスト1Fではグングン伸びていた。
前走は超高速馬場で、超絶スローペース。前が止まらない流れで展開不向きだったが、メンバー中最速の上がり3Fで差し込んできたのは、ここへ来て折り合いがつくようになったからだろう。
折り合いに新味を見せたことは好感が持てるが、ゲートにやや甘さを見せている点が弱点。そのうえ、今回は芝2500mで後方からレースを進めた後の一戦になる。ここも後方からの追走が予想され、そこまでペースが上がらなかった場合に届き切るかという不安はある。
【能力値3位タイ マイネルメモリー】
前走の函館記念(GⅢ/函館芝2000m)では14番人気で3着に健闘し、波乱の立役者となった馬。その前走では12番枠からやや出遅れ。促しながらも無理なく最後方からの追走。道中も淡々とハイペースで流れるなか、ディマイザキッドの後ろで脚を温存した。
3角でディマイザキッドが動いたが、そこではできるだけ内を通して我慢させ、進路がなくなった4角で外に誘導して同馬の後ろを取り、4角出口で大外へ。直線序盤で追われたがまだ中団列。ラスト1Fでしぶとく伸び続け、最後に前のハヤテノフクノスケに迫って3着だった。
前走はレコード決着だったように、超高速馬場で前後半3F58秒1-59秒5の緩みない流れ。後方有利の展開を、最後方のメリットを最大限に活かす騎乗で自己最高指数を記録した。
本馬はタフな馬場で行われた昨夏のテレQ杯(3勝クラス/小倉芝2000m)でシェイクユアハートを2着に下して勝利した実績があり、コース適性も時計の掛かる馬場も問題はない。このことから穴人気に支持されそうだが、前走がほぼ完璧だっただけに、余力面での不安が残る。
【能力値3位タイ ラスカンブレス】
芝2200m以上で【3-1-0-0】の実績。前走の六社ステークス(3勝クラス/東京芝2400m)は7番枠から出遅れたが、位置を取りに行く馬が少なかったので楽に中団の外を追走。道中は前3頭から離れた5番手で進めていたが、3角手前でメイテソーロに捲られて3列目の外で3角へ。
3~4角ではメイテソーロの後ろで我慢し、4角で先に動いた同馬を追って直線序盤で外に誘導しながら追われる。ラスト2Fでしぶとく伸びて3/4差ほど前に出ると、ラスト1Fで内から食らいつくミスタージーティーを競り落として1馬身差で勝利した。
前走は高速馬場で、前後半5F60秒7-60秒8の平均ペース。早めに仕掛けて長くいい脚が使えていたが、内が荒れた馬場を上手く外を通しての勝利だった。
本馬はほぼ確実に出遅れるので、速い流れの2000mだと前走のような位置が取れず、追走に脚を使う可能性が高い。また、前走で自己最高指数タイを記録しているだけに、余力面でも不安がある。
【能力値5位 シェイクユアハート】
3勝クラスを勝ち上がるのに15戦も要したが、本馬がこれまで3勝クラスで戦ってきた相手はマイネルエンペラー、ショウナンアデイブ、エーデルブルーメ、セレシオン、キングズパレスなど後の重賞で活躍している馬や現オープン馬ばかり。メリオーレムの解説でも綴ったように、近年の3勝クラス、特に関西圏の戦いはレベルが高いのだ。
本馬は前走の垂水ステークス(3勝クラス/阪神芝2000m)で1着。ここでは12番枠から五分のスタートだったが、しっかり出して好位の外を追走。道中はスズカダブルが単騎で飛ばして行ったが、2番手グループからやや離れた中団やや前方で脚を温存した。
3角でペースダウンすると4頭分外からじわっと動いて、4角で前がペースを引き上げるとやや置かれて3列目で直線へ。序盤でしぶとく伸びて2列目に上がり、ラスト1Fでさらに伸び、先頭のバッデレイトを競り落としてクビ差で勝利した。
前走は超高速馬場で、前後半5F58秒8-59秒8のややハイペース。やや後方有利の展開で、長くいい脚を使っての勝利だった。
このように本馬は長くいい脚が使えるが、トップスピードの速さがやや足りない点が弱点。このためかなりのスローペースで前残り決着だった3走前の御堂筋ステークス(3勝クラス/阪神芝2400m)や、4走前の飛鳥ステークス(3勝クラス/京都芝2000m)では指数を落としている。
タフな馬場で比較的条件が向いた昨夏のテレQ杯(3勝クラス/小倉芝2000m)ではマイネルメモリーに敗れているが、このときは馬体重16kg減に加え、鞍上も主戦の古川吉洋騎手ではなく秋山稔樹騎手だった。
今回は当時よりも順調にきているだけに、標準馬場で平均よりも速い流れが予想されるここは要注意だ。
穴馬はひと叩きで前進期待のオールセインツ
オールセインツはデビュー2戦目の京都新聞杯(GⅡ/京都芝2200m)で13着に大敗したが、その後は自己条件を使われ、1勝クラスと月岡温泉特別(2勝クラス/新潟芝2000m)を連勝。秋の神戸新聞杯(GⅡ/中京芝2200m)では4着と着実に地力をつけた。
3走前・神戸新聞杯では5番枠からまずまずのスタートを切ってすぐに外目に誘導したが、結果的に包まれて中団中目の追走。道中は中団馬群の中でメリオーレムをマークしながら進めた。
向正面の下り坂で先頭のメイショウタバルがペースを上げ、3~4角では2番手以降がそれを追い駆けていったが、本馬は追われても地味。位置が下がって後方馬群の中目から、最後の直線では進路がなく内に切る選択をする。そこから追われてじわじわ伸び、ラスト1Fでバテた馬をかわして4着に浮上した。
ここは標準馬場で、前後半4F60秒0-59秒8の平均ペース。本馬は長くいい脚が使えるが、前の位置を取って良いタイプではない。ここは結果的に包まれて脚を温存する形となったことが、好走に繋がった面もあったと見ている。
2走前の比叡ステークス(3勝クラス/京都芝2400m)は、神戸新聞杯を大目標にした後の疲れ残りの一戦で5着に敗退。また、鞍上が「今までにないぐらいに入れ込んでいた」とコメントしていたように、かなり掛かっていた。
前走のストークステークス(3勝クラス/阪神芝2200m)は、目の外傷による長期休養明けの一戦で馬体重14kg増と太目。それでも出遅れをじわっと挽回し、中団やや後方から最後の直線でじわじわ伸びて5着と見せ場はあった。
まだ7戦しかしておらずキャリアが浅い馬だけに、伸びしろもありそう。今回は一叩きされ、体が絞れての前進に期待したい。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)メリオーレムの前走指数「-19」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
《関連記事》
・【小倉記念】出馬表詳細
・【小倉記念】小倉の近5回で4勝!ノーザンテースト内包馬がアツい 適性屈指オールセインツに好機
・【小倉記念】19年連続万馬券のハンデ重賞を制するのは? 穴馬の共通点から6頭が浮上
