【ラジオNIKKEI賞】センツブラッドらリステッド好走組が中心 フクノブルーレイクの逆襲も
勝木淳

ⒸSPAIA
惜敗馬が活躍する出世レース
フィエールマン、パンサラッサ、レーベンスティール、シリウスコルト。これらは過去10年のラジオNIKKEI賞惜敗馬たちだ。これほど惜敗馬から活躍馬を輩出するGⅢは珍しい。
かつて「残念ダービー」なんて俗称があったが、これは昔、日本ダービー優勝馬は出走できないという規定があり、敗者復活戦としての性格が強かったからだ。
しかし、これだけ惜敗馬が出世するとなると「出世レース」としての色が強い。ダービーには間に合わなくても、豊富な成長力でやがてトップ戦線まで昇りつめる。そんな一頭を探す重賞でもある。データは過去10年分を使用する。
世代限定唯一のハンデ重賞と設定はやや混戦気味。1番人気【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%や2番人気【2-0-1-7】勝率20.0%、複勝率30.0%をはじめ、3番人気も【3-0-0-7】勝率・複勝率30.0%と人気の差はほぼない。
さらに6、8番人気も1勝ずつと気を抜けず、9番人気【0-2-2-6】複勝率40.0%など複穴の可能性も高い。上位人気から人気薄まで間口を広くとり、各馬きっちり検討したい。
母は5年前に重賞Vセンツブラッド
登録馬を見ると前走重賞の好走馬は不在で、白百合S(L)の2、3着センツブラッドとバズアップビートのほか、プリンシパルS(L)4着ショウナンマクベスが目立つくらい。
また、前走の皐月賞こそ16着だったが、フクノブルーレイクは2走前にスプリングS(GⅡ)で2着と好走。こちらは小回り1800mへの対応力が光る。
前走重賞【1-4-3-40】は数字としてはそこまで目立ちはしないが、やはりクラシック路線からの転戦馬は人気を集めるためチェックしておこう。
レース別でみると、京都新聞杯【1-0-0-3】勝率・複勝率25.0%は2019年ブレイキングドーンが6着から巻き返した。このときの斤量は前走56kgから55kgへの1kg減。前走重賞組は前走から斤量減が【1-4-3-32】、増減なしは【0-0-0-8】と明暗くっきり。据え置きはデータ上危険だ。
前走皐月賞【0-2-1-8】複勝率27.3%は10着以下が【0-2-1-7】。フクノブルーレイクはイメージに合う。このレースの前走重賞組は、大敗直後にハンデを加減されることが条件。スプリングS2着時の斤量が57kgなので据え置きの可能性もあるが、もしも斤量減なら皐月賞16着で加減されたとみる。むしろ狙ってみたい。
前走OP・Lは【6-2-1-22】勝率19.4%、複勝率29.0%を誇る。なかでもプリンシパルSは【3-1-1-6】勝率27.3%、複勝率45.5%で、4着以内は【3-0-0-2】に対し10着以下だと【0-1-1-1】と好走・凡走が極端だ。
ショウナンマクベスは好データに当てはまるが、戦歴を振り返ると東京で2勝、ところが小回りの札幌と中山では8着、10着。GⅢとGⅠでの記録なので適性を決めつけることはできないが、忙しい福島でリズムを乱す可能性は頭に入れておこう。逆にこれを根拠に人気が落ちるようならおもしろい。
前走白百合Sは【3-1-0-12】勝率18.8%、複勝率25.0%だが、ここには京都と中京のデータが混在しており、京都の白百合Sに限ると【2-1-0-12】勝率13.3%、複勝率20.0%となる。
このうち3着以内は【2-1-0-7】、4着以下は【0-0-0-5】。センツブラッドは期待が高まる。2走前は中山芝1800mで2勝目をあげた。好位で立ち回れる器用さが身上。母サマーセントは20年マーメイドSの勝ち馬であり、母譲りの適性が光る。
母は21年愛知杯を最後に繁殖入りし、その直後にルーラーシップを交配して誕生したのがセンツブラッド。わずか5年での母子重賞制覇がかかる。
前走1勝クラス【3-4-5-45】勝率5.3%、複勝率21.1%については距離別成績をみる。
なかでも同距離【2-1-1-11】勝率13.3%、複勝率26.7%に注目。トレサフィールがここに当てはまるが、東京芝1800m組は【0-0-1-5】複勝率16.7%とトーンダウン。大箱から小回りへの変化に対応できるか。
1800m超からの距離短縮は【0-2-3-17】複勝率22.7%と少し数値が落ちる。序盤から活気ある流れになりやすい重賞のせいか、長い距離から転戦すると、前半で流れに乗り損ねる面があるようだ。
距離別では2000mが【0-2-3-14】、2200m以上は【0-0-0-3】と長い距離ほどよくない。前走2000mのなかで狙い目は逃げた馬【0-2-2-4】。前半の流れに乗れるスピードはカギとなる。
登録馬では山藤賞を好位から抜け出したビーオンザカバーは対応できそうな手応えもあるが、逃げのデータが引っかかる。とはいえ、初勝利も新潟内回りであり、小回り適性を感じる。
《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・【ラジオNIKKEI賞】過去10年データあれこれ
・「単回188%」藤岡佑介騎手×小倉がアツい 小回り芝コースで狙える種牡馬と騎手を調査
・単複回収率200%超!武豊騎手の激アツ条件 サマー重賞に強い騎手、調教師を徹底分析