【しらさぎS】変わるペースへの対応力と操縦性がカギ 京大競馬研の本命はデビットバローズ

京都大学競馬研究会

しらさぎS 上がり3F5位以内馬の成績(データは前身の米子ステークスを使用)

ⒸSPAIA

総合力がとにかく重要な舞台

6月22日(日)にしらさぎS(GⅢ)が行われる。本レースは今年から新設された重賞であり、前身はリステッド競走の米子Sだ。サマーマイルシリーズ第1戦として、本格的な夏競馬の始まりを告げる。

例年、米子Sは重賞でやや足りないメンバーが集まる印象があったが、重賞に昇格し、二冠牝馬チェルヴィニア、オールカマー勝ち馬レーベンスティールをはじめ実力馬が集結。混戦模様の一戦となった。

以下では、本レースが行われる阪神芝1600mのコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。

まずは阪神芝1600mのコース形態をみる。向正面中間のやや左寄りからスタートし、初角までの距離は約440m。外回りコースを使用し、ゆったりとした3~4コーナーを回った後、勾配1.8mの急坂を持つ476.3m(Bコース使用時)の最終直線を一気に駆け抜ける。これが今回のコースレイアウトだ。

まず注目すべきは初角までの距離が約440mと長い点だ。序盤の先手争いは長く続き、序盤のペースは平均からやや速めで流れやすい。コーナーに入った後、中盤にかけてペースは緩み、4コーナーからの緩やかな下り坂で徐々に加速していく。

変動するペースに対応しながら脚を溜める操縦性と、メンバー上位の末脚を出す能力が必要とされる。地力がない馬には非常に厳しい。中長距離に似た「総合力」が問われるのが今回のレースの質だ。

しらさぎSの上がり3F5位以内馬成績,ⒸSPAIA


<しらさぎS 上がり3F順位別成績>
5位以内【6-8-9-29】
勝率11.5%、連対率26.9%、複勝率44.2%、単勝回収率276%、複勝回収率159%
※阪神開催の直近10回。昨年まで「米子S」の名称

その傾向は数字にも表れている。米子Sにおける上がり3F5位以内馬の成績は上記の通り優秀だ。馬券内となった30頭中23頭を該当馬が占めており、上位の末脚を使った馬が順当に好走している。ただ、勝ち馬に関しては速い上がりを出さなかった先行馬の前残りも目立つ。

前後どの位置から競馬をするかに関わらず、上位の末脚を発揮することが好走の重要な条件だ。ただし、展開次第では先行馬の前残りにも十分に注意して印を打っていきたい。

ミドルペースで順当に能力が発揮されやすい展開

続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬(前走海外除く)が2頭と、出走馬全14頭に対して少ない。ただ、前述の通り初角までの距離が長いことと、中団の前目から運べる馬が多く距離延長馬も3頭いることを考えれば、極端なスローペースになるとも考えにくい。ミドルペースが想定される。

この展開では特に恵まれやすい脚質というのはなく、どの脚質でも能力が順当に発揮される。強いて言えば、好位~中団からスムーズな追い出しで末脚を使える馬は能力を最大限発揮しやすい展開だ。

まず能力比較を行った上で、枠や並びからスムーズに追い出せる馬に注目して印を打っていく。

持ち前の持続力で後続を凌ぎきる

◎デビットバローズ
安定した先行力があり、常に好位から堅実な末脚を使えるのが強み。前走のエプソムCは初角までの距離が短い東京芝1800mで不利な外枠からスタートし4~5番手で追走。稍重馬場で1000m通過57.3秒という超ハイペース差し展開を、終始2~3頭分外を回されながら先行して1.2秒差9着。初めての稍重馬場かつ前で運んだ馬にはあまりにも厳しい展開で、度外視可能な敗戦とみる。陣営から左回りも敗因の一つとコメントがあり、右回り替わりも大きなプラス材料だ。

2走前の大阪城Sは好スタートから2~3番手で追走し、1000m通過59.5秒の比較的速いペースを先行。4角8番手以下の馬が2、3、5着に来る差し展開のなかで番手から上がり3F3位の脚を使い、2着に0.4秒差をつけ快勝した。ラスト5Fは11.9-11.5-11.1-10.9-11.6と早め抜け出しから残り200mまで加速するラップを刻んでいたことからも、適性距離は1600mに感じる。当時と同じく外回りコースを使用し、初角までの距離が200m短くなる阪神芝1600mはベスト条件だ。

3走前の洛陽Sはやや出遅れ気味なスタート。そこから素早く二の脚を使い、1000m通過58.9秒のハイペースを3番手で先行。比較的差し有利な展開かつ外伸び馬場を内でしぶとく粘って0.1秒差2着。長期休養明けだったことも含めて着順、着差以上に評価できる内容だった。勝ち馬ロジリオンはハイレベルな4歳マイル路線屈指の実力馬であることからも高く評価したい一戦だ。陣営からも、去勢明けで馬がガラッと良くなった、というコメントが出ていたように2、3走前はそれまでとは見違えた走りをしている。

本馬のテンの速さは今回のメンバーでも上位で、想定されるミドルペースであれば好位から競馬が出来る。先行意識の高い松山弘平騎手への乗り替わりもプラス材料だ。ロードカナロア産駒らしく距離短縮では4戦4連対と実績確かで、今回も距離短縮を生かして簡単には止まらない。去勢後初めての夏競馬という点も良く、スムーズな追い出しで持ち前の持続力を発揮すれば後続の強襲を凌ぎ切れる。前走の敗戦で高いオッズ妙味が見込まれる。

◯ダディーズビビッド
前走の安田記念はマイル戦最高峰の舞台であり、1.1秒差14着も大きく評価を下げる内容ではない。2走前の六甲Sは斤量59キロを背負いながら、中団から上がり3F2位の脚を使い勝利。同レースの2着馬シリウスコルトは次走以降リステッドとGⅢを連勝、4~7着馬は次走マイラーズCで3~6着とレースレベルも十分に高い。3走前も今回上位人気を背負う馬と僅差の競馬ができている。

それにもかかわらず、想定オッズ段階ではかなりのオッズの乖離が見られ、高い妙味が見込まれる。中団を追走し、スムーズに末脚を発揮できれば十分に好走のチャンスがあるとみて2番手評価とする。

▲チェルヴィニア
状態面、展開を含め、近2走嚙み合わない競馬が続いているものの、地力は間違いなく今回のメンバーで最上位の一頭。距離短縮はプラスといえないが、マイル重賞を勝利しているようにスピード自体は問題ない。同条件の桜花賞は展開不利と乗り替わりによる度外視可能な敗戦とみる。

追い切り内容からも状態面は万全。ジャパンC4着の二冠牝馬が能力を発揮すれば順当に好走できるメンバー構成だ。名手C.ルメール騎手がどのようなレース運びをするのかが非常に楽しみ。大好きな馬の一頭なので、ここで復活の兆しを見せて欲しい。

△キープカルム
前走のダービー卿チャレンジTは直線で前が壁になりスムーズに追い出せない不利があった中、0.2秒差3着。それなりにテンの速さがあり、今回は好位か中団前目で運べる。

×シヴァース
安定した先行力と堅実な末脚を兼ね備える優等生タイプ。ここも好位から運べれば。

×ダンツエラン
前走内容から距離延長はプラス材料。斤量51キロの恩恵を最大限に生かせれば。

買い目は◎単勝1点、◎-◯▲△馬連3点、◎-◯▲△-◯▲△×3連複9点で勝負する。

▽しらさぎS予想▽
◎デビットバローズ
◯ダディーズビビッド
▲チェルヴィニア
△キープカルム
×シヴァース
×ダンツエラン

◎2024年勝負買い目個人成績(東海S~ホープフルS:25記事)
・単勝27点→4830円 回収率178.9% 的中率37.5%(的中9R/推奨24R)
・馬連105点→12480円 回収率118.9% 的中率42.9%(的中9R/推奨21R)
・3連複204点→22410円 回収率109.9% 的中率17.4%(的中4R/推奨23R)

《ライタープロフィール》
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。

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