【府中牝馬S】Sadler’s Wells×末脚がカギ 舞台適性高いカニキュルに注目
坂上明大

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傾向解説
22日に開催される府中牝馬S。昨年までマーメイドSという名で行われてきた牝馬限定のハンデ重賞ですが、今年からは名称が変更され、東京芝1800mに舞台も変わっています。
エプソムCやアイルランドトロフィー(旧・府中牝馬S)とは同じコースで行われますが、性別条件や開催時期が異なるため求められる適性も微妙にズレる可能性があります。本記事では血統面を中心に、府中牝馬Sのレース傾向を整理していきます。
まず紹介したいデータは前走上がり3F最速馬の成績。東京芝1800mは末脚勝負になりやすいため、近走での上がり順位には要注目です。
また、牝馬限定重賞では1600mからの距離延長馬が多いため、距離適性の面でも前走の上がり順位は重要。過去10年の旧・府中牝馬Sでは前走上がり3F最速馬が素晴らしい成績を残しており、秋よりも馬場が荒れ気味なこの時季なら、さらにその重要性は高まるのではないでしょうか。
<旧・府中牝馬S 前走上がり3F1位(過去10年)>
該当馬【5-2-1-13/21】
勝率23.8%/連対率33.3%/複勝率38.1%/単回収率354%/複回収率113%
血統面ではSadler's Wellsなどの欧州血統に注目。特にサンデーサイレンスとの組み合わせは相性が良く、同コースで行われるアイルランドトロフィー(旧・府中牝馬S)では素晴らしい成績を収めています。
昨年も該当馬であるシンティレーションが10番人気で2着と好走。さらに、梅雨時で馬場が荒れ気味なため、より重厚な欧州血統に向く競馬になるのではないでしょうか。
<旧・府中牝馬S Sadler’s Wells内包馬の成績(過去10年)>
該当馬【3-5-2-25/35】
勝率8.6%/連対率22.9%/複勝率28.6%/単回収率142%/複回収率83%
血統解説
・カニキュル
2025年毎日杯勝ち馬ファンダムと同じグレイトフィーヴァー牝系に属し、母シャルールは2016年福島牝馬S、クイーンSでともに2着。エピファネイア産駒の本馬はサンデーサイレンスの4×3を持つ瞬発力型で、旧・府中牝馬Sと相性が良いSadler’s Wellsの血を内包する点も魅力の一頭です。
グレイトフィーヴァー牝系も東京芝1800mと好相性なだけに、適性面についてはメンバー中屈指の一頭ではないでしょうか。今回は格上挑戦となりますが、ハンデ戦のここなら十分に勝負になりそうです。
・セキトバイースト
母ベアフットレディは2011年コロネーションS(英GⅠ)3着馬で、本馬の半弟には2024年ホープフルS2着馬ジョバンニがいます。
デクラレーションオブウォー産駒の本馬はRahyの3×5を持ち、気性的にも馬体的にもスピード面が勝った先行馬。小回りの中距離戦でスピードを活かす競馬がベストで、荒れた馬場も得意なクチです。その反面、東京芝1800mでは展開や馬場を味方につけたいところでしょう。
・ラヴェル
母サンブルエミューズは2013年フェアリーS3着馬で、本馬のきょうだいにはナミュール(2023年マイルCS)やアルセナール(2024年クイーンC2着)、ヴェスターヴァルト(2020年ファルコンS3着)がいます。
本馬はキタサンブラックを父に配し、サンデーサイレンスの血を3×3でインブリード。血の濃さからも気性面に課題は残りますが、本格化した今ならコースを問わず中距離路線での活躍が期待できる良血馬です。
《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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