【府中牝馬S】実力拮抗のハンデ戦 「東京1800m・4勝」カナテープが昇級戦で試金石

勝木淳

20年以降の東京芝1800mデータから見る府中牝馬S,ⒸSPAIA

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マーメイドSを吸収した府中牝馬S

2017年からアイルランドトロフィーとくっついた府中牝馬Sは2024年を最後に別れのときを迎えた。アイルランドトロフィーは秋の府中に残り、GⅡとしてエリザベス女王杯の前哨戦を続ける。一方、府中牝馬Sは季節を飛び越え、6月開催に移行。今度は阪神開催のマーメイドSを吸収し、牝馬限定、GⅢ、ハンデ戦と色濃く受け継ぎ、距離はかつてと同じ芝1800mで生まれ変わった。

レース回数はかつての府中牝馬Sを受け継ぎ、73回目。秋に残ったアイルランドトロフィーは第1回と振り出しに戻る。

ここからは22日に東京競馬場で開催される府中牝馬Sを展望する。過去のデータは府中牝馬Sも吸収したマーメイドSも当てはめられないので、「2020年以降、東京芝1800m、古馬オープン・重賞」の計21レースを使用し、コースデータを中心に探っていく。

人気別成績,ⒸSPAIA


まずは人気別成績から。注目は1番人気で【9-3-2-7】勝率42.9%、複勝率66.7%の抜け具合。2番人気が【2-1-4-14】勝率9.5%、複勝率33.3%なので、1番人気とそれ以外には大きな開きがある。いいかえれば、1番人気は極めて信頼できる反面、残り馬券圏内の2枠は混戦といえる。

とはいえ、目立つのは4番人気【3-5-4-9】勝率14.3%、複勝率57.1%ぐらい。複勝率でみれば、6番人気以下からは落ちており、基本的には1番人気と2~5番人気という堅い決着になりやすい。荒れやすい6月の牝馬限定ハンデ戦という条件が加わることで、どれほど傾向が動くのか。注目だ。

枠番別成績,ⒸSPAIA


続いて枠番別成績を確認する。スタート後すぐに2コーナーに進入するものの、それ以外はシンプルなコースレイアウト。枠番で大きな差はないといえばないが、3枠【4-0-1-28】勝率12.1%、複勝率15.2%、4枠【4-2-4-27】勝率10.8%、複勝率27.0%、5枠【4-3-5-27】勝率10.3%、複勝率30.8%と真ん中付近の確率がやや高い。

内と外の出方をうかがえる真ん中はレースに入りやすいという面はありそうだ。枠番に左右されることはないものの、この傾向は頭の片隅に置いておこう。

前走マイル重賞組は着順での評価は禁物

マーメイドSの流れをくんでおり、メンバーは上下差の少ない、実力拮抗戦になりそうだ。登録馬で目立つのは、牡馬相手に都大路Sを勝ったセキトバイースト、そしてGⅠ好走歴があるウンブライルや重賞ウイナーのミアネーロ、ラヴェルあたりか。取消や大敗と近況が目立たず、これも混戦に拍車をかける。

前走距離別成績,ⒸSPAIA


コースデータということで、前走距離を使う。前走同距離【5-9-6-71】勝率5.5%、複勝率22.0%に対し、1800m未満の距離延長が【9-7-11-79】勝率8.5%、複勝率25.5%とわずかに上回る。頭数の分母は同距離が91、延長が106、そして短縮【7-5-4-91】勝率6.5%、複勝率15.0%は107なので、ほぼ同数。それだけに確率の差は素直に受けとれる。

延長組がいいのは、他場と比べてコーナーが少ない東京芝1800mはスピード志向の競馬になりやすいからだろう。コーナー4回のようなブレーキをかける場面が少ないため、中距離でも溜めを効かせる競馬にならない。器用なタイプより、マイル適性があるぐらいがいい。

前走前走1800m未満・前走脚質別成績,ⒸSPAIA


延長組については、前走でのポジション(脚質)を確認する。逃げた馬【0-0-0-5】なので、さすがに一気に突っ走るような競馬は不安か。理想的は、好位先行【2-0-2-14】勝率11.1%、複勝率22.2%、中団からの差し【5-6-6-33】勝率10.0%、複勝率34.0%。目安はここだろう。

延長組でも、追込は【2-1-3-27】勝率6.1%、複勝率18.2%とダウン。ただしデータ上、後方の馬は意図的な待機ではなく、流れに乗れなかった馬も含まれてしまうので、額面通りにとれない。後ろから運んだとしても、最後に少しでも脚を使っていれば、見どころはある。追込かつ前走6~9着だと【1-1-1-5】勝率12.5%、複勝率37.5%。後方のままゴールした馬を除けば、買える。

ヴィクトリアマイル組なら、中団から進めた10着シングザットソング、12着ラヴェルは候補となる。ほかの延長組では阪神牝馬Sで後方から進め、10着だったウンブライルより先行して7着だったタガノエルピーダか。

前走1800m・着順別成績,ⒸSPAIA


同距離組は着順をチェックする。素直に前走1着【3-3-1-13】勝率15.0%、複勝率35.0%を評価しつつ、4着【0-2-0-2】など掲示板以内に注目しよう。6着以下は【1-2-1-33】複勝率10.8%。確率としては狙いにくい。

都大路Sを勝ったセキトバイースト、福島牝馬S3着フィールシンパシーはデータに合致する。また、条件戦だが初音Sを勝ったカナテープも侮れない。当該コース【4-1-1-1】のコース巧者。東京芝1800mにこだわったレース選択も評価できる。

20年以降の東京芝1800mデータから見る府中牝馬S,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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