【日本ダービー】Sir Gaylordほかストライド走法伝える血統が優勢 マスカレードボールの爆発力に要注目

坂上明大

2025年東京優駿の注目血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

牡馬クラシック第2戦の日本ダービー。中山内回りというトリッキーなコースで行われた皐月賞から525.9mという直線の長い東京芝2400mに舞台が替わり、牝馬路線ほどではないものの求められる適性が大きく変わります。本記事では血統面を中心に、日本ダービーのレース傾向を整理していきます。

皐月賞が行われる中山芝2000mと日本ダービーが行われる東京芝2400mでの大きな違いは直線距離。皐月賞が310.0m、日本ダービーが525.9mと200m以上の開きがあり、それがゆえに皐月賞では小回りコースを器用に立ち回る機動力、日本ダービーでは終盤の末脚勝負で伸び負けない末脚の持続力が大きなテーマとなっています。

これは、皐月賞のレース内容からも読み解け、同組の好走馬のほとんどが皐月賞で上がり3F5位以内を記録。反対に、皐月賞で上位の上がりを使わず好走した馬の多くは日本ダービーでは凡走しており、キタサンブラックやタイトルホルダーといった後のGⅠ馬もこの傾向には逆らえていません。

皐月賞 上がり順位別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<皐月賞 上がり順位別成績(過去10年)>
上がり5位以内【7-7-4-27/45】
勝率15.6%、連対率31.1%、複勝率40.0%
単回収率83%、複回収率82%
上がり6位以下【0-2-3-47/52】
勝率0.0%、連対率3.8%、複勝率9.6%
単回収率0%、複回収率30%

血統面では、日本の主流条件らしくサンデーサイレンス→ディープインパクトなどの主流血統が中心。特にSeattle SlewやSecretariatといった『Bold Ruler+Princequillo』血脈との組み合わせが好相性で、Secretariatの半兄であるSir Gaylordの血にも要注目です。

Seattle SlewやSecretariat≒Sir Gaylordは伸びやかなストライド走法を子孫に伝え、東京競馬場のような広いコースを得意とする代表的な血脈。昨年も同血脈を複数本内包するダノンデサイルが9番人気の低評価を覆して栄冠を手にしており、これらの血を掛け合わせた配合形がピッタリのレースといえるでしょう。

血統別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年)>
Seattle Slew内包馬【6-2-2-26/36】
勝率16.7%、連対率22.2%、複勝率27.8%
単回収率450%、複回収率88%
Secretariat内包馬【6-3-4-49/62】
勝率9.7%、連対率14.5%、複勝率21.0%
単回収率136%、複回収率113%
Sir Gaylord内包馬【8-7-8-90/113】
勝率7.1%、連対率13.3%、複勝率20.4%
単回収率161%、複回収率57%

有力馬の血統を解説

クロワデュノール
母ライジングクロスは2006年英オークス2着、愛オークス3着の活躍馬。Bustedの5×5やSir Ivor(父Sir Gaylord)の6×5、Princely Giftの6×6などを持つ本馬は血統通りのスレンダーな馬体で、頭の高い走りからも将来的には父キタサンブラックと同じようなカテゴリーで強い姿を見せてくれるのではないでしょうか。

機動力に優れたFair Trial血脈を豊富に併せ持ち、舞台を選ばず安定したパフォーマンスを発揮できる点が最大の強み。素質面でも世代最上位級の実力を持っていることは疑いようがなく、馬券圏内確率は最も高い馬ではないでしょうか。

ミュージアムマイル
4代母ハッピートレイルズに遡る名牝系に属し、母ミュージアムヒルは芝1600mで3勝。初仔の本馬はリオンディーズを父に配しましたが、キングカメハメハ父系×ハッピートレイルズ牝系にはコディーノ=チェッキーノを筆頭に多くの活躍馬が出ており、幅広い舞台で活躍できる優等生タイプが多い点も同配合の特徴です。

特にFair Trial増幅型の配合形とあり小回り中距離戦でのパフォーマンスは素晴らしく、前走の皐月賞ではJ.モレイラ騎手を背にビッグタイトルを獲得。日本ダービーでも大きくパフォーマンスを下げるタイプではありませんが、皐月賞以上の走りは期待するのは酷かもしれません。

マスカレードボール
母母ビハインドザマスクは芝1200~1600m重賞3勝馬で、母マスクオフはAlzao≒ダンシングブレーヴの3×3(Sir Gaylordの6×6)を持つ末脚強化型のディープインパクト産駒。本馬の3/4同血の姉には秋華賞2着馬マスクトディーヴァ(2023年ローズS、24年阪神牝馬S)がいます。

本馬はドゥラメンテ×ディープインパクトという主流配合馬で、サンデーサイレンスの3×3から受け継ぐ末脚と気難しさが特徴的。リズム良く運べるかが最大のポイントで、末脚を生かしやすい東京替わりは間違いなくプラス材料でしょう。姉同様に本当に良くなるのは秋以降ですが、スムーズに運べた時の爆発力には要注目の一頭です。

2025年日本ダービーの有力馬と評価,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
坂上 明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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