【日本ダービー】ファウストラーゼンが捲ると何が起こるか? 恩恵受けるのは2頭
SPAIA編集部

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
展開予想で考慮必須
6月1日に東京競馬場で第92回日本ダービー(以下、ダービー)が開催される。3歳馬の頂点を決める大一番。どの馬にとっても最も勝ちたいレースだ。
勝ちを貪欲に求める馬には様々なタイプがいるが、今年特に目を引く一頭にファウストラーゼンが挙げられる。キャリア5戦で上がり33秒台がないことからも末脚のキレに欠け、序盤から前に行く力も足りない馬だが、前に行けば粘り強く、近走では「捲り」で結果を出している。
「捲り」とはレース序盤で後方にいた馬が、道中で位置を押し上げて先頭に立つ、あるいは先行集団にとりつき、そのまま押し切るという戦法。見た目に派手なので注目を浴びやすい。
ファウストラーゼンは3走前のホープフルSで捲りを敢行して以来、味を占めたように同じ手を使っている。前走の皐月賞も捲って15着。惨敗を喫したことから手を変える可能性もなくはないが、末脚のキレに欠ける上、現状先行できない同馬が勝つには捲るのが手っ取り早い。今回も捲る可能性は高いと考えていいだろう。
一度できた隊列を変えてしまう捲りは展開予想に関わる。考慮必須の事項だ。そこで、ファウストラーゼンが捲った場合に何が起こるかを考察していく。そして今年のダービーで恵まれる可能性がある馬を導き出す。
日本ダービー×捲り=ロングスパート戦
以降はファウストラーゼンが捲ることを前提に考察を進める。根拠として「ダービーがスローペースになりやすい」からだ。
位置取りを上げるには、ほかの馬より速いペースで走らなければならない。つまり捲っている間はスローペースとまではいかなくても、ある程度落ち着いた流れである必要がある。
その点、ダービーは直線で全力を出すために、各馬勝負をかけるタイミングが遅くなり、前半もスローペースになりがち。ペース傾向だけなら捲るには絶好のレースと言える。
まずは「捲りがあった」ダービーの記録をもとに、ファウストラーゼンが捲ると何が起こるかを考察する。なお、対象期間は出走可能頭数が18頭以下になった1992年以降とする。
<過去に捲りがあったダービーとレースラップ>
92年
優勝馬ミホノブルボン、捲った馬スタントマン
12.8-11.7-12.3-12.2-12.2-12.2-12.5-12.5-12.3-12.6-12.0-12.5(稍重)
96年
優勝馬フサイチコンコルド、捲った馬ザゴールド
12.7-10.8-12.0-12.8-13.1-13.0-12.5-12.1-11.9-11.9-11.6-11.7(良)
17年
優勝馬レイデオロ、捲った馬レイデオロ、ペルシアンナイト
13.0-11.2-12.9-12.8-13.3-12.5-12.1-12.6-12.7-11.5-10.9-11.4(良)
20年
優勝馬コントレイル、捲った馬マイラプソディ
12.6-11.3-12.9-12.6-12.3-11.8-12.2-12.3-11.8-11.3-11.3-11.7(良)
21年
優勝馬シャフリヤール、捲った馬ディープモンスター、アドマイヤハダル
12.2-10.6-12.2-13.0-12.3-12.4-12.8-11.7-11.4-11.5-10.8-11.6(良)
24年
優勝馬ダノンデサイル、捲った馬サンライズアース、コスモキュランダ
12.5-11.4-12.4-13.1-12.8-12.6-12.7-11.7-11.3-11.1-11.2-11.5(良)
20年の空白期間があるのは意外だが、過去10回では4回と、最近は捲る馬が増えたようだ。
まず注目したいのは後半5Fの推移。特に21、24年では後半5Fのラップがすべて12.0秒未満という、いわゆる「ロングスパート戦」になっている。96、20年は後半4Fが12.0秒未満だが、残り1000m地点の12.1(96年)、12.3(20年)も速い方で、ロングスパート戦に近いラップ推移だったと言っていい。
捲る馬がいることでレースが動き、捲った馬自身もそのまま押し切る動きになるため、上記のような早めにレースが動くラップ推移になると考えられる。
稍重馬場のなかミホノブルボンが逃げ切った92年や、道中で位置を押し上げ後半3Fの上がり勝負に持ち込んだ17年のレイデオロのような年もあるが、ダービーで捲りが発生した場合、高確率で「ロングスパート戦」になると考えていい。
実際、ファウストラーゼンが捲ったホープフルSや皐月賞は、捲りがあったダービーとよく似たラップ構成となっていた。
24年ホープフルSのレースラップ
12.6-11.1-12.3-12.7-12.7-12.0-11.6-11.7-11.9-11.9
25年皐月賞のレースラップ
12.1-10.2-12.2-12.5-12.3-11.4-11.5-11.8-11.4-11.6
今年のダービーでも同様の形になる公算は高い。
今年恵まれるのは2頭
ファウストラーゼンが捲るとロングスパート戦になりやすいことが判明したところで、次に「ダービーポジション」を探っていく。以下は捲りがあった6回のダービーで2着以内に入った全12頭の、道中の主な位置取りだ。
<捲りがあった日本ダービー 道中の位置取り>
92年
1着 15番ミホノブルボン(1番人気)、逃げ
2着 13番ライスシャワー(16番人気)、2番手、中
96年
1着 13番フサイチコンコルド(7番人気)、2着馬の後ろ
2着 3番ダンスインザダーク(1番人気)、道中2~4番手、内
17年
1着 12番レイデオロ(2番人気)、まくり
2着 4番スワーヴリチャード(3番人気)、先行集団の後ろ、内
20年
1着 5番コントレイル(1番人気)、4番手、内
2着 12番サリオス(2番人気)、道中中団、外
21年
1着 10番シャフリヤール(4番人気)、2着馬の1列後ろ、中
2着 1番エフフォーリア(1番人気)、3、4番手、内
24年
1着 5番ダノンデサイル(9番人気)、3、4番手、内
2着 15番ジャスティンミラノ(1番人気)、2、3番手、中
全体的に「ある程度前にいた馬」あるいは「先行する1番人気馬の後ろ」にいた馬が好走している。
競馬では有力馬の後ろにつけたまま直線に入ると、有力馬が自力で抜け出していくため、直線で進路ができる可能性が高くなる。体力勝負のロングスパート戦では、好位につけてスムーズに抜け出すことが勝負のカギとなるのではないかと考えられる。
ダービーで捲りが発生すると、「ロングスパート戦になりやすい」、「ある程度前で追走している、あるいは有力な先行馬の後ろにいた馬が強い」ことがわかった。これらをヒントに有力候補を探る。
今年の3歳世代でロングスパート戦になったといえば、やはり皐月賞とホープフルSだろう。特にホープフルSは序盤スローペースだったことから、ダービーと流れが似る可能性が高い。となれば、1着クロワデュノール、2着ジョバンニは見逃せない。
クロワデュノールは全体的な能力が高く、皐月賞でも単勝オッズ1倍台の1番人気に支持された実力馬。ファウストラーゼンが作るペースのなかでもしっかり結果を残しており、先行もできる。本馬自身も、本馬の後ろにつける馬も好走候補になる。枠順はもちろん、周りの馬まで要チェックだ。
ジョバンニは前走皐月賞の道中で不利を受けて位置取りを下げながら、4着と健闘とした。2走前の若葉Sも先行して長く脚を使う形で勝利しており、間違いなくロングスパート戦に強い。クロワデュノールの近くの枠に入れば、かなりスムーズにレースを進められそうだ。
ちなみにデータを見ても、ホープフルSで連対していた馬は捲りがあった日本ダービーで【2-0-2-2】勝率33.3%、複勝率66.7%と良好(反対にホープフルS3着以下は日本ダービーで【0-0-0-9】)。冬の中山で開催されるホープフルSはタフな条件になりやすい。そのなかで連対した経験はロングスパート戦に生きるのだろう。
今年の日本ダービーも見どころは多いが、ファウストラーゼンの動きにも気を配りたい。そして枠順と配置にも注目したい。
《ライタープロフィール》
編集部まつ
6月1日生まれ。現地観戦派の生粋の競馬好き。レース映像から各馬の特徴をつかみ予想に取り入れる。好きな馬はコントレイル、サトノダイヤモンド、エルコンドルパサー、マルゼンスキー。
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