【日本ダービー】“三雄”並び立たず? ミュージアムマイル、クロワデュノール、マスカレードボールの明暗を探る
SPAIA編集部

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
上位人気すべてが順当とはならない
6月1日、東京競馬場を舞台に争われる日本ダービー(GⅠ・芝2400m)。今年は皐月賞1~3着馬であるミュージアムマイル、クロワデュノール、マスカレードボールの3頭が、順当に上位人気に推されることが予想される。
しかし、過去10年のダービーでは3番人気以内【5-8-4-13】複勝率56.7%と好走率は上々も、2018年以降は上位人気3頭がそろって馬券圏内に入った年はない。
1986年まで遡っても、ウイニングチケット→ビワハヤヒデ→ナリタタイシンの三強対決で沸いた1993年などわずか4回のみ。さらに、皐月賞1~3着馬だけで決着したのはマカヒキ(皐月賞2着)→サトノダイヤモンド(同3着)→ディーマジェスティ(同1着)となった2016年だけだった。
以上の傾向を踏まえれば、今年も上位人気3頭だけで決着しない可能性は十分に考慮したい。当記事ではミュージアムマイル、クロワデュノール、マスカレードボールの3頭を対象として、様々なデータを用いて各馬の不安要素を探っていく。また、もっとも不安材料の少ない馬を馬券の軸候補として挙げたい。
昨年は同舞台GⅠすべて3着以内に激走、坂井瑠星騎手
まずは騎手について。超満員のなかで行われる、日本競馬の最高峰に位置するレース。騎手にのしかかる重圧は計り知れない。彼らの実績やコース相性、勝負勘は他のGⅠ以上に結果を左右する重要ファクターであり、「誰が乗るか」もまた、馬券を考えるうえで見逃せないポイントだ。
以下では各ジョッキーのダービー成績を見ながら考察する。
■D.レーン(ミュージアムマイル)【1-1-0-2】
来日初年の19年こそ1番人気サートゥルナーリアで4着に敗れたが、23年にタスティエーラで優勝、20年サリオスで2着。他2名と比べ実績は一枚上だ。また、先週の東京芝レースでは14鞍騎乗し、騎乗機会5連勝を含む8勝をマークと勢いもある。
大舞台でテン乗りとなるのは懸念点だが、前記のタスティエーラもテン乗りでの勝利だった。軽視はできない。
■北村友一(クロワデュノール)【0-0-0-2】
16番人気16着だった20年マンオブスピリット以来となる5年ぶりの騎乗。同舞台では19年クロノジェネシスで2番人気3着の実績があるが、21年以降に同舞台GⅠでの騎乗が1度のみ(先週オークスでサヴォンリンナに騎乗)と、大舞台での経験が少ない点には注意が必要だ。
当日は2番人気以内が予想され、厳しいマークにあうだろう。最もプレッシャーがかかる立場であることを踏まえ、慎重に吟味する必要がある。
■坂井瑠星(マスカレードボール)【0-0-1-2】
騎乗数は少ないが、初騎乗の20年に9番人気サトノインプレッサで4着に善戦し、昨年は7番人気シンエンペラーを3着に導いた(残る1鞍は落馬による競走中止)。同舞台の他GⅠを見ても、23年オークスは10番人気ラヴェルで4着、昨年オークスは3番人気ライトバックで3着、ジャパンCは8番人気シンエンペラーで2着と人気以上の結果が目立つ。
今回は乗り替わりとなるが、2走前に勝利した共同通信杯からの再コンビであり、不安視する必要はない。
6月デビューの精鋭が大不振
次はデビュー時期について、気になるデータを用意した。2012年、「ダービーからダービーへ」をテーマに、2歳新馬戦はダービー翌週へ開幕時期が変更。その影響もあってか、6月の新馬戦は後のGⅠウイナーを多数輩出するハイレベル戦の傾向が強まっていった。
実際、皐月賞では13年ロゴタイプ、14年イスラボニータ、19年サートゥルナーリア、22年ジオグリフと6月デビュー組が4頭も勝利している。では、ダービーではどうなのか。デビュー月ごとの成績は以下の通り。
<デビュー月別成績(※13年以降)>
・6月(クロワデュノール)
【0-2-2-29】勝率0.0%、複勝率12.1%
・8月(ミュージアムマイル、マスカレードボール)
【2-2-1-23】勝率7.1%、複勝率17.9%
※参考:10月【6-3-3-32】
意外にも、6月デビュー組が振るっていない。単勝オッズ一桁の馬に限っても【0-2-0-7】と7頭が着外に敗退。ダービーにおいては、データ上、6月デビューの優位性がないようだ。
また、ミュージアムマイルとマスカレードボールが該当する8月デビュー組は【2-2-1-23】2勝、複勝率17.9%となっている。最多の勝ち馬を輩出しているのは10月デビュー組で【6-3-3-32】6勝、複勝率27.3%だった。
キャリア6戦以上は厳しい
続いてはここまでに使われたレース数について。過去10年のキャリア別成績を見ると明確な傾向が浮かび上がる。
<キャリア別成績(過去10年)>
・4戦(クロワデュノール)
【4-4-2-35】勝率8.9%、複勝率22.2%
・5戦(マスカレードボール)
【5-2-5-39】勝率9.8%、複勝率23.5%
・6戦(ミュージアムマイル)
【0-0-3-24】勝率0.0%、複勝率11.1%
※参考:3戦【1-3-0-10】、7戦~【0-1-0-40】
※取消、除外も1戦として扱う
過去10年の連対馬20頭中、実に19頭がキャリア5戦以内だった。ダービーへ正規の最短ルートが4、5戦であり、6戦以上は“余計なコスト”と考えていいだろう。
ローテ面で見ても、クロワデュノールとマスカレードボールが余裕を持って皐月賞に臨んだのに対し、弥生賞(それも道悪)を挟んで皐月賞を走ったミュージアムマイルとでは、余力に差がある可能性は考えられる。ミュージアムマイルの状態面は当日まで気にしたい。
好走馬の大半が持つ“東京経験”
最後に舞台となる東京芝コース経験の有無に着目する。過去10年での成績は以下となる。
<東京経験有無による成績差(過去10年)>
・東京芝経験「有」(クロワデュノール、マスカレードボール)
【8-8-9-101】勝率6.3%、複勝率19.8%
→直近5年【5-5-4-52】
・東京芝経験「無」(ミュージアムマイル)
【2-2-1-47】勝率3.8%、複勝率9.6%
→直近5年【0-0-1-21】
ざっくり見ても、好走率には約2倍の差があることに加え、直近5年では20年3着ヴェルトライゼンデを除く3着以内馬14頭に東京芝コース経験があった。一世一代の大勝負にぶっつけ本番で臨むのはやはり不安が大きい。
また、東京未経験組には17年アルアイン、18年エポカドーロ、19年サートゥルナーリアと3頭の皐月賞馬がいたが、このうちダービーで馬券圏内に好走したのはエポカドーロ(2着)のみだった点もいささか心配だ。
一方でクロワデュノールは東京スポーツ杯2歳S、マスカレードボールは共同通信杯とそれぞれ出世レースを勝利するなど、いずれも東京で2勝をマーク。33秒台前半の上がり3Fを繰り出す瞬発力も備えており、東京コースに不安はない。
皐月賞馬に付け入る隙あり
上記4項目を終えて、各馬の不安材料は以下のようになった。
■クロワデュノール
・北村友一騎手のダービー成績、東京芝2400m・GⅠの実績や騎乗数が物足りない。
・13年以降、2歳6月デビュー組が未勝利。好走率もイマイチ。
■ミュージアムマイル
・過去10年勝ち馬が出ていない「キャリア6戦以上」に該当。他2頭に比べてローテもタイト。
・東京芝経験「無」はデータ上、不振。過去に複数の皐月賞馬が着外に敗れている。
■マスカレードボール
・特になし
クロワデュノールとミュージアムマイルはいずれも2項目に引っかかったが、より厳しいデータに該当したのはミュージアムマイルだろう。初の鞍上や東京コースと、馬自身が対応しなければならないことも多く、全幅の信頼は置きにくい。よってここでは不安要素が少ない順に、マスカレードボール>クロワデュノール>ミュージアムマイルとしたい。
マスカレードボールについても少し触れると、本馬はホープフルステークスで11着大敗したように中山は得意と言えない条件下で、皐月賞は上がり2位の末脚を使い3着に好走。スタート後に不利があったことも踏まえれば、2勝を挙げる東京コース替わりでさらなる上昇の可能性は十分あるとみる。
2歳時にはアイビーS(東京芝1800m)を1:45.8の好時計で勝利。過去、2歳時の東京芝1800mで「勝ち時計1:47.0以内」かつ「上がり33.5以内」を記録したのはコントレイル、イクイノックス、クロワデュノール、マスカレードボールの4頭のみであり、既にGⅠ級の能力を証明している点は好材料だ。
2走前の共同通信杯でも、レースレコードタイの1:46.0を記録するなど、東京コースでは高値安定。皐月賞からの逆転があっても何ら不思議ではない。
《ライタープロフィール》
編集部ゲン
慶應義塾大学中退後、遊技機開発などを経てSPAIA競馬編集部へ。“趣味”を仕事に、“娯楽の価値”を追い求める日々を送る。
今週は「赤帽」(配送業者)を利用し、転居先のマンション「5階」に引っ越し作業中。
導き出されたサインは──昨年の勝ち馬と同じ3枠5番。料金は“着払い”の予定です。
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