【日本ダービー】ワグネリアンの2018年は三連単285万馬券に 春の大一番の「記録」を振り返る
緒方きしん

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中132日で勝利したダノンデサイル
今週は日本ダービーが開催される。言わずと知れた世代頂点を決める大一番で、ここを勝利した馬たちはダービー馬として競馬史に永遠に名前を刻むことになる。近年はダービー後にスランプに陥る馬も少なく、国内外で活躍する馬が多いため、本レースの注目度もより一層高まる。
今年のダービー馬は、ダノンデサイルやドウデュース、シャフリヤールらに続けるか。今回は、1986年以降のダービーの記録を振り返る。なお、昨年のダービー馬ダノンデサイルは皐月賞で馬場入場後に競走除外となっている。よって、同馬の前走は京成杯として扱う。
今年は毎日杯組から無敗馬ファンダム、3戦2勝馬リラエンブレムが参戦する。3月29日以来の実戦となるが、4月20日以来の実戦となる皐月賞、それよりも短い間隔となるステップレース組との力関係にも注目が集まる。
過去のダービー勝ち馬の前走間隔ランキングは以下の通り。
1位 中132日 ダノンデサイル(2024年)
2位 中84日 フサイチコンコルド(1996年)
3位 中63日 シャフリヤール(2021年)
昨年の優勝馬ダノンデサイルが最長記録を更新。これは皐月賞で競走除外になったことによるものだが、京成杯以来の実戦で勝利したことはまさに異例の出来事だったと言える。
4位タイにはサニーブライアン、スペシャルウィーク、アドマイヤベガと1997年~1999年のダービー馬が中48日で並ぶが、これは皐月賞、ダービーの日程の都合によるもの。そこに中48日で並ぶ1頭がウオッカである。こちらは桜花賞からの直行のため、その年の皐月賞組よりも一週間ほど間隔が長かった。
ウィナーズサークルやトウカイテイオー、ディープインパクトなど多くが中41日。皐月賞組だと、オルフェーヴルは東日本大震災の影響により皐月賞の開催が後ろ倒しとなったため中34日での勝利となった。また、最も間隔が短いのはNHKマイルCからダービーを制したキングカメハメハ、ディープスカイの中20日である(同ローテのタニノギムレットは中21日)。
キャリア3戦でダービー馬となった良血フサイチコンコルド
中84日でダービーを制したフサイチコンコルド。同馬はデビュー3戦というキャリアでダービーを制したことでも知られる。1月にデビューすると、3月にすみれSを制覇。さすがにあまりにもキャリアが短くダービーでは7番人気に甘んじたが、1番人気の武豊騎手騎乗のダンスインザダークをクビ差で交わした。
ロイヤルタッチ、イシノサンデーといったサンデーサイレンス産駒たちをまとめて差し切る末脚は見る者を魅了した。その後、カシオペアSで2着、菊花賞で3着と勝利がないまま引退となってしまったが、産駒としてブルーコンコルドやバランスオブゲーム、オースミハルカらを送り出すなど種牡馬として存在感を示した。母父としてもジョーカプチーノやウキヨノカゼを輩出している。
フサイチコンコルドの母であるバレークイーンは日本で一大牝系を確立。今月、この世を去った2009年皐月賞馬アンライバルドをはじめ、2001年京成杯勝ち馬ボーンキングや重賞で活躍したグレースアドマイヤらを輩出した。孫世代、ひ孫世代からもリンカーン、ヴィクトリー、アリストテレス、アンブロワーズ、アドミラブルといった活躍馬が次々と登場している。
今年の3歳世代も、ピコチャンブラックやレッドフェルメールといったバレークイーンの血を受け継ぐ素質馬たちがクラシック路線やステップレースを賑わせている。
国内外で活躍を続けたダービー馬シャフリヤール
中63日でダービーに挑戦して勝利を挙げたシャフリヤールもまた、名牝の血を受け継ぐ良血馬。米GⅠのBCフィリー&メアスプリントなどを制したドバイマジェスティが母であり、全兄には2017年の皐月賞馬アルアインがいる。
アルアインは毎日杯、皐月賞と連勝してダービーは5着という戦績。2019年大阪杯でブラストワンピース、キセキらを撃破してGⅠ・2勝目を挙げた。
シャフリヤールは2020年のデビュー。共同通信杯ではエフフォーリアの完勝劇のなか3着に敗れたものの、続く毎日杯で兄弟制覇を達成すると、直行したダービーでエフフォーリアにリベンジを果たした。
シャフリヤールは2022年ドバイSCで1着(翌年も5着)になると、BCターフで2年連続3着など、海外遠征で結果を残した名馬でもあった。さらに国内でもジャパンCで3着→2着、有馬記念で5着→2着と安定感抜群。6歳まで第一線で戦い続けながら果敢に海外遠征も重ね、18戦して掲示板外は2023年札幌記念の1度だけ。これからも色褪せることはない戦績であろう。
引退したシャフリヤールは、後輩のダービー馬ドウデュースらとともに今年の新種牡馬として牧場へと戻っている。
三連単配当は100万馬券が2度飛び出す
昨年のダノンデサイルは単勝46.6倍で勝利。2019年ロジャーバローズの単勝93.1倍に続き、1986年以降では2位の高配当となる。ダノンデサイルの2着には1番人気ジャスティンミラノ、3着には7番人気シンエンペラーが入り、三連単配当は歴代3位の高配当である。ダービーの三連単配当ランキングは下記の通り。
1位 28563.0倍 ワグネリアン→エポカドーロ→コズミックフォース(2018年)
2位 21557.6倍 ウオッカ→アサクサキングス→アドマイヤオーラ(2007年)
3位 2299.1倍 ダノンデサイル→ジャスティンミラノ→シンエンペラー(2024年)
4位 2019.6倍 ロジユニヴァース→リーチザクラウン→アントニオバローズ(2009年)
5位 2013.0倍 ディープスカイ→スマイルジャック→ブラックシェル(2008年)
1位、2位は文字通り桁違いの配当。5位は皐月賞未出走のディープスカイ、皐月賞9着のスマイルジャック、同6着のブラックシェルと皐月賞の掲示板外の馬が3着以内を占める大波乱。皐月賞馬キャプテントゥーレの離脱はあったものの、2着馬タケミカヅチが11着、3着馬マイネルチャールズが4着と奮わなかった。
ミクロコスモスの無念を晴らす16番人気3着コズミックフォース
2018年の勝ち馬は5番人気ワグネリアン。鞍上の福永祐一騎手にとって、これが初めてのダービー制覇となった。2着には4番人気の皐月賞馬エポカドーロ、3着には16番人気のコズミックフォースが入り、歴史的な波乱のダービーでもあった。
コズミックフォースの母は活躍馬ミクロコスモス。春のクラシック前哨戦ではクイーンC、フィリーズレビュー、フローラSと3戦連続の1番人気になったほどの期待馬で、阪神JF3着、秋華賞5着など存在感を示した。そんな母も桜花賞、オークスは未出走。母の無念を晴らすようなクラシックでの激走だった。
2018年ダービーで1番人気6着に敗れたダノンプレミアムはマイル〜中距離路線で活躍。2番人気5着のブラストワンピースは同年の有馬記念を制して凱旋門賞にも挑戦した。ステルヴィオやステイフーリッシュ、タイムフライヤーなど様々な路線で活躍を収めた馬たちも出走していた。
レース条件に合わなかったり体調が整わなかったり、さらには本格化前だったりと、ここで敗れた馬たちも、後々になって活躍をすることは多い。今回の出走各馬がレース後にどのような道を歩んでいくのかも、しっかりと見守っていきたい。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。
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