【日本ダービー】皐月賞組はミュージアムマイルが一枚上 別路線なら毎日杯1着ファンダムが刺客筆頭

勝木淳

過去10年のデータから見る日本ダービー,ⒸSPAIA

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6月ダービーには物語がある

今年も競馬の祭典が巡ってきた。年に一度、生涯一度の晴れ舞台に立つ18頭は2022年に生産された7950頭から勝ち抜き、選ばれた精鋭たちだ。まずは出走枠を獲得した18頭に心から拍手を送りたい。

日本ダービー当日は6月1日。6月ダービーは1986年以降7レースあり、二冠馬ネオユニヴァース、NHKマイルCとの変則二冠馬ディープスカイが誕生した。

ほかにはキャリア3戦目で勝ったフサイチコンコルド、大西直宏渾身の逃げサニーブライアン、武豊をダービージョッキーにしたスペシャルウィーク、翌年連覇のアドマイヤベガ、橋口弘次郎調教師の悲願達成ワンアンドオンリーとドラマチックな結末ばかり。6月ダービーには物語がある。

ここからは過去10年分のデータを使用して今年のダービーを展望する。

人気別成績,ⒸSPAIA


過去10年で1番人気は【2-3-2-3】勝率20.0%、複勝率70.0%と思ったほど勝っていない。さすがにダービーとなると主役がすんなり勝ち切るほど甘くなく、ライバルたちの包囲網も強力になる。

2番人気【1-3-1-5】勝率10.0%、複勝率50.0%、3番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%と推移していき、5番人気以内8勝までがひと区切り。6番人気【0-0-1-9】複勝率10.0%以下は確率が下がるも、昨年ダノンデサイル9番人気、2019年12番人気ロジャーバローズなど伏兵の優勝もある。

どの馬も一発勝負での大逆転を狙ってくる。そのせめぎ合いがダービーの価値をさらに高めるのだ。

ちなみに5番人気以内のうち、前走皐月賞3着以内だと【5-8-2-5】。今年、ミュージアムマイル、クロワデュノール、マスカレードボールがすべて敗れるというシナリオは考えにくく、3着以内に入る確率75%を踏まえると、2頭は馬券圏内に入りそうだ。3頭の取捨と順番、そして残る1枠に入る馬を探す。そんなラインが予想の基本となるだろう。

一角崩しを託すのはファンダム、ファイアンクランツ

上記3頭に対抗しうる存在はどの馬だろうか。皐月賞はゴチャつく場面が多いレースだったため、不利に泣いたジョバンニらの巻き返しもあるだろう。青葉賞馬不在は残念だが、毎日杯を勝ったファンダムら未対戦の勢力にも注目したい。

前走レース別成績,ⒸSPAIA
前走皐月賞・着順別成績,ⒸSPAIA


新勢力台頭も楽しみだが、やはり前走皐月賞【7-9-7-74】勝率7.2%、複勝率23.7%は譲れない。ダービーは皐月賞のゴールの先にある。古から伝わる格言は令和でも通用する。

さて、皐月賞組の着順内訳だが、1着【2-4-1-3】勝率20.0%、複勝率70.0%、2着【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%と1、2着は互角。ミュージアムマイルとクロワデュノールの差はないに等しい。

だが、2着馬が勝ち馬と0.3秒以上の差をつけられていた場合は【0-0-0-2】、反対に皐月賞0.1秒以上の勝利なら【2-3-1-1】。データ上では、0.3秒差つけたミュージアムマイルを一枚上にとる必要がある。クロワデュノールとコンビを組む苦労人、北村友一騎手の悲願にかけたい気持ちもあり、複雑だ。

反対にミュージアムマイルは皐月賞から乗り替わりとなる。皐月賞を勝ち、ダービー乗り替わりは2019年サートゥルナーリアが4着に敗れた。奇しくも鞍上は同じダミアン・レーン騎手。借りを返せるだろうか。

1、2着を除くと、3着【1-2-1-5】勝率11.1%、複勝率44.4%、5着【1-0-2-6】勝率11.1%、複勝率33.3%、6~9着【1-1-2-22】勝率3.8%、複勝率15.4%。ひと桁着順なら一発逆転を秘める。

マスカレードボール、サトノシャイニングは東京重賞好走歴があるが、共同通信杯勝ち馬はダービー【0-4-1-5】。皐月賞とは好相性もダービー勝ち馬はこの10年出ていない。皐月賞馬ディーマジェスティ、エフフォーリア、ジャスティンミラノも一歩足りなかった。ここに2000mと2400mの違いがみえる。

前走皐月賞・人気別成績,ⒸSPAIA


皐月賞組を別角度から。皐月賞1番人気【3-1-1-3】勝率37.5%、複勝率62.5%。3着以内に絞ると【2-1-0-2】なので、やはりクロワデュノールの巻き返しはないと決めつけられない。

一方、ミュージアムマイルが該当する皐月賞3番人気も【2-3-0-4】勝率22.2%、複勝率55.6%。皐月賞1着はドゥラメンテと同じで3着以内は【2-3-0-0】なので、同馬が崩れる場面も想定できない。

また、マスカレードボールの4番人気は【0-0-2-7】複勝率22.2%。一角が崩れるならマスカレードボールだろうか。東京替わりで逆転をといいたくなるが、共同通信杯勝ち馬の成績も踏まえると、そういいきれない部分もある。

前走皐月賞以外の主要5レース・人気別成績,ⒸSPAIA


別路線組では青葉賞、京都新聞杯、毎日杯、プリンシパルS、京成杯に絞ってデータをみる。なお、昨年勝ち馬ダノンデサイルは皐月賞除外ではなく、前走京成杯として取り扱う。

その前走人気別をみると、1番人気は【0-0-2-13】複勝率13.3%と案外で、2番人気【2-1-1-7】勝率18.2%、複勝率36.4%と目立つ。勝ち馬のうちの一頭が毎日杯を2番人気で制したシャフリヤール。まったく同じプロフィールをもつのがファンダムだ。未対戦とはいえ、上位を食う力は十分ある。

青葉賞2着ファイアンクランツも前走2番人気だ。23年ハーツコンチェルトが青葉賞2番人気2着から本番3着に好走。6番人気で妙味もあった。

ミュージアムマイル、クロワデュノールに割って入るのはファンダム、ファイアンクランツではなかろうか。

過去10年のデータから見る日本ダービー,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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