単回収率120%&勝ち星量産、ルメール騎手が“無双状態” 東京芝2400mを徹底検証

東大ホースメンクラブ

東京芝2400mのコースレイアウト,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

チャンピオンコースにふさわしいフェアな形態

25日、東京芝2400mで牝馬クラシック第2戦目・オークスが開催される。二冠女王を目指すエンブロイダリー、桜花賞2着の2歳女王アルマヴェローチェ、桜花賞では出遅れるも豪快に追い込んで3着に入ったリンクスティップなどの桜花賞上位組に加えて、フラワーCを2馬身半差で圧勝したレーゼドラマ、レースレコードでフローラSを勝利したカムニャックなど、非常に楽しみなメンバーがそろった。

当該コースの重賞は計4レースで、GⅠはオークスのほか、全てのホースマンの夢・日本ダービー、外国馬と歴戦のジョッキーが秋の府中を彩るジャパンカップの3レース。GⅡはダービートライアルの青葉賞が行われる。

ここからは東京芝2400mコースがどのような特徴を持つのか、データで分析していく(使用するデータは2020年5月24日~2025年5月18日の過去5年。ただし、オークスとダービーについては過去10年のデータを使用する)。

まずはコース紹介。大箱コースを1周する形態で、ホームストレッチからスタートし、しばらく平坦な道を進んだ後、1コーナーから向正面半ばまではだらだらと下っていく。向正面では上り坂こそあるものの、上りきると再び3コーナー途中まで下りが続く。

ここでスピードアップした各馬を待ち受けるのは525.9mの最終直線と高低差約2mの上り坂。長丁場かつ最後までタフさを問われる、チャンピオンコースにふさわしいフェアなコース形態だ。

8枠に妙味あり

東京芝2400m 枠別成績,ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去5年の枠別成績>
1枠【18-18-6-145】
勝率9.6%/連対率19.3%/複勝率22.5%/単回収率90%/複回収率57%
2枠【10-8-18-157】
勝率5.2%/連対率9.3%/複勝率18.7%/単回収率39%/複回収率57%
3枠【20-18-17-147】
勝率9.9%/連対率18.8%/複勝率27.2%/単回収率105%/複回収率74%
4枠【13-14-25-155】
勝率6.3%/連対率13.0%/複勝率25.1%/単回収率24%/複回収率75%
5枠【20-25-10-171】
勝率8.8%/連対率19.9%/複勝率24.3%/単回収率50%/複回収率59%
6枠【26-24-11-183】
勝率10.7%/連対率20.5%/複勝率25.0%/単回収率98%/複回収率53%
7枠【19-20-31-216】
勝率6.6%/連対率13.6%/複勝率24.5%/単回収率29%/複回収率63%
8枠【24-24-31-216】
勝率8.1%/連対率16.3%/複勝率26.8%/単回収率87%/複回収率104%

まずは枠順別成績について。1~4枠が【61-58-66-604】複勝率23.4%、複回収率66%に対して、5~8枠が【89-93-83-786】複勝率25.2%、複勝回収率71%。内枠よりも外枠の方が複勝率、回収率の両方で上という結果になった。

妙味の観点では、ダービーやジャパンCの際に毎度話題になる「東京2400mは内枠有利」という情報が多くの人に知れ渡ったことが影響。内枠の馬に人気が集中しやすく、外枠の馬の妙味が出てきている。

実際、複勝回収率が唯一プラスなのは大外の8枠で、複勝率26.8%、複回収率104%を記録。外枠で嫌われている馬がいれば積極的に狙っていこう。

では、ダービーとオークスではどうか、過去10年のデータを見てみよう。

オークスでは、1~4枠【4-5-5-63】複勝率18.2%、複回収率82%に対し、5~8枠【6-5-5-84】複勝率16.0%、複回収率55%と複勝率ベースではやや内枠優勢。ただし勝率では、1~4枠は勝率5.2%、単回収率9%なのに対して、5~8枠は勝率6.0%、単回収率32%と外枠の方が上であり、比較的内外フラットと考えられる。オークスはBコース最終週に開催されるため、馬場の内側が荒れていることが多く、内枠がさほど有利にならないのである。

一方のダービーは、1~4枠【4-6-4-66】複勝率17.5%、複回収率95%に対して、5~8枠【6-4-6-82】複勝率16.3%、複回収率40%と圧倒的に内枠優勢だ。ダービーはCコース初週に開催されるため、内ラチ沿いに綺麗な馬場が出現することで、内枠が有利になりやすい。

長い直線だからこそ「前」に好機

東京芝2400m 脚質別成績,ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【17-18-16-105】
勝率10.9%/連対率22.4%/複勝率32.7%/単回収率106%/複回収率131%
先行【55-57-50-351】
勝率10.7%/連対率21.8%/複勝率31.6%/単回収率102%/複回収率87%
差し【54-49-49-484】
勝率8.5%/連対率16.2%/複勝率23.9%/単回収率64%/複回収率60%
追込【21-23-29-426】
勝率4.2%/連対率8.8%/複勝率14.6%/単回収率18%/複回収率42%
マクリ【3-4-5-21】
勝率9.1%/連対率21.2%/複勝率36.4%/単回収率51%/複回収率76%

次に脚質別成績について。直線の長い東京2400mだからこそ、差し追込が有利……と思われがちだが、実際はその逆。差し、追込よりも逃げ、先行の方が複勝率、複回収率ともに優秀だ。

最終直線に向けて余力を残そうと多くの騎手が考えるため、道中はスローペースになりやすく、案外差し届かないというパターンが多く見られる。直線の長い東京コースだからこそ、逃げ、先行馬に妙味が生まれている。

ただしオークスでは、逃げ【0-0-0-10】複勝率0.0%、先行【1-5-1-29】複勝率19.4%、差し【7-4-7-64】複勝率22.0%、追込【2-1-2-44】複勝率10.2%と差し、追込が好調だ。

オークスは、出走馬の多くを占めるのが800mもの距離延長となる前走桜花賞組。そのため、適性距離の短いスピードタイプの馬や折り合いのつかない馬が出走しており、前がかりの競馬になりやすい。すると、ペースが速くなって、差し、追込勢が有利になりやすいという仕組みだ。

直近5年のオークスに絞ると、4角5番手以内から馬券に絡んだのは2020年2着のウインマリリン(7番人気)と3着ウインマイティー(13番人気)、2022年2着のスタニングローズ(10番人気)の3頭のみ。このうち2頭が後にGⅠを制しており、オークスで先行して馬券に絡むには相当な能力が必要になる。

一方のダービーは、逃げ【0-1-0-9】複勝率10.0%、先行【5-2-2-25】複勝率26.5%、差し【3-6-7-68】複勝率19.0%、追込【1-1—1-42】複勝率6.7%とオークスに比べて、先行馬が優勢。牡馬は中心となる前走皐月賞組が400mの距離延長で済む上に、別路線も2400mの青葉賞、2200mの京都新聞杯組が多く、前が壊滅するような極端なペースになりにくい。

ダービーでは前述したコース全体での脚質傾向と同様、直線が長い東京だからといって、差し、追込馬の評価を上げすぎないように注意したい。

「牝馬」のハービンジャー産駒が狙い目

この章では種牡馬別成績について取り上げる。

東京芝2400m 種牡馬別成績,ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去5年の種牡馬別成績>
ドゥラメンテ【14-12-12-46】
勝率16.7%/連対率31.0%/複勝率45.2%/単回収率53%/複回収率90%
ルーラーシップ【10-5-7-70】
勝率9.8%/連対率24.5%/複勝率31.4%/単回収率32%/複回収率80%
ハービンジャー【10-10-3-61】
勝率11.9%/連対率23.8%/複勝率27.4%/単回収率121%/複回収率57%

■ドゥラメンテ
2022年スターズオンアースと2023年リバティアイランドがオークスを制覇している。GⅠに絞ると【2-2-2-11】で複回収率122%とプラス域をマーク。2023年オークスのドゥーラ(15番人気3着)や2024年ジャパンCのドゥレッツァ(7番人気2着)など、穴馬もバンバン馬券に絡んでおり、該当馬がいれば積極的に馬券に組み入れたい。

■ルーラーシップ
ドゥラメンテとは違って、大舞台というよりは未勝利戦や1勝クラスといった下級条件が狙い目だ。未勝利では【2-1-2-18】複勝率21.7%、複回収率104%、1勝クラス【1-4-1-6】複勝率50.0%、複回収率124%と複勝ベタ買いでプラス。勝率や単回収率はそこまで高くないので、ヒモとして馬券に組み込むことをオススメする。

■ハービンジャー
昨年のオークスをチェルヴィニアが制している。狙い目はとにかく牝馬だ! 牡馬、セン馬が【4-7-2-45】で勝率6.9%、単回収率21%なのに対して、牝馬は【6-3-1-16】で勝率23.1%、単回収率345%。ここまで大きな差が開くのは珍しく、牝馬を見つけたら積極的に狙っていこう。

今週のオークスには上記産駒から、ドゥラメンテ産駒のケリフレッドアスク、ハービンジャー産駒のアルマヴェローチェが出走予定だ。

ほか注目馬では、リンクスティップが該当するキタサンブラック産駒が【4-4-2-24】複勝率29.4%、複回収率35%、エリカエクスプレスが該当するエピファネイア産駒は【6-4-6-44】で複勝率26.7%、複回収率47%、エンブロイダリーが該当するアドマイヤマーズ産駒は【0-0-0-1】となっている。

来週のダービーについても確認すると、ドゥラメンテ産駒からはマスカレードボール、ファイアンクランツ、エムズ、ホウオウアートマン(抽選対象)が出走登録。ルーラーシップ、ハービンジャー産駒の登録はない。

その他では、前記のキタサンブラック産駒からクロワデュノールが登録し、サトノシャイニング、エリキング、リラエンブレムが該当するキズナ産駒は【3-12-11-58】複勝率31.0%、複回収率120%と好相性。一方、ミュージアムマイルが該当するリオンディーズは【0-0-1-7】で複勝率12.5%、複回収率17%となっている。

ルメール騎手には逆らえない

最後は騎手別成績を取り上げる。

東京芝2400m 騎手別成績,ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去5年の騎手別成績>
C.ルメール【44-22-7-32】
勝率41.9%/連対率62.9%/複勝率69.5%/単回収率120%/複回収率96%
田辺裕信【9-17-10-42】
勝率11.5%/連対率33.3%/複勝率46.2%/単回収率92%/複回収率103%
戸崎圭太【8-14-8-63】
勝率8.6%/連対率23.7%/複勝率32.2%/単回収率53%/複回収率63%

■C.ルメール騎手
東京芝2400mといえばこの男、ルメール騎手。期間内の勝利数2位の田辺騎手に35勝差をつけて独走している。勝率は40%オーバー、単回収率も120%でプラス域と圧倒的。特に、1番人気馬では【31-6-5-9】で勝率60.8%、単回収率125%、複勝率は82.9%と衝撃的で、逆らうのは難しい。素直に軸として信頼するのが吉だ。

■田辺裕信騎手
2022年日本ダービーではアスクビクターモアに騎乗し、素晴らしい騎乗で3着に入った。回収率では複勝が103%と黒字。枠や脚質を問わないオールマイティさを発揮しており、前走上がり最速の馬では【5-3-2-4】で勝率35.7%、単回収率197%。前走4角5番手以内の馬では【5-5-4-16】で勝率16.7%、単回収率115%と、異なったタイプで単回収率100%以上をマークしている。

■戸崎圭太騎手
昨年はオークスのステレンボッシュ、ダービーのジャスティンミラノと悔しい2着が続いたことが印象的だ。クラス別では、3勝クラスで【2-2-3-8】で複勝率46.7%、複回収率110%をマーク。リステッドでも【1-1-0-0】と好成績で、9番人気馬を勝利に導いたことで単回収率は1380%を記録している。上級条件での信頼度は高い。

<オークスの騎乗予定>
C.ルメール騎手:エンブロイダリー
田辺裕信騎手:サタデーサンライズ
戸崎圭太騎手:エリカエクスプレス

<日本ダービーの騎乗予定>
C.ルメール騎手:ショウヘイ
田辺裕信騎手:※記事公開時点では発表なし
戸崎圭太騎手:エムズ

ほか、オークスではリンクスティップに騎乗予定のM.デムーロ騎手は【5-2-7-33】で複勝率29.8%、複回収率68%、アルマヴェローチェに騎乗予定の岩田望来騎手は【0-0-3-17】で複勝率15.0%、複回収率29%となっている。

翌週のダービーも確認すると、クロワデュノールに騎乗予定の北村友一騎手は【0-1-1-4】で複勝率33.3%、複回収率60%、ミュージアムマイルに騎乗予定のレーン騎手は【9-5-7-19】で複勝率52.5%、複回収率90%、サトノシャイニングに騎乗予定の武豊騎手は【3-2-2-22】で複勝率24.1%、複回収率57%という成績だ。

東京芝2400mのコースデータ,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

《関連記事》
【オークス】過去10年のレースデータ
【オークス】桜花賞馬エンブロイダリー、桜花賞1番人気エリカエクスプレスも消し! ハイブリッド式消去法
【オークス】唯一割引データなしのリンクスティップが本命 対抗は好条件4つのブラウンラチェット