【オークス】本命候補レーゼドラマは時計の掛かる馬場で浮上 対抗はエリカエクスプレス(訂正)
山崎エリカ

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3~4角や最後の直線で中~外に出せる馬が活躍
オークスは2回東京開催10日目、Bコース使用4日目で行われ、前週よりも3~4角や最後の直線で中~外に出せる馬が活躍している傾向。今週末は雨予報となっており、雨が降るとその傾向に拍車が掛かる。
過去10年で逃げ馬の3着以内はゼロ、先行馬は1勝、2着5回、3着3回。先行馬の1勝は過去10年でもっともスローペースになった2017年(勝ち馬ソウルスターリング)だった。しかし、追込馬も1勝、3着2回と届き切れていない。1着は3~4角や最後の直線で外に出せる中団~差し馬、2着は先行馬というイメージだ。
能力値1~5位の紹介

【能力値1位 アルマヴェローチェ】
昨年の2歳女王であり、前走の桜花賞でも2着。前走は9番枠からやや出遅れ、無理をさせずに中団外目を追走。道中ではビップデイジーをマークして進めた。
3~4角ではビップデイジーの後ろで我慢し、4角出口ですっと外へ誘導。直線序盤で追われると一気に先頭列に上がったが、中目を捌いたエンブロイダリーに並ばれる。ラスト1Fで唯一同馬に食らいついたが、クビ差で敗れた。
ここは稍重とややタフな馬場で前後半4F46秒6-46秒5の緩みない流れ。エリカエクスプレスがやや掛かりながら逃げてハイペースとなり、後方有利の展開に恵まれての2着だった。しかし、3着リンクスティップには2馬身半差をつけており、ここではエンブロイダリーに並ぶトップタイの指数を記録している。
本馬は高速馬場で行われた昨年の阪神JFでも、桜花賞と似たような立ち回りで後方有利の展開に恵まれる形で勝利。高速馬場でもやれてはいるが、タフな馬場で消耗戦となった札幌2歳Sでも、マジックサンズとの一騎打ちでハナ差2着に善戦しているように、上がりの掛かる展開がベストだ。
さらにこれまで4戦して全て2着以内、その2着もハナ差、クビ差と崩れていない。本馬はトップスピードを長く維持できることが強み。時計の掛かる芝2400mは歓迎のタイプだけに、重い印は外せない。
【能力値2位 エンブロイダリー】
デビュー2戦目の新潟芝1800mの未勝利戦では出遅れを挽回して逃げ、7馬身差でレコード勝ちした素質馬。次走のサフラン賞は疲れが出たようで5着に敗れたが、その後、1勝クラスとクイーンCを連勝と成長力を見せた。
2走前のクイーンCは7番枠からまずまずのスタートを切り、促して2番手の外を追走。道中は緩みなく流れたが、2番手の外を維持して3角に入った。3~4角でもコントロールしながら2番手で進めて先頭と3/4馬身ほどの差で直線へ。
直線序盤は追い出しを待って、ラスト2F手前で肩鞭を入れると、すっと逃げ馬をかわして1馬身ほど前に出る。ラスト1Fで食らいつくマピュースを突き放して2馬身半差で完勝した。
当時は高速馬場で前後半4F45秒7-46秒5のほとんど緩みない流れ。前へ行った馬には不利な展開であり、2番手から押し切った内容にはかなりインパクトがあった。サフラン賞のように高速馬場で前有利の展開を、出遅れて後方からにならなければ順当に桜花賞馬になる可能性が高いと見ていた。
その桜花賞では7番枠から躓きかけて出遅れたが、そこから内に切り込みながら挽回して中団馬群の内目を追走。道中で中目のスペースが開いたので中目に誘導して好位を狙ったが、外から切れ込まれて難しくなり、中団中目で3角へ。
3~4角では中団内目で包まれ、進路もない状態で我慢。直線序盤で3列目付近から中目の狭い間を割って外に誘導し、先頭列まで上がる。ラスト1Fで前にいたアルマヴェローチェをしぶとく内から捉えてクビ差で勝利。アルマヴェローチェに並ぶトップタイの指数を記録している。
ただし、本馬は2走前の騎乗後にC.ルメール騎手が「キレ味はあまりないが、長くいいペースを維持できる馬」とコメントしていることから、距離延長となる今回は、ある程度前の位置を取ってくることが予想される。これまで先行した場合に、ペースが速かったにせよ、ラスト1Fで甘さを見せていることやオークスの傾向を考えるとアルマヴェローチェの方が優勢だろう。
【能力値3位タイ パラディレーヌ】
2走前のつばき賞(京都芝1800m)で後の若葉Sの2着馬ローランドバローズに3馬身差をつけて勝利した馬。2走前は5番枠からやや出遅れ、そこから押し進めたが後方2番手からの追走。道中で外から徐々に挽回して好位の外で3角に入った。
3~4角でペースダウンすると、楽に2列目の外から先頭列まで上がって直線へ。直線序盤ですっと伸びて一気に抜け出し、3馬身ほど前に出る。ラスト1Fでも踏ん張り通して3馬身差で完勝した。
ここはややタフな馬場で前後半4F47秒3-47秒1の平均ペース。京都芝1800mの3歳1勝クラスらしく、3角の上りから4角までペースが落ちているが、後方2番手から位置を挽回し、ラスト2Fで一気に抜け出しての勝利はかなりインパクトがあった。
2走前の走りが評価され、前走のフラワーCでは断然の1番人気に支持されたが、ここでは2着敗退。前走は4番枠から出遅れて進路が狭くなり、後方からの追走だった。道中では包まれてつばき賞のように動けず、後方内目で我慢した。
3~4角でも後方馬群の中目で進路がなく、4角で外に誘導しながら仕掛けをワンテンポ遅らせ、直線序盤でスムーズに外に誘導。そこから追われて4番手争いに加わり、ラスト1Fでようやく伸び始める。前のレーゼドラマとの差を詰めたものの、内から寄られる不利もあり、2馬身半差までだった。
前走は標準馬場で前後半4F47秒8-47秒7の緩みない流れ。ここでは包まれていたが、坂スタートの中山で前半4F47秒というかなり速い入り。さらに3角からペースが上がっており、進路取りがスムーズでも4角まで位置を挽回できなかった可能性が高い。
ただ出遅れて序盤である程度、前の位置を取れなかったのは痛かったし、ラスト1Fで内から寄られなければ勝ち馬との差をもう少し詰められていたはず。
本馬は前走時、最後の直線で外から一緒に伸びた3着馬ゴーソーファーとの競り合いをクビ差で先着しているが、一線級が相手だと末脚比べで見劣る面がある。ここも出遅れて後方からになると苦しいが、4角までにある程度、前の位置が取れていればチャンスがある。
【能力値3位タイ リンクスティップ】
デビューから上昇一途で、前走の桜花賞は3着。前走は12番枠から出遅れて窮屈になり、下げて最後方からの追走。道中ではさらに下げ切って前にスペースを作って進めた。
3角で徐々に進出してスペースを潰しながら勢いに乗せ、4角ではそのまま外に誘導しながら中団外まで押し上げて直線へ。直線序盤で追われてすっと伸びたがアルマヴェローチェに対しては1馬身半差ほど。ラスト1Fで前2頭にやや差を広げられて2馬身半差の3着だった。
最後方から追走となった本馬は前2頭よりも展開に恵まれていたが、ラスト1Fで差を広げられたのはやや物足りない。
しかし、2走前のきさらぎ賞では、タフな馬場で逃げたジェットマグナムと道中で2番手に上がったウォーターガーベラ(次走、チューリップ賞2着)が10頭中9着、10着に敗れる前にかなり厳しい展開を、序盤で2番手、道中で3番手に下げて進めて2着に善戦したことは高評価できる。
つまり、前走はきさらぎ賞が消耗度の高いレースになったことで疲れが残り、出遅れて追走に忙しくなってしまったことが、ラスト1Fで上位2頭に離された一因でもあると考えられる。
きさらぎ賞は豊富なスタミナを示す内容で、時計の掛かる芝2400mは歓迎だが、気になるのは前走で展開に恵まれて指数を上昇させたこと。前走時、展開に乗じてある程度走ったことで、疲れが残って上昇しきれない可能性がある。舞台への適性の高さでどこまで上位争いに加われるかになる。
【能力値5位 エリカエクスプレス】
デビュー2戦目のフェアリーSを勝利。ここでは12番枠からまずまずのスタートを切り、先行して2列目の最内を追走。道中はペースが速かったがやや掛かっており、コントロールに専念して進めた。
3~4角では最内を通り、4角で前2頭の外に誘導して直線へ。直線序盤で持ったまま先頭に立って半馬身のリードを奪うと、ラスト1Fで追われてしぶとく抜け出し、3馬身差で圧勝した。
ここは高速馬場で前後半4F45秒5-47秒3のかなりのハイペース。前が不利な展開のなか、先行策から押し切り勝ち。記録した指数も後の桜花賞3着時のリンクスティップより高いものだった。
しかし、前走の桜花賞では5着に敗退。これはオーバーペースで逃げて、ラスト1Fで失速したもの。本馬は快速型だけに、雨予報で距離延長というのは減点材料だが、フェアリーS時のように折り合えればチャンスがある。対抗評価だ。
馬場が悪化するならレーゼドラマ
レーゼドラマはデビュー2戦目の未勝利戦(中京芝2000m)を5馬身差で圧勝した馬。ここでは16番枠から五分のスタートだったが、先行して2番手を確保。道中はペースが速かったが、2番手の外を楽に追走していた。
3~4角でも持ったまま逃げ馬に並びかけ、先頭列で直線へ。直線序盤で追われるとしぶとく伸びて、堂々と先頭に立ち2馬身半ほど前に出る。ラスト1Fでも踏ん張って後続を突き放した。
ここは1月の中京開催でややタフな馬場。前半5F60秒ジャストという馬場にしてはかなりのハイペースを、2番手から早め先頭に立って押し切る強い内容だった。
次走のゆりかもめ賞では6着に敗退。ここは極端なスローペースで上がりの速い決着になったのも敗因のひとつだが、未勝利戦が消耗度の高い内容だっただけに、強い疲れが出たのだろう。
前走のフラワーCではパラディレーヌを2着に下して勝利。前走では11番枠から押して二の脚よく先行し、内のハードワーカーを行かせて2番手を追走。道中もハードワーカーをマークしながら進め、3角手前で楽に同馬に並びかけて3角で先頭に立った。
そこから2列目以降をやや離しながら4角出口で仕掛けて1馬身3/4差のリードで直線へ。直線序盤でさらに離して2馬身半差。ラスト1Fでも余裕を持って2馬身半差で完勝した。
前走は標準馬場で前後半4F47秒8-47秒7の緩みない流れ。例年のフラワーCは前半4F49秒台で、速くても48秒台だが、47秒台で通過し、3角から動いて後続の末脚を封じたことは高評価できる。
本馬はスタミナが豊富な馬。オークス当日、馬場が悪化すればするほどチャンスが高まる。決め手が足りないので勝ち負けまでは難しそうだが、先行しての2着、3着は十分にありそうだ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)アルマヴェローチェの前走指数「-19」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
※編集過程で「過去10年で逃げ馬の3着以内はゼロ、先行馬は1勝、2着5回、3着1回」と記載する誤りがございました。正しくは「過去10年で逃げ馬の3着以内はゼロ、先行馬は1勝、2着5回、3着3回」です。お詫びして訂正いたします。5月25日10時25分
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