【オークス】別路線で「遅めの上がり2位以内」だった馬が狙い目! データで導く穴馬候補3頭
鈴木ユウヤ

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データで見る「穴候補3頭」
今週日曜の東京メインはオークス。牝馬三冠ロードの第2戦にして、3歳牝馬にとって長丁場といえる芝2400mが舞台だ。
もっとも、桜花賞から一気に距離が変わる割に意外と荒れないのがこのレースの特徴。過去10年の勝ち馬10頭はいずれも単勝オッズ10倍未満で、同30倍以上で連対したのは2019年2着カレンブーケドールだけ。それもレース当時こそ伏兵扱いだったが、後から見れば同年秋に秋華賞、ジャパンCで2着に入るほどの実力馬である。
穴を狙うにせよ、大振りせず「中穴」くらいのゾーンでおいしい馬を探すのが正着だろう。そんなことを念頭に置きつつ、様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。
別路線組は「遅めの上がり2位以内馬」を狙え パラディレーヌ
まず1頭目はパラディレーヌ。未勝利戦と1勝クラスで着差をつけて連勝し、フラワーCでは出遅れながらも2着までは追い込んできた。
オークスは毎年「レースレベルが高い桜花賞組」vs「距離経験で勝る別路線組」の構図になるのが基本。まずは前走が1800m以上だった「別路線組」の好走パターンからチェックする。

「別路線組」の取捨はシンプルで、前走の上がり3F順位に注目すればいい。過去10年で前走上がり2位以内の馬が【2-4-3-27】複勝率25.0%、複回収率168%、同3位以下の馬が【1-1-0-53】複勝率3.6%、複回収率29%と明暗くっきり分かれている。前哨戦でしっかり末脚を使えた馬の方が、直線の長い東京コース、芝2400mでは結果を残しやすい。ある意味想像通りのデータといえる。
ところが前走上がり2位以内だった馬のうち、その時の上がりタイムが「34.5秒以下」だった馬は【1-1-0-18】複勝率10.0%、複回収率30%と振るわない。逆に、同「34.6秒以上」なら【1-3-3-9】複勝率43.8%、複回収率340%と圧倒的だ。
つまり「瞬発力勝負の中でのキレ味」ではなく「底力が問われる展開の中で、他馬より相対的に速い上がりを使う能力」こそ、オークス好走に直結する資質なのだと考えられる。
パラディレーヌの前走フラワーCは上がり34.8秒でメンバー中最速。まさに上記と合致する。右回りのコーナリングにぎこちなさを感じる走りで、東京への舞台替わりも好材料だ。今年大躍進の丹内祐次騎手がついにGⅠを制するのか、という観点でも期待したい。
桜花賞組は「1800m以上の勝利実績」で絞り込む ビップデイジー
続いてビップデイジーを取り上げる。今春ここまでの2戦は3着、11着といまひとつ走れていないが、2歳時には紫菊賞を上がり最速V、阪神JFでも2着に入った実力馬だ。

今度は桜花賞組のデータを掘り下げよう。こちらは「中距離での勝利実績」がキーになる。過去10年のオークスにおける前走桜花賞組の全体成績は【7-5-7-63】複勝率23.2%、複回収率51%だが、このうち「1800m以上で勝利歴あり」の馬に限ると【3-2-5-18】複勝率35.7%、複回収率96%まで上がる。
もう一段階絞って「1800m以上で着差0.2秒以上の勝利がある馬」だと【3-2-3-10】複勝率44.4%、複回収率129%。好走率がことさら高く、馬券的にも黒字域となる。
今年は1着エンブロイダリー、3着リンクスティップも含め該当馬が複数いるが、穴では同11着ビップデイジーに注目したい。近親にマリアライトやダンビュライトがおり、父は菊花賞と有馬記念を制したサトノダイヤモンド。血統的にはマイラーでなく、中長距離でこそ本領発揮のタイプだろう。
芝1800mの紫菊賞を0.2秒差で勝った際は、ラスト11.4-11.2-11.0の加速ラップもマークする優秀なレース内容だった。2歳時のパフォーマンスが戻ってくれば大仕事があってもいい。
中長距離戦はA.シュタルケ騎手にお任せ! カムニャック
ラストはフローラSの勝ち馬カムニャック。鞍上は短期免許で来日中の大ベテラン、A.シュタルケ騎手が予定されている。

シュタルケ騎手のJRAでのデータ(通算)を見ると「中長距離が得意」という傾向がハッキリ浮かび上がる。2000m以下で複勝率26.3%、複回収率77%に対し、2100m以上では複勝率38.2%、複回収率122%。さすが長距離戦が盛んなドイツで何度もリーディングを獲得しているだけあって、ロングディスタンスに強い騎手といえる。先日の天皇賞(春)でもビザンチンドリームを惜しい2着まで導いた。
今回と同じ芝2400mも【10-8-6-25】複勝率49.0%で、単回収率144%、複回収率125%とプラスを計上している。今回の来日ではなかなか勝ち星に恵まれていないが、それでも2100m以上では【0-1-3-11】複勝率26.7%、複回収率121%と妙味がある。
カムニャックは中京芝2000mの新馬戦でラスト10.9-10.9のラップを差し切り勝ち。その後マイル戦で連敗を喫したが、左回りの中距離に戻ったフローラSを快勝した。勝ち時計1:58.6はレースレコードでもあった。能力的にはGⅠでも十分に通用しそうだ。
《ライタープロフィール》
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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