【オークス】特殊な“2400m”という条件、悩ましいエンブロイダリーらの取捨 血統では桜花賞11着馬が浮上

坂上明大

2025年オークスの注目血統,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

傾向解説

3歳牝馬三冠第2戦・オークス。東京芝2400mという3歳牝馬にとっては過酷な条件で行われるため、距離適性の評価が非常に重要な一戦となります。本記事では血統面を中心に、オークスのレース傾向を整理していきます。

まず念頭に置いておきたいのは、3歳牝馬限定の芝2400m戦が特殊条件であるということ。2~3歳の牝馬路線は桜花賞まで芝1600mで強い馬を選定する番組構成にあり、芝1800m以上で行われる最初の牝馬限定重賞は3月後半に行われるフラワーCまでありません。桜花賞に出走するような世代上位の実力馬たちは中距離戦の経験自体も少なく、未知の距離への対応力が求められるローテーションとなっています。

また、そもそも牝馬限定戦ではオークスの2400mが最も長い距離の条件であるため、今後2400m以上のレースを使うことがない馬が多数派という点もオークスの特殊性を表しています。上記の理由からスタミナ面の裏付けが欲しいところで、前走上がり3F3位以内を記録するようなゴールまで脚色が鈍っていない馬、特に前走で前目につけられなかった馬の好走が目立つのがオークスの大きな特徴といえるでしょう。

過去10年で見ても、前走で上がり3F3位以内、かつ初角で出走頭数の中央値より後方にいた馬から7頭の勝ち馬が出ており、特に桜花賞組の取捨においては大きなヒントとなりそうです。

前走上がり3F順位別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<前走上がり3F順位別成績>
・3位以内【8-6-6-52/72】
勝率11.1%/連対率19.4%/複勝率27.8%/単回収率45%/複回収率110%
・4位以下【2-4-4-95/105】
勝率1.9%/連対率5.7%/複勝率9.5%/単回収率6%/複回収率37%
※過去10年

前走初角番手別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<前走初角番手別成績>
・1/2頭以内【3-7-3-86/99】
勝率3.0%%/連対率10.1%/複勝率13.1%/単回収率9%/複回収率37%
・1/2頭外【7-3-7-61/78】
勝率9.0%/連対率12.8%/複勝率21.8%/単回収率39%/複回収率104%
※過去10年

血統面では、Mill Reefの血を引く馬の活躍が目立ちます。

Mill Reefは英ダービーやキングジョージⅥ&QEDS、凱旋門賞など欧州芝長距離GⅠで無類の強さを発揮した名馬で、その子孫は芝中長距離戦に強く、特にしなやかで息の長い末脚を持ち味とする馬が多いことで知られています。

近年では6代以前に隠れるような古い血統になりましたが、2022年はMill Reefの6×7を持つスターズオンアースが1着、Mill Reefの5×5を持つスタニングローズが2着というMill Reefクロス馬のワンツー決着となっており、Mill Reefと同じNever Bend×Princequillo系のRivermanなどと合わせてMill Reefらしさが強化された馬にも注目したいところです。

血統別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<Mill Reef>
・該当馬【8-6-2-48/64】
勝率12.50%/連対率21.9%/複勝率25.0%/単回収率45%/複回収率65%
→クロスあり【1-1-0-2/4】
勝率25.0%/連対率50.0%/複勝率50.0%/単回収率162%/複回収率240%
※過去10年


有力馬の血統解説

・エンブロイダリー
3代母ビワハイジ(1995年阪神3歳牝馬S勝ち)に遡る名牝系に属し、母ロッテンマイヤーは2016年クイーンC3着馬。アドマイヤマーズ産駒の本馬はフレームが大きいため馬体重は重めですが、アドマイヤマーズ×ビワハイジ牝系らしい無駄肉の少ない馬体で、芝1600~2000mで瞬発力を活かす競馬が理想でしょう。

2400mはベストとは言えないものの、折り合い面や追走力を考慮すれば大幅なパフォーマンスダウンも考えづらいところ。C.ルメール騎手のエスコートがあれば、二冠の可能性も決して低くありません。

・アルマヴェローチェ
母ラクアミは2016年朝日杯FS2着馬モンドキャンノの半姉で、母自身も芝1400~1600mで3勝。ハービンジャー産駒の本馬も父の仔としては完成度が高く、ハービンジャー産駒としては初となる2歳GⅠ馬に輝いています。

そのため、過去のハービンジャー産駒のオークス好走馬との比較では牝系のスピード能力が高過ぎる感は否定できませんが、ベストは1800~2000mでの持続力勝負。3歳春GⅠでは桜花賞よりもオークス向きで、桜花賞で上がり3F最速を計時している点も距離適性を裏付ける材料のひとつとなっています。

・ビップデイジー
4代母キャサリーンパーに遡る名牝系に属し、母ローズベリルはダート1700~1800mで2勝。サトノダイヤモンド×キングカメハメハの牝馬には2024年新潟記念勝ち馬シンリョクカなど中距離馬が多く、前走馬体重440kgの本馬も中距離戦で末脚を活かす競馬がベストでしょう。母がMill Reef≒Rivermanの5×4を持つ点からも適性面ではメンバー中屈指の一頭ではないでしょうか。

2025年オークスの有力馬と評価,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》 
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

《関連記事》
【オークス】過去10年のレースデータ
【オークス】桜花賞馬エンブロイダリー、桜花賞1番人気エリカエクスプレスも消し! ハイブリッド式消去法
【オークス】別路線で「遅めの上がり2位以内」だった馬が狙い目! データで導く穴馬候補3頭