【オークス】2011年はエリンコートが高配の使者に 牝馬三冠2戦目の「記録」を振り返る
緒方きしん

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初勝利までに苦労したオークス馬も
今週はオークスが開催される。牝馬三冠を目指す牝馬たちが集結し、熱い戦いが繰り広げられる。桜花賞の1600mから一気に2400mまで距離を延ばして行われる一戦で、順当決着あり、波乱決着ありの難しいレースとなる。今回は、オークスの記録を振り返る。データの集計期間は特筆ない限り1986年~2024年としている。
リバティアイランドやデアリングタクトが新馬戦勝利からスタートしている一方で、アーモンドアイやジェンティルドンナはデビュー戦2着、アパパネやブエナビスタはデビュー戦3着と、新馬戦で勝ち切れずとも女王の座を射止めた牝馬も多い。集計期間のなかで、オークス馬が勝ち上がりまでにかかったレース数のランキングは以下の通り。
1位 4戦 エイシンサニー(1990年)
2位タイ 3戦 レディパステル(2001年)
2位タイ 3戦 エリンコート(2011年)
同集計期間の日本ダービーなら2008年ディープスカイの6戦目が最多。同馬と比べて、オークスは順調な勝ち上がりの馬が多い印象を受ける。ちなみにエイシンサニーはデビュー戦5着だが、デビュー戦の戦績が最も悪かったのはウメノファイバーの7着である。
今年は忘れな草賞を制したサヴォンリンナがデビュー戦7着から出走へと漕ぎ着けている。
8月デビューから毎月走り続けたエイシンサニー
エイシンサニーはデビュー4戦目で勝利をあげ、その後もコンスタントに使われ続けながら勝ち負けを繰り返した。8月2戦、9月2戦、10月1戦、11月2戦、12月2戦と走りまくり、年明けからも毎月1戦しながら力をつけていった。
1400m戦の報知杯4歳牝馬特別(現在のフィリーズレビュー)を勝利して3勝目をあげたのが通算12戦目。桜花賞でも4着と掲示板を確保すると、オークスでは5番人気に支持された。
1990年オークスは桜花賞馬アグネスフローラが1番人気、4戦2勝のダイイチルビーが2番人気というメンバー構成。他にもイクノディクタス、キョウエイタップといった後の活躍馬が出走していた。
レース序盤では、エイシンサニーは最後方から進めたが、徐々にポジションをあげ直線で一気にごぼう抜きを果たす。上がりタイム2位がハービンガーの36.4、3位がアグネスフローラ・ゾウゲブネメガミの36.7だったが、エイシンサニーの上がりタイムは35.9で最速。まさに衝撃の末脚だった。
引退後、オークス2着のアグネスフローラはダービー馬アグネスフライト、皐月賞馬アグネスタキオンを輩出する大偉業を成し遂げる。
一方のエイシンサニーも2003年愛知杯、関屋記念で2着のエイシンハリマオーを出した。ひ孫世代からは2011年兵庫チャンピオンシップを勝ったエーシンブランらが活躍している。
高配当をもたらしたエリンコート
勝ち上がりまで3戦を要したエリンコートは、デビュー7戦目で2勝目を挙げると、そこから3連勝でオークスを制した。単勝3720円(7番人気)は1986年以降のオークスでは、単勝における最高配当(史上最高は85年ノアノハコブネの6270円。28頭立ての21番人気)となっている。
オークス制覇後は掲示板に載ることなく引退となったが、マルセリーナ、ホエールキャプチャらを撃破した雨のオークスは今もなお記録にも記憶にも残っている。
ノヴェリストやエピファネイア、キタサンブラックらとの配合で牝馬を送り出しているエリンコートは、早くも孫世代もデビューしており、今年の3歳世代のカペルブリュッケはダート1400m戦で勝利を挙げている。
抜群の安定感を見せたレディパステル
もう一頭の3戦目勝ち上がりのオークス馬レディパステルは、初勝利がダート戦。芝2戦したあとにダートを使って勝ち上がったが、引退までの間にダートを走ったのはその一戦のみだった。
初勝利後も大崩れすることなく安定した走りを見せ、ミモザ賞1着、フローラS2着で、オークスは5番人気での勝利だった。引退までに紫苑S、中山牝馬S、府中牝馬Sを制し、21戦6勝、2着6回、3着5回と抜群の安定感を誇り、一度も掲示板外に敗れることがなかった。
引退後は母として2009年京都新聞杯3着のロードロックスター、2012年神戸新聞杯2着のロードアクレイムを輩出。孫世代からは2015年アーリントンC3着のマテンロウハピネスや2022年シンザン記念1着、同年NHKマイルC2着のマテンロウオリオンらが活躍している。
ワイド歴代最高配当は2万4940円
エリンコートが勝利した波乱の2011年オークスは、単勝だけでなく馬連4万2750円、馬単10万4460円、三連単54万8190円も史上最高配当。しかしワイドだと歴代5位に留まっている。ワイドの歴代高配当は以下の通り。
1位 2万4940円 ユーバーレーベン&ハギノピリナ(2021年)
2位 2万3330円 チューニー&シンコールビー(2003年)
3位 1万7390円 チアズグレイス&オリーブクラウン(2000年)
4位 1万4430円 アカイトリノムスメ&ハギノピリナ(2021年)
5位 9510円 エリンコート&ピュアブリーゼ(2011年)
ワイド万馬券は過去に4度のみ。2021年は16番人気ハギノピリナ(複勝配当2820円)が3着に食い込んだことで、1着ユーバーレーベンとのワイドが1位、2着アカイトリノムスメとのワイドが4位と両方のワイド配当がランクインしている。
母として大活躍 2003年オークス出走馬たち
2003年は、スティルインラブが三冠牝馬となった年でもある。オークスではアドマイヤグルーヴが単勝1.7倍、スティルインラブが単勝5.6倍。3番人気ピースオブワールドは10.1倍と完全なる二強だった。
しかしその圧倒的人気を誇ったアドマイヤグルーヴは7着に敗れ、2着13番人気チューニー、3着9番人気シンコールビーという波乱に。4着は7番人気ヤマカツリリー、5着は11番人気センターアンジェロと全体的に波乱の結果となった。
2003年オークスの出走馬は母として活躍した馬が多く、チューニーは母としてダートで活躍した名牝トロワボヌールを送り出した。さらには孫のゲッカコウが2016年フラワーCで2着となり、そのゲッカコウは今年の中山金杯2着のマイネルモーントを送り出している。
シンコールビーの仔はダートで強い産駒が多く、ダート2勝(芝1勝)のシンコープリンスやダート3勝のシンコームーン、ダート2勝のシンコーメグチャンらが活躍している。
6着ポップコーンジャズはラブリーデイを、7着アドマイヤグルーヴはドゥラメンテを、11着マイネヌーヴェルはマイネルグロンと、平地、障害競走問わずGⅠ馬を輩出している。
今年のオークス出走馬たちも素質馬が勢揃いしている。近い未来で母としても活躍する馬も多いはずだ。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。
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