【ヴィクトリアマイル】血統はアスコリピチェーノが抜群 スローペース傾向で先行馬の激走注意
坂上 明大

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傾向解説
古馬芝マイル女王決定戦のヴィクトリアマイル。先週のNHKマイルC、そして3週間後に行われる安田記念と同じ東京芝1600mを舞台に行われるGⅠ競走ですが、実は求められる適性は上記2レースと微妙に異なります。本記事では血統面を中心に、ヴィクトリアマイルのレース傾向を整理していきます。
まず紹介したいデータは前走初角番手別成績。ハイペースの差し決着になりやすいNHKマイルCとは異なり、先行馬有利の展開になりやすいのがヴィクトリアマイルの特徴です。これは、ヴィクトリアマイルの週からBコースでの開催となること、牝馬限定戦でスローペースになりやすいことなどが影響しており、前走初角5番手以内の先行馬から多数の穴馬が誕生しています。
昨年は過去10年のなかでも強い前傾ラップを刻んだため中団待機策のテンハッピーローズが穴を開けましたが、確固たる逃げ馬不在の今年は例年通り前目の穴馬に注意が必要です。

<前走初角5番手以内(過去10年)>
該当馬【4-3-7-58/72】
勝率5.6%/連対率9.7%/複勝率19.4%
単回収率61%/複回収率183%
血統面では、芝のマイル戦にしては欧州血統の活躍が目立つ点が大きな特徴。特にNureyev≒Sadler's Wells=Fairy Kingを持つ人気薄の好走馬は多く、波乱を演出しています。
<欧州血統持ちで激走した馬の例>
15年12番人気2着 ケイアイエレガント(父キングカメハメハがNureyevを内包)
15年18番人気3着 ミナレット(父スズカマンボがNureyevを内包)
17年11番人気2着 デンコウアンジュ(父メイショウサムソンがSadler's Wellsを内包)
19年11番人気3着 クロコスミア(母母母父Sadler's Wells)
21年10番人気2着 ランブリングアレー(母母母父Sadler's Wells)
24年14番人気1着 テンハッピーローズ(父エピファネイアがSadler's Wellsを内包)
日本では主に芝中長距離の非主流条件で強さを発揮する血統だけに、これもヴィクトリアマイルの特殊性のひとつと言えるのではないでしょうか。

<血統別成績(過去10年)>
Nureyev【3-5-3-52/63】
勝率4.8%/連対率12.7%/複勝率17.5%
単回収率23%/複回収率177%
Sadler's Wells【1-3-2-27/33】
勝率3.0%/連対率12.1%/複勝率18.2%
単回収率632%/複回収率167%
Fairy King【1-0-2-9/12】
勝率8.3%/連対率8.3%/複勝率25.0%
単回収率161%/複回収率90%
有力馬の血統を解説
・アスコリピチェーノ
母母リッスンは07年フィリーズマイル優勝馬で、母アスコルティの弟妹にはGⅠ好走馬タッチングスピーチやサトノルークスなどがいる活力のある一族。ダイワメジャー産駒の本馬も23年阪神JFを制すなど現役トップクラスのマイラーとして活躍しています。
DanzigとSadler's Wellsを併せ持つ点はメジャーエンブレムやレシステンシアと同様で、ダイワメジャー牝馬のマイラーとしては満点を与えられる好配合馬といえるでしょう。ヴィクトリアマイルの注目血統も押さえられており、素質も適性もメンバー中屈指の一頭です。
・ステレンボッシュ
3代母ウインドインハーヘアに遡る名牝系に属し、母ブルークランズは芝1800m以上で3勝を挙げた中距離馬。エピファネイア×ルーラーシップ×ダンスインザダークという芝中長距離血統でもあり、胴伸びの良い馬体からも芝2000m以上で末脚を生かしたい主流血統馬といえるでしょう。
剛柔のバランスが良い配合形で得手不得手の少ないタイプではありますが、1600m戦では展開の助けが欲しいところです。
・ボンドガール
母コーステッドは16年BCジュベナイルフィリーズターフの2着馬で、本馬の半兄にはダノンベルーガ(22年共同通信杯)がいる良血馬です。末脚にかける競馬で中距離戦にも対応してきましたが、ダイワメジャー×北米血脈の牝馬であり、まとまりの良い馬体からも高速馬場の1600m以下がベストではないでしょうか。
ただ、ダイワメジャー牝馬のマイラーとしては若干重厚さに欠け、心身ともにもう一段階成長が欲しい感も否めません。

《ライタープロフィール》
坂上 明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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