【ヴィクトリアマイル】合言葉は「前哨戦勝ち馬を疑え」 阪神牝馬S5着ボンドガール、6着ソーダズリングらが巻き返す
勝木淳

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2、3枠に急所あり
古馬牝馬の春はマイルが舞台。秋の中距離とは一転し、春はスピードの持続力を競う。カテゴリーが異なるため、顔ぶれが春と秋で大きく変わるのもこの路線の特徴。今年の登録馬で昨年のエリザベス女王杯出走歴があるのは、シンリョクカとラヴェルの2頭しかいない。
さらに昇級2、3戦のオープン実績が浅い馬たちも多く、混戦が予想される。昨年はテンハッピーローズが14番人気で勝ち、単勝20,860円と大波乱。今年も意外な結末を迎える予感がある。
ここからは過去10年分のデータを使用してヴィクトリアマイルを展望する。
まずは人気別成績から。1番人気は【2-2-2-4】勝率20.0%、複勝率60.0%とまずまずだが、2番人気【0-0-1-9】複勝率10.0%、3番人気【0-2-0-8】複勝率20.0%と上位人気同士の決着がほぼない。
4番人気【2-3-0-5】勝率20.0%、複勝率50.0%など8番人気まではチャンスあり。また10番人気以下も【1-3-2-76】勝率1.2%、複勝率7.3%と黙っていない。中穴も大穴も出現する。難解なGⅠだ。
年齢別成績では、4歳【3-5-4-60】勝率4.2%、複勝率16.7%、5歳【4-3-5-56】勝率5.9%、複勝率17.6%と基本は主力世代中心でいいが、6歳【2-2-1-23】勝率7.1%、複勝率17.9%と年上も割って入ってくる。
ただし、今年の登録はほぼ4、5歳で、6歳は除外対象のヒルノローザンヌのみ。4、5歳を比べると、数字上は若干だが5歳が上。注目馬は4歳が目立つが、決めつけられない。
東京芝1600mはシンプルなコースレイアウトであり、枠番のバイアスはそう感じないが、ヴィクトリアマイルは偏りがみられる。2枠【2-1-2-15】勝率10.0%、複勝率25.0%、3枠【5-0-1-14】勝率25.0%、複勝率30.0%に急所が存在する。
真ん中より外も悪くないので、一概にはいえないが、ロスのない立ち回りを可能にする2、3枠は折り合いをつけやすく、末脚を温存できる。実力差が少ない戦いとなれば、枠順のアドバンテージが結果を左右する。特に3枠は半数の5勝と目立つ。赤い帽子は評価割り増しだ。
阪神牝馬S1着は未勝利
金鯱賞で牡馬を破ったクイーンズウォークは桜花賞以来のマイル戦がカギ。東京マイルはクイーンC勝ちがあるが、このときは後方で流れに乗らず、直線一気を決めた。本質は中距離型であり、久々のマイルに対応できるか。昨年の桜花賞馬ステレンボッシュも同じく中距離中心の近況がどう出るか。
ならば、サウジで勝ったアスコリピチェーノ。京成杯AH完勝などマイル前後へのこだわりは心強い。
アスコリピチェーノの1351ターフスプリントといえば、ソングラインの4、5歳時と同じローテーション。4歳時はサウジで勝利し、ヴィクトリアマイル5着。5歳時はサウジ10着から次走勝利と逆相関。1351mとマイルではカテゴリーが異なり、それがソングラインの成績にあらわれた。アスコリピチェーノはソングラインを例に考えると、今年は凡走の可能性もある。
前哨戦では阪神牝馬S【4-3-5-57】勝率5.8%、複勝率17.4%が中心。阪神牝馬Sが1400mだった時代は【0-0-0-6】。マイルだと【4-3-5-51】勝率6.3%、複勝率19.0%。外回りのマイル戦に条件変更したのは大当たりで、つながりは深い。
マイルに条件変更された2016年以降の着順別成績をみる。気になるのは前走1着【0-1-1-7】複勝率22.2%と連勝がないこと。前走1着のサフィラは人気ほど信頼できない。
阪神牝馬Sはスローペースが多い。今年もスローで流れ、サフィラは2番手から抜け出した。ゆったりした流れを味方につけての勝利だった。本番もスローの年があるものの、やはりGⅠは緊迫感ある展開になりやすく、これがミスマッチを呼ぶ。
2着【1-1-2-5】勝率11.1%、複勝率44.4%と惜敗も悪くないが、5着【1-0-1-4】勝率16.7%、複勝率33.3%、6~9着【2-0-0-12】勝率、複勝率14.3%とスローで動けなかった馬たちが巻き返す。差して5着ボンドガールや6着ソーダズリング、8着ドゥアイズなど穴っぽい馬たちも狙える。
前走中山牝馬Sは【1-2-0-10】勝率7.7%、複勝率23.1%も1着【0-1-0-4】複勝率20.0%、6~9着【1-1-0-1】勝率33.3%、複勝率66.7%とこちらも負けた馬がいい。前哨戦を勝った馬は疑え。これがヴィクトリアマイルの基本ラインだ。
ただし、前哨戦ではない前走大阪杯(GⅡ時代含む)は4着以内【1-0-2-1】、6着以下【0-0-0-4】と好走馬を評価。13着ステレンボッシュは負けすぎか。ちなみに前走金鯱賞は【0-0-0-2】だが、これは2頭とも前走6着以下。勝ったクイーンズウォークは例外だろう。
《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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