【マイラーズC回顧】進化途上の7歳ロングランが重賞連勝 マイル初出走Vで安田記念主役に名乗り
勝木淳

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26戦目にしてマイル初出走だったロングラン
安田記念へのステップレース、マイラーズCはロングランが重賞連勝を決め、2着ジュンブロッサム、3着セオで決着した。
出走頭数10頭。重賞勝ち馬はロングラン、ジュンブロッサム、グラティアス、ビーアストニッシドと4頭いたものの、グラティアスとビーアストニッシドは3、4年前のものであり、近況好調の実績馬となると、ロングラン、ジュンブロッサムぐらいだった。
その2頭で決まったので、順当といえばそれまでだが、勝ったロングランはマイル、それも高速決着のイメージがなく、5番人気。ちょっとおいしいかった。
マイラーズCの過去10年データでは、前走から距離短縮4着以内【4-0-1-4】、距離短縮で前走上がり3位以内【5-0-1-4】。どちらにも当てはまったのはロングランのみで、データ予想ならど真ん中だった。
だが、前走小倉大賞典で重賞初制覇を飾り、小回りの1800、2000mかつ時計を要する舞台が得意ゾーン。高速決着だった2走前のディセンバーSは8着で時計が速いと不安は大きいが、3走前のカシオペアSは3着となくはない。それでもキャリア25戦でマイル戦初出走。7歳にして初めてのマイル戦となると、気が引けるのも無理はない。
一枚上だった決め手
ビーアストニッシドの先手は少頭数も助け、スローペースに。前後半800m46.6-45.1のレース展開は、マイル戦初出走のロングランも乗りやすかった。とはいえ、この日の京都芝クッション値は11.2と高く、絶好の状態。後半800mも11.2-11.6-11.1-11.2と相当速く、レース上がり33.9を33.3で差し切ったのは驚いた。明らかに7歳にして進化の途上にある。
イメージを次々と塗りかえるのは本格化のサイン。1.31.7でマイルGⅡ勝利なら、安田記念有力候補の資格は十分満たした。もちろん、対戦相手がさほど難しくなかったものの、地力の差を見せつける内容だった。一団で進み、最後は完全に決め手勝負。位置取りの優位性か末脚の破壊力がないと、差はつかない。差し切ったロングランの末脚は一枚ちがった。
ただ、安田記念の舞台、東京芝1600mはスタートから勝負所まで一定の速いラップを刻み、終盤にもう少しギアをあげないと乗りきれない。スローに落ちることは少なく、究極の持続力勝負になりやすい。京都の高速決着に対応したこととイコールにはならないだろう。
もう少し序盤が速ければ文句なしだが、ロングランにとって乗り越える壁はもうひとつある。高速決着の上、前半から速いラップに対応できるかどうか。どこまで進化しているのか。安田記念でのポイントはここだろう。
理想的な臨戦過程のジュンブロッサム
2着ジュンブロッサムは昨秋東京で重賞V。続くマイルCS10着と京都の緩急が入るマイル戦は流れに乗せにくいのではと思われたが、さすがにこの頭数の決め手比べなら崩れない。
ロングランとの差は斤量1キロ差と、4コーナーで外から進出して直線で外に流れ気味だった分だろう。GⅠ以来の東京新聞杯を叩き、状態は順当に上向き。安田記念へ向けた前哨戦としては申し分なしで、ソウルラッシュを破った富士Sの状態に戻ってくるだろう。
3着セオはスローの2番手と位置取りの優位性をいかしきった。あえて早めに先頭に立ち、後ろを突き放しにかかり、ラスト11.1-11.2なら内容は濃い。平坦ベストで今回はこれ以上ない舞台であり、レース展開も理想に近かった。
最後に1、2着馬につかまったのは地力の差であり、現状だと3着が精一杯。これ以上を望むのは難しいが、展開を味方につけた好走はこの先もみられそう。うまく馬券的に付き合いたいところだ。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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