【マイラーズC】本命候補は指数で能力値、最高値ともに1位のジュンブロッサム 穴馬はレイベリング
山崎エリカ

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極端なスローペースで上がりの速い決着が濃厚
京都開幕週2日目に行われる本レースは、パンパンの良馬場なら超高速馬場で行われる。実際、良馬場だった2018年にはコースレコードが記録された。昨年は稍重で行われ超高速馬場ではなかったが、この開催は年間を通してもっとも速い時計が出る傾向だ。
京都開催で行われた過去10年では、逃げ~中団で7勝、2着7回、3着8回。ある程度、前の位置が取れない馬は苦戦している。しかし、少頭数だった年は極端なスローペースからの上がり勝負となり、決め手のある末脚型も好走している。
今年は初めてブリンカーを着用するビーアストニッシドがスプリングS勝利時のように逃げる可能性もあるが、テンの脚が速いタイプではないため、さすがにハイペースにはならないだろう。前の位置が取れる馬と決め手のある末脚型を中心に予想したい。
能力値1~5位の紹介

【能力値1位 ジュンブロッサム】
昨秋の富士S勝ちの実績馬。当時は16番枠から軽く促して中団やや後方外目を追走。道中はコントロールしながら位置をキープし、3角に入った。
3~4角で息を入れると、パラレルヴィジョンの後ろから軽く仕掛けて進出した。直線序盤で同馬に並びかけて中団まで上がり、ラスト2Fで一気に伸びて2列目。ラスト1Fで内から伸びたソウルラッシュを競り落として1馬身差で完勝した。
レースは超高速馬場で前後半4F46秒1-46秒0の平均ペース。中盤で緩みが生じており、差し有利とは言えない状況で末脚一閃というレースぶりだった。叩き台ではあったが強豪のソウルラッシュを2着に下している。今回のメンバーなら能力値も最高値もNO.1の存在だ。
前走の東京新聞杯は8番枠からやや出遅れ、促されてもあまり進まずに中団中目から外に誘導。3~4角で前が大きくペースを落とさないなかで、4頭分外を回るロスが生じて10着に敗れた。
前走も前後半4F46秒1-46秒5の平均ペースだったが、富士Sのような超高速馬場ではないなかで、本馬としてはある程度位置を取りに行ったこと、また3~4角でロスが生じて脚が溜められなかったことが主な敗因だ。
開幕週で超高速馬場が予想される今回は、上手く脚を溜めることができれば前有利の展開でも上位争いに加わると見ている。ドウデュースでお馴染み、直線一気に定評のある武豊騎手に乗り替わるのも好材料だろう。今回の本命候補だ。
【能力値2位 セオ】
昨年の都大路Sの勝ち馬。ここでは6番枠からハナを主張したが、内からアウスヴァールが絡んでくると、同馬を行かせて2番手の外へ。道中はかなりのスローペースだったが、コントロールしながら2番手の外を維持した。
3~4角では持ったままアウスヴァールにプレッシャーをかけ、4角で同馬に並びかけた。直線序盤で追われるとすっと伸びて2馬身半差。ラスト1Fでやや甘くなってアルナシームに迫られたが、余裕を持って1馬身1/4差で勝利した。
当時は超高速馬場で前後半4F47秒6-45秒0のかなりのスローペース。前有利の馬場と展開を利しての勝利だったが、2着のアルナシームはその後、中京記念、中山金杯を優勝したほどの実力馬だ。
本馬は今年の京都金杯(中京芝1600m)で4着同着するなどマイル実績もあり、近走成績も安定。前走の六甲Sでも序盤の接触で鐙(あぶみ)が外れながらも、緩みない流れを2番手から進み、最後の直線序盤で先頭に立って4着に粘る好内容だった。
京都開幕週だけに先行できる本馬は過剰人気になりそうだが、現時点では対抗評価の予定だ。
【能力値3位 ニホンピロキーフ】
稍重で行われた昨年のマイラーズCの3着馬。同レースは9番枠から五分のスタートを切り、軽く促して好位の後ろを追走。道中で逃げ馬が飛ばしたため、無理なく控えて中団中目で3角に入った。
3~4角ではソウルラッシュのひとつ内を進んでいたが、4角で同馬の進出に抵抗して仕掛け、何とか外に誘導して直線へ。直線序盤で追われたが同馬に前に出られて2番手。ラスト1Fで中目を捌いたセリフォスにもかわされたが、同馬から半馬身差の3着に善戦した。
勝ち馬ソウルラッシュには2馬身1/4差と離されてしまったが、自己最高指数を記録。最後の直線で上位2頭には末脚で後れをとったが、超高速馬場ではない状況で、前後半4F45秒6-46秒9とややハイペースになり、速い上がりが求められなかったこともあり3着に好走した。
4角で包まれる場面もあったが、何とか外に出し切ったことで、ソウルラッシュを追いかける展開にならずに済んだのも良かった。
その後も芝1800m以下では安定した走りを見せているが、強調材料がない点はネック。昨年よりも相手は楽になっているが、超高速馬場で速い上がりが求められると、掲示板止まりになる可能性が高い。
【能力値4位タイ グラティアス】
2023年10月のポートアイランドSでは、エアファンディタに先着し、ドーブネ(24年の中山記念2着)に3/4馬身差まで迫った実績がある。
そのレースでは、5番枠からまずまずのスタートを切り、押して外のワールドリバイバルと先行争い。最終的には同馬を行かせ、内のサブライムアンセムが折り合いを欠いていたため、控えて好位の外を追走。そこからドーブネをマークして進めた。
3~4角で押し上げて2列目の外から直線へ。直線序盤でドーブネの外に誘導してしぶとく伸び、先頭の同馬と3/4馬身差。ラスト1Fでもしぶとく食らいついたが、同馬との差は詰まらず3/4馬身差で敗れた。
当時は高速馬場で前後半4F48秒1-45秒4とかなりのスローペース。レース上がり3F33秒6という決着になったなかで、積極的に位置を取っての2着だった。レース最速10秒9のラスト2F地点でドーブネとの差を詰めながらも、ラスト1Fで甘くなってしまった。本馬の強みは先行して一瞬ではあるが、鋭い脚が使えることである。
その後は前の位置が取れずにスランプだった時期もあったが、近走は良かった頃の先行力を取り戻しつつある。前走の六甲Sでも緩みない流れで3番手からセオをマークする形で進めて、小差の6着に粘った。
ポートアイランドS時のように末脚勝負なら、セオよりも速い上がりが使える強みで逆転があっても不思議はない。
【能力値4位タイ ロングラン】
前走の小倉大賞典で初重賞制覇を達成した。前走は2番枠からやや出遅れ、軽く促して中団中目を追走していたが、最終的には下がって後方2列目からの追走。道中も後方最内で進めていたが、前が一気にペースを引き上げたときに、追っつけて勢いに乗せ、3角に入った。
3~4角で内から外に誘導し、4角でそのまま中団に押し上げて直線へ。直線序盤で伸びて3列目付近に上がり、ラスト1Fで内のショウナンアデイブと一緒に伸び、最後にクビだけ前に出て勝利した。
前走は時計の掛かる馬場。5F目でレース最速の11秒1が計測されているように、先頭のセルバーグが向正面で一気に仕掛けてペースを上げ、先行勢がそれを追いかけたため前崩れの展開となった。つまり、馬場と展開に恵まれての勝利だった。
本馬は4走前の中京記念で4着となり、今回出走のセオやニホンピロキーフに先着している。その時も時計の掛かる馬場で、逃げるテーオーシリウスにセルバーグが競りかけていく形。前後半4F45秒8-49秒7の極端なハイペースだった。
上位3頭が3~4角で内目を立ち回っていたのに対して、本馬は3角、4角ともに大外を回っており、かなり雑な競馬だったが先行馬が総崩れの展開に恵まれての4着だった。
本馬はテンの脚が遅く、後方からの追走が定番。超高速馬場でややスローペースだった2走前のディセンバーSでは8着と崩れていること、前走で自己最高指数タイを記録した後の調整が難しい一戦であることを考えると、評価が下がる。
穴馬は前走でスピードを見せたレイベリング
2022年の朝日杯FSで3着に入った素質馬。翌年の夏に札幌の芝1800mの1勝クラスと芝1500mの2勝クラスを連勝し、昨年3月にオープン入りを果たした。
その後はややスランプだったが、約4か月ぶりのレースだった昨秋の信越Sでは馬体重12kg増と成長した姿を見せて勝利した。
3走前の信越Sは6番枠から押してやや掛かりながらの先行策。道中はかなりペースが速かったため、前のスペースを詰めずに折り合いに専念して進めた。
3~4角で前のスペースを詰めて先頭列の直後まで上がり、直線序盤で前2頭の外に誘導して追われると、しぶとく伸びて先頭に並びかけた。ラスト1Fでそのまま抜け出し、1馬身3/4差で完勝した。
この時は時計の掛かる馬場で前後半3F33秒4-35秒3とかなりのハイペース。2~4着には差し、追込馬が台頭する先行馬に厳しい流れだったが、本馬は先行馬で唯一掲示板入りを果たし、自己最高指数で勝利した。
2走前のマイルCSは外差し天国の馬場を、やや掛かりながらややハイペースの2番手で進め、最後の直線で馬場の悪化した内を突く形で16着に大敗した。ただレースでの不利ばかりではなく、休養明けで自己最高指数を記録した疲れもあっただろう。
前走のニューイヤーSでは思い切って逃げの手に出たが、標準馬場で5F57秒4とペースが速くラスト1Fで失速。しかし、スピードは見せられており、京都開幕週の今回に繋がる可能性は十分ある。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジュンブロッサムの前走指数「-14」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.4秒速い
《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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