【皐月賞】ペースアップで逆襲期待、ミュージアムマイルが本命 同じく弥生賞組ヴィンセンシオが穴馬候補

山崎エリカ

2025年皐月賞のPP指数,ⒸSPAIA

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中距離GⅠではもっともペースが上がりやすい舞台

20日、中山競馬場で行われる牡馬クラシック第1戦・皐月賞。過去10年の皐月賞を振り返ってみるとすべて平均ペース以上となっており、なかでも2018年や2023年、そして昨年もかなりのハイペースが発生した。

その要因としては、下級条件は逃げ先行策で勝ち上がる馬が多く、世代限定GⅠはそうした馬たちが集う一戦であることと、舞台となる中山芝2000mは2角~向正面が下り坂になっており、前半のペースが遅ければ向正面でマクりが打てる構造になっている点が考えられる。

展開上は差し馬に有利な傾向だが、過去10年では2角2~5番手以内の先行馬が【5-6-4-33】と活躍している。ただし、それらはその後の活躍馬も多く、実力馬が正攻法で勝利してきた結果とも言える。


能力値1~5位の紹介

2025年皐月賞のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 クロワデュノール】
これまで3戦3勝。昨年暮れの大一番・ホープフルSを今回の出走馬中No.1の指数で勝利し、現3歳世代の主役となった。

その前走では6番枠からトップスタートを決めると、外に誘導しながら好位に控え、外に出し切って中団やや前方を追走する。

道中はかなりのスローでやや掛かっていたが、向正面でファウストラーゼンがマクったところで、それを追い駆けるように好位の外を取って3角に入った。

3~4角では逃げ馬がマクった馬に抵抗する形でペースが上がり、前のスペースが広がっていったが、じわっと進出して4角で軽く押していくと、3番手で直線へ。序盤ですっと伸びて先頭列に上がり、ラスト1Fで抜け出して2馬身差で完勝した。

前走は標準馬場で前後半5F61秒4-59秒1のスローペース。ゲートをポンと飛び出したことで控えるのに苦労する場面もあったが、マクった馬の後を追う形で、ペースが上がる3角までに好位が取れたのが好走要因のひとつだ。

しかし、ホープフルS組は2着馬ジョバンニや3着馬ファウストラーゼン、13着馬ピコチャンブラックも皐月賞トライアルを勝利しているように、レベルの高い一戦だった。

また、11着だったマスカレードボールも共同通信杯を勝ち、2走前の東京スポーツ杯2歳Sで破ったサトノシャイニングもきさらぎ賞を制している。本馬に敗れた馬たちがこれほどまでに直近の重賞を勝利しているとなると、今回断然の1番人気に支持されるのは当然である。

しかも、未だに本馬がホープフルSを勝った時の指数を上回る馬は誕生していない。2走前の東京スポーツ杯2歳Sが馬体重24kg増。これを前走で絞り切ったことで、調整が難しくなりそうな点が不安ではあるが、能力の高さから評価せざるを得ない。

2019年のサートゥルナーリアのように連勝を伸ばす可能性もあるが、2017年のレイデオロのように能力を出し切れない危うさもあり、対抗評価までとする。

【能力値2位 サトノシャイニング】
きさらぎ賞の勝ち馬。その前走では大外10番枠からまずまずのスタートを切ったが、内の3頭も速かったためコントロールしながら徐々に位置を下げ、前に壁を作る形で中団の外を追走した。

道中も前が飛ばし、さらに位置を下げて中団やや後方で3角へ。3~4角では外々を通り、4角で軽く仕掛けながら3列目で直線を迎えると、序盤で追われて先頭列まで上がり、ラスト1Fでしぶとく抜け出して3馬身差で完勝した。

ただし、前走はタフな馬場で前後半5F46秒1-48秒3というかなりのハイペース。前崩れの展開に恵まれる形での勝利だった。

2走前の東京スポーツ杯2歳Sでも酷く掛かってはいたが、かなりのスローで前有利の展開に恵まれたこともあり、クロワデュノールとは3/4差の2着。前走は前に壁を作って差す形で前進したが、皐月賞に向けて余力を残せなかったという点で不安が残る。

【能力値3位 ジョバンニ】
ホープフルSの2着馬。その2走前は1番枠からやや出遅れていったん後方付近に下がったが、内のスペースを拾って中団の最内を追走。道中もかなりのスローペースを最内で我慢させていたが、向正面でファウストラーゼンが動いたことでペースアップした。

3~4角では追っつけて最短距離を通り、4角で前のショウナンマクベスが外を選択したことで、ここでも内のスペースを拾って押し上げて3列目で直線へ。序盤で外に誘導して2列目付近に上がり、ラスト1Fでじわじわ伸びて2着に浮上した。

ホープフルSは標準馬場で前後半5F61秒4-59秒1のスローペース。3~4角でペースが上がっていく展開を、ロスなく立ち回れたことが好走要因のひとつだ。それでも長くいい脚は使っており、豊富なスタミナを感じさせる内容だった。

本馬は野路菊S、京都2歳S、ホープフルSと3戦連続2着だったが、休養明けの前走、若葉Sでようやく2勝目を挙げる。

その前走は大外9番枠から五分のスタートを切り、じわっと進出して好位の外を追走。道中も3列目の外でコントロールしながら進めた。

3~4角では徐々に前との差を詰めながら2頭分外を通し、4角で追っつけて半馬身差で直線へ。序盤でしぶとく伸びて、先頭のローランドバローズに並びかける。ラスト1Fでしぶとく同馬を捻じ伏せ、クビ差で勝利した。

前走は標準馬場で前後半5F60秒3-58秒7のスローペース。スタートを決めて好位が取れたことで、前有利の展開に恵まれた勝利だった。

本馬はゲートが不安定で、後半もキレる脚が使えないという弱点がある。ただし、皐月賞はペースが上がりやすく、極端に上がりの速い決着にならない点は加点材料だろう。

休養明けの前走は2走前よりも指数を下げていることから、叩いた今回前進するパターンも視野に入れたい。

【能力値4位 ミュージアムマイル】
昨年12月、京都芝1600mで行われた朝日杯FSで2着と好走。同レースでは4番枠から出遅れ、後方2番手からの追走となったが、内目のスペースを拾って一気に押し上げ、3角は好位の最内につける。

4角は2列目内のスペースを拾って直線で外に誘導。序盤で3番手から2番手に上がったが、勝ち馬アドマイヤズームには突き離され、ラスト1Fで食らいつくも2馬身半差で完敗した。

朝日杯FSは時計の掛かる馬場だったが、前後半4F48秒0-46秒1とマイル戦としてはペースが遅く、馬群が凝縮して横に広がっていったことで内のスペースが空いた。

本馬は内の空いたスペースから位置取りを挽回できたことが好走に繋がった面もあるが、出遅れを一気に挽回しても最後までバテなかったのはスタミナがあればこそ。後半ラスト2Fで勝ち馬に離されたのはトップスピードの差だろう。

続く弥生賞は4着敗退。その前走は11番枠から五分のスタートを切り、コントロールして中団の外を追走。向正面でも中団中目で我慢させて進め、ファウストラーゼンが一気にマクると、そこから置かれないように促してはいるがまだ仕掛けていない。

3角手前で外からアロヒアリイが上がってくると、そこで仕掛けて4角では4頭分外から2列目付近まで押し上げ直線へ。ただ直線では伸び切れず、ラスト1Fで甘くなり、最後はアロヒアリイにも差されて4着だった。

本馬はキレる脚は使えないが、スタミナを活かしてこそのタイプ。前走はファウストラーゼンよりもワンテンポ速くマクるか、朝日杯FS時のようにペースが上がった3~4角で最内を通せていればチャンスがあったが、結果的に仕掛けが遅くなり、3~4角で外を回るロスが応えた。

しかし、休養明けの前哨戦で無理をさせなかったことは、本番に向けては好材料だ。また、今回はJ.モレイラ騎手への乗り替わりもプラス。同騎手は強引に捲ることはないが、一段階ずつギアを上げて4角では良い位置にいることが多い。

そして何といっても前走よりグンとペースが上がってきそうな点は好ましく、ここで本命に推す。

【能力値5位タイ エリキング】
ここまで3戦3勝であることと、ジョバンニを2着に下した実績があるのはクロワデュノールと同じ。

前走の京都2歳Sでは大外8番枠から五分のスタートを切り、じわっと進出して好位の外まで上がったが、最終的には中団の外を追走。3角の上りで外から徐々に押し上げ、2列目の外で3角に入った。

3~4角も2列目外で進めていたが、徐々に手応えが怪しくなり、4角では激しく追われたが、動き切れずに3列目に下がって直線へ。

しかし、直線序盤で激しく追われると盛り返して2列目に上がり、ラスト1Fで食らいつくジョバンニを一気に突き放して1馬身1/4差で完勝した。

前走は指数という観点ではこれまでで一番良かったが、ペースアップした4角では外からの追走にかなり苦労していた。

レース後、鞍上の川田将雅騎手は「4角でなかなか動きが出てこなかったので、無理をして動かすことを教えながら行った」とコメント。また、今週の共同会見では「中山は良い舞台というわけではないと思う」ともコメントしている。

要約すると、まだまだ完成途上でコーナーでは自分から動くことができないので、中山のような小回りで、皐月賞のように流れが速くなるレースは向かないということだろう。

ただ、前走は前後半5F61秒9-59秒0というかなりのスローペース。ラスト1Fで食らいつくジョバンニとの差を一気に広げたように、スピードが乗ってからの末脚は確かで、素質は高い馬だ。

今回は骨折休養明けになるので、初戦から無理をさせない可能性もあるが、警戒はしておきたい。

【能力値5位タイ ファウストラーゼン】
弥生賞の勝ち馬。前走では8番枠から五分のスタートを切ったが、内にささって接触して下がり、後方からの追走となった。

2角の下り坂で後方2列目外からすっと加速すると、一気にマクって先頭のヴィンセンシオをかわし、内を取り切って3角に入る。

3~4角では最内を通し切り、4角で再び外からヴィンセンシオが上がって来ると、鞭を入れて抵抗。直線も序盤で仕掛けるヴィンセンシオに抵抗しながら3番手以下をやや離し、ラスト1Fもしぶとく踏ん張ると、最後はクビ差で振り切った。

弥生賞は時計の掛かる馬場で前後半5F60秒9-60秒4の平均ペース。2角の下り坂でペースが落ちたところで、スピードに乗せて向正面でマクり切るという完璧なレースだった。

本馬は2走前のホープフルSでもマクって3着に善戦しているようにスタミナはあるが、ゲートが悪くここ2戦は内にささっている。接触するとどうしてもテンに置かれてしまうので、そこに課題を感じる。

さらに今回は本馬以外にもピコチャンブラックやマジックサンズなど、早めに仕掛けたい馬も多い組み合わせだ。マクリがハマる展開になっても、本馬より前の位置から動けるピコチャンブラックが有利になるだろう。ここは評価を下げたい。


穴馬候補は弥生賞2着馬ヴィンセンシオ

ヴィンセンシオはファウストラーゼンが勝った弥生賞の2着馬。その前走では3番枠からまずまずのスタートを切り、促して内の馬と競り合ったが、1角で内に切って主導権を握った。

2角からペースを落とすと、向正面ではファウストラーゼンに捲られたが、そこで抵抗することはせず、逆に同馬を目標にして3角に入る。

3~4角では最短距離を通し、4角で外からファウストラーゼンに並びかけて直線へ。序盤で仕掛けるも同馬に抵抗され、3/4差ほど前に出られてしまう。それでもラスト1Fも食らいついてクビ差まで迫った。

本馬は2走前の葉牡丹賞で3頭による大接戦をハナ差制し、1分58秒8のレコード勝ち。前走ではその疲れも懸念されたが、良い意味で期待を裏切り、大きな成長を感じさせた。

デビューからレースを使われるごとにゲートの甘さも改善され、二の脚が速くなっている点も好感。前走では前半3F35秒9で楽に主導権を握っている。操縦性の高さと中山芝2000m適性の高さを生かし、上位争いを期待したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)クロワデュノールの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い

《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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