【皐月賞】「中山不向き」「勝負付け済んだ」決めつけるのは早計 GⅠ級の素質馬マスカレードボールが本命
京都大学競馬研究会

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能力が適性を凌駕する第一冠
4月20日(日)に皐月賞(GⅠ)が行われる。ここまで無敗の2歳中距離王者クロワデュノールをはじめ、例年に違わず世代限定重賞を勝利してきた多くの実力馬が集結。難解な一戦となった。
以下では、本レースが行われる中山芝2000mのコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。
まずは中山芝2000mのコース形態をみる。正面スタンド前の右端からスタートし、初角までの距離は約400m。スタート直後に急坂があり、1~2コーナー中間まで上り坂となっている。
そこから内回りコースを使用し、バックストレッチ途中までは下り坂。3~4コーナーは平坦で、これを回り切ると中央主場4場の中で最短となる310mの最終直線。ゴール前に高低差2.4mの急坂がある。これが今回のコースレイアウトだ。
まず注目すべきは、初角までの距離が約400mとそれなりに長い点と、スタート直後に急坂がある点だ。初角までの距離が長いコースは通常、序盤の争いが激化しやすいが、中山芝2000mは坂の影響で最初のダッシュが付きにくい。
また本レースは世代限定戦らしく、スローペースからの瞬発力戦を勝利してきた馬が多く集まる。昨年のメイショウタバルのようにテンの速さが突出した逃げ馬がいない限り、先行馬が揃ってもコース形態としては序盤の先手争いが激しくなりにくい。
ペースが上がるのは3コーナーに入ってからで、序盤~中盤で脚を溜めた先行勢が一気に加速していく。コースとしては後方勢が直線に入るまでに先行勢とのポジション差を埋めにくい。しかし、本レースに限れば中盤までのペースの緩さから3コーナー時点で馬群が凝集することが多く、先行勢と後方勢にそこまでポジション差がない。したがって位置取りの有利不利はあまりない。
特筆すべきは、ゴールまでラスト4~5Fのロングスパート戦になりやすい点。一瞬のキレ味よりも持続した末脚が求められ、純粋な地力勝負になるということだ。
位置取り以上にコーナーでの加速を含め持続する末脚、ロングスパート戦で最後の急坂をものともせず伸び続けるタフさという、ポテンシャルの高さとレースセンスが要求される。
中山で長く脚を使うと、地力のない馬は最後の急坂で一杯になり止まってしまう。とにかく適性以上に各馬の現時点での絶対的な能力が試される。それが皐月賞の特徴だ。

<皐月賞 上がり3F順位別成績>
5位以内【9-8-7-31】
勝率16.4%、連対率30.9%、複勝率43.6%、単勝回収率172%、複勝回収率144%
※過去10年
この傾向は数字にも表れている。皐月賞における上がり3F5位以内馬の成績は上記に示した通り優秀だ。馬券内30頭中24頭をメンバー上位の上がりを使った馬が占めており、速い上がりを使えない先行馬の残り目は少ない。急激にメンバーレベルが上がる中でも、最上位クラスの上がりを出すポテンシャルが要求される。
例年であれば「ダービーではなく中山の皐月賞なら」と期待されて人気するような、高い地力が見込めない先行馬は本来嫌いたいところ。ただし、今年はCコース替わりでの施行となるため、例年より先行馬の残り目には注意したい。
まず各馬の現時点での能力の見極めに主眼をおいて印を打っていく。
各馬の純粋な地力が試される展開
続いて、今回想定される展開から恵まれる馬を考える。
メンバー構成は前走通過順位に3番手以内のある先行馬が11頭と、出走馬全18頭に対して多い。ただ、その多くが1000m通過61~63秒のスローペースを先行してきた馬で、自分から積極的に飛ばしていくような馬は少ない。
今回はジーティーアダマン、ヴィンセンシオの2頭のテンの速さが抜けており、枠から考えればジーティーアダマンが逃げる形になると考える。前走の1000m通過59.5秒での単騎逃げを考えれば、メンバーが格段に上がり序盤で他馬に競りかけられる今回、間違いなく1000m通過60秒を切るペースで流れるとみる。
ペースが緩む区間が少ないまま、後半は4~5Fのロングスパート戦にへ。向正面からファウストラーゼンがマクっていくことを考えても、この点は間違いないだろう。
この展開で最も恵まれるのは、やはりコーナーでの加速力を含めた持続する末脚、ロングスパート戦で急坂をものともせず伸び続けるタフさを持つ馬だ。
ただし、ハイペースでもコース形態とCコース替わりの馬場から、地力次第で先行馬の残り目は十分に起こり得る。前後の有利不利は小さく、純粋な地力勝負になると考える。現時点での能力を重視し、想定されるオッズ妙味を考慮して印を打っていく。
世界最強馬、三冠馬に匹敵する素質
◎マスカレードボール
前走の共同通信杯は好スタートから2、3番手で先行しスムーズに抜け出して快勝した。直線ではソラを使いながらラスト5F12.0-11.8-11.5-11.5-11.2の加速ラップかつレースレコードタイで勝利する衝撃の内容。最後は余力十分で明らかに真剣に走っておらず、まだまだ上積みに期待できる走りだった。
3走前のアイビーSは前半1000m通過59.4秒のハイペースを3番手で追走。伸びない内を上がり3F33.4秒という一頭だけモノが違う末脚を使って勝利した。
東京芝1800mの2歳戦において「勝ち時計1:46.2以内」かつ「上がり3F33.4秒以内」で勝利した馬は世界最強馬イクイノックス、三冠馬コントレイルと本馬の3頭のみ。間違いなくGⅠ級のポテンシャルを持っている。また、この時計と上がり評価の延長線上にはクロワデュノール(東スポ杯2歳S/1:46.7、上がり33.3秒)もいる。
問題は大敗を喫した2走前のホープフルS。ここは明らかに本馬の能力が発揮されなかった敗戦だった。
陣営から「物足りない」と言われた状態の中、大外枠から1000m通過61.4秒のスローペースを14番手で追走。ハイペースを難なく先行したアイビーSとは打って変わり、まずまずのスタートを決めるも全く進まず最後方からとなった。
そこからは悲惨で、馬場に脚を取られた感じでコーナーの進みが悪く、4コーナー出口では内から寄られて減速。上がり3F7位で1.2秒差11着に敗れた。スムーズに先行したアイビーSや共同通信杯とは異質な走りだった。
前提として、中山よりも東京の方が合っているのは間違いない。これは鞍上の横山武史騎手のコメントにもある通りだ。ソラを使った前走のように、気性面から最大限の能力を発揮できない可能性もある。
ただ、ポテンシャルで言えば2歳時点でクロワデュノールに引けを取らないほどで、あのホープフルSだけで勝負付けが済んだと決めつけるのは余りにも早計だ。あの時とは時期も異なれば、状態も馬場も異なる。
「中山不向き」「勝負付けは済んだ」とされ、想定オッズでクロワデュノールと10倍近く乖離しているのは違和感しかない。この数か月の成長で中山に対応し、そのポテンシャルを発揮する可能性に賭けるには十分すぎるオッズと見て本命を打つ。
◯クロワデュノール
前走のホープフルSは言わずもがな完勝。スローペースからのロングスパート戦で自らポジションを上げていき、2着に0.3秒差を付けた。加えて、そこで負かした馬たちが次走以降、皐月賞に向けたレースを軒並み勝利する超ハイレベル戦でもあった。
2走前の東スポ杯は馬体重+24kgで、調教からも明らかに超甘仕上げのなかスローペースからの瞬発力戦を上がり最速33.3秒の脚を使い完勝。新馬戦は数々の名馬を輩出してきた東京芝1800m新馬戦における史上最速のタイムで勝利。デビューから3戦、能力の底を全く見せていない。
折り合いの不安も無く、好スタートからスッと好位まで取り付けることができるのも強み。弱点も少なく、能力を発揮すればここは順当に好走してくる。
▲キングスコール
前走のスプリングSはスタートで出遅れて後方からの競馬。向正面で強引にマクっていく厳しい競馬の中、粘って0.3秒差3着。8か月の休み明けで絶好の状態ではなかったことも考えれば着順、着差以上に評価できる内容だった。
札幌芝1800mの新馬戦では史上最速の勝ち時計と後半5Fラップを記録し、能力の高さを示した。今回のメンバーでも上位のポテンシャルを持っており、高いオッズ妙味も見込まれる。
△サトノシャイニング
近2走の内容から、この世代で能力は上位。揉まれた経験がないため外枠も歓迎。
×ミュージアムマイル
3走前の1勝クラスが内容、時計ともに非常に優秀。なにより、強すぎる鞍上を無視できない。
×アロヒアリイ
前走は外を回し続ける負けて強しの内容。前走よりも展開が向く今回は上積みに期待。
買い目は◎単勝1点、◎-◯の馬連1点、◎-◯-▲△×の3連複4点で勝負する。(花田)
▽皐月賞予想▽
◎マスカレードボール
◯クロワデュノール
▲キングスコール
△サトノシャイニング
×ミュージアムマイル
×アロヒアリイ
◎2024年勝負買い目個人成績(東海S~ホープフルS:25記事)
・単勝27点→4830円 回収率178.9% 的中率37.5%(的中9R/推奨24R)
・馬連105点→12480円 回収率118.9% 的中率42.9%(的中9R/推奨21R)
・3連複204点→22410円 回収率109.9% 的中率17.4%(的中4R/推奨23R)
《ライタープロフィール》
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。
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