【ニュージーランドT】アドマイヤズーム始動も過信は禁物 ストレイトトーカーら「中山マイル組」の取捨がカギ

勝木淳

過去10年のデータから見るニュージーランドT,ⒸSPAIA

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2歳王者アドマイヤズーム、始動

2022年、ニュージーランドTはレースレーティング不足により降格の危機にあったが、22、23年と持ち直し、降格を免れた。今年は朝日杯FSを勝ったアドマイヤズームがここから始動する。世代最上位クラスのマイラーが登場することで、レースは引き締まる。ハイレベルな戦いになれば、レーティングもだが、なによりNHKマイルCがみえてくるだろう。

前哨戦の立ち位置が難しくなっている象徴のひとつでもあるニュージーランドTだからこそ、ここからその地位復活がはじまるのもおもしろい。以降はニュージーランドTを過去10年のデータとともに展望する。

人気別成績,ⒸSPAIA


まずは人気別成績から。1番人気は【0-4-0-6】複勝率40.0%と未勝利だが、前走重賞1着という確固たるプロフィールの持ち主に絞ると【0-1-0-1】。実績馬が単に出走していないだけという側面はある。とはいえ、負けた1頭の23年ドルチェモアは朝日杯FS1着以来の休み明けで7着。アドマイヤズームとて無条件で買いとは言いきれない。これも前哨戦の難しさか。

かわって目立つのが2番人気【5-0-2-3】勝率50.0%、複勝率70.0%。アドマイヤズームが休み明けを嫌われて、1番人気を譲るようなら思い切り買いだが、それはないか。3番人気【2-2-0-6】勝率20.0%、複勝率40.0%となんだかんだと上位人気は信頼に値する。一方で、10番人気【1-1-2-58】勝率1.6%、複勝率6.5%と中山マイルらしく穴気配も潜んでいる。

キャリア別成績,ⒸSPAIA


続いてはキャリア別成績。トライアルもスケジュールが進むと、キャリアの優位性が出てくるが、ここは2戦【1-1-1-3】勝率16.7%、複勝率50.0%、3戦【3-2-1-10】勝率18.8%、複勝率37.5%とキャリアが少ない組ががんばる。クラシックとは完全に切り離されたマイル路線だけに、ここまでじっくり待機してきた好素材のマイラーは注目だ。

一発あるならストレイトトーカー、アタラシイカドデニ

ほかにもキャリア3戦の牝馬プリティディーヴァ、ストレイトトーカーら楽しみな馬たちがそろう。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラス別成績を見ていく。前記のドルチェモアを含め前走GⅠは【0-0-0-3】。4カ月ぶりの実戦、さらに本番ではなく、トライアルというのが難しい。GⅠからGⅠというローテはピークからピークへつくるわけだが、トライアルとなると、そこまでつくらない。このさじ加減は競馬ファンが考える以上に難しい。

仕上げ過ぎれば、本番で一段上をつくれない。かといって途上で勝てるほどトライアルは甘くない。ライバルたちは本番に向け、絶好調でここにくる。実績があるとはいえ、3歳春時点での差は古馬とは違う。7、8分でそろっと発進が理想なら、当然、負ける場面はある。

前走GⅡ【0-2-1-13】複勝率18.8%はそこそこ間があく弥生賞【0-1-1-1】、チューリップ賞【0-1-0-2】はいいが、路線転換にしては期間が短いフィリーズレビュー、スプリングSはそれぞれ【0-0-0-5】。ジェットマグナム(スプリングS8着)は今回が初のマイル挑戦。マイルのペースに対応することが出来るか注目となる。

前走GⅢ【5-5-5-38】勝率9.4%、複勝率28.3%はマイルだと【2-3-1-11】勝率11.8%、複勝率35.3%、距離短縮【1-1-2-5】勝率11.1%、複勝率44.4%、距離延長【2-1-2-22】勝率7.4%、複勝率18.5%。クイーンC4着コートアリシアンは阪神JF6着、新潟2歳S2着の実績があり、牝馬でも十分やれる。

ちなみに、桜花賞へ向かわない牝馬は【0-4-1-25】。ウンブライル、ボンドガールと2年連続2着だ。

前走1勝クラス・距離別成績,ⒸSPAIA


前走1勝クラス【3-3-3-48】勝率5.3%、複勝率15.8%は前走マイル組が【3-2-3-36】と中心。下級条件からくるなら、重賞組よりさらにマイル照準の馬に狙いを定めるべきだろう。なかでも前走中山マイルは【2-1-1-24】勝率7.1%、複勝率14.3%。頭数も多く絞れないが、同条件出走の取捨はカギとなる。

前走中山芝1600・1勝クラス・位置取り別成績,ⒸSPAIA


「前走1勝クラス×中山マイル」組の指標としてアテになりそうなのが前走での位置取り。逃げ【0-0-1-3】複勝率25.0%、先行【2-1-0-14】勝率11.8%、複勝率17.6%に対し、中団・後方は【0-0-0-7】。差して好走は味がある競馬と評価されそうだが、実際は同条件なら逃げ・先行で乗り切った馬が買い。春の中山開幕週で勝ったストレイトトーカーは逃げ切り、4週目に勝ったアタラシイカドデニは先行押し切りとデータに合致する。

過去10年のデータから見るニュージーランドT,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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