【フィリーズレビュー】単勝1.1倍の支持に応えたアストンマーチャン 桜切符争う一戦の「記録」を振り返る

緒方きしん

フィリーズレビューに関する「記録」,ⒸSPAIA

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3,024万円で落札された素質馬シゲルピンクルビーが勝利

今週はフィリーズレビューが開催される。古くは報知杯4歳牝馬特別として開催されていた伝統の一戦で、2001年に現レース名へ改称後もローズバドやワンカラット、メイショウマンボ、ベルカントなど多彩な牝馬たちが勝利してきた。今回は現レース名に改称後(2001年~)のフィリーズレビューの「記録」を振り返る。

過去、多くの良血馬が挑戦してきた当レース。そこで出走馬の市場落札価格を高い順に並べてみる(国内市場のみ、価格はいずれも税込)。

1位 2億6,400万円 マイシンフォニー(2022年4着)
2位 8,580万円 ランフリーバンクス(2023年10着)
3位 5,832万円 サルドナ(2016年7着)
4位 5,775万円 フィールドサンデー(2001年6着)
5位 4,730万円 ポエットリー(2024年11着)

最も落札価格が高かったのは、2022年に4着となったマイシンフォニー。母は海外GⅠ馬テディーズプロミスで、兄には京都2歳Sの勝ち馬マイラプソディがいる良血馬だ。オーナーは兄と同じくキーファーズで、鞍上はデビューから武豊騎手。4戦目で初勝利を挙げて、フィリーズレビューに参戦した。

その2022年はサブライムアンセムが勝利。2着となったナムラクレアはその後、スプリント路線で花開いた。マイシンフォニーは次走でフローラSにも挑戦し4着、秋にはローズSで7着に善戦。5歳秋には3勝目を挙げたが、その冬に引退した。今後は繁殖牝馬として活躍を目指す。

2位のランフリーバンクスは三代母がマリスターⅡ。マリスターⅡは2007年のフローラS勝ち馬ベッラレイアを送り出した実績ある繁殖牝馬である。そこから広がった牝系からはローズS2着のワイルドラズベリー、プロキオンS2着のミッキーワイルド、小倉大賞典2着のカフナなどが出ている。さらにマリスターⅡの妹であるMorning Doveのひ孫にはグランアレグリアがいる。

勝ち馬で最も落札価格が高額だったのはシゲルピンクルビー(2021年1着)。2019年の北海道セレクションセールにて3,024万円で取引された同馬は、ランキング全体では9位の落札価格となる。半姉に桜花賞2着のシゲルピンクダイヤがいたことで落札価格があがった。

新馬戦を勝利したシゲルピンクルビーは2戦目の阪神JFで17着と大敗。続くフィリーズレビューは桜花賞出走に向けた負けられない一戦だったが、ここでは8番人気ながら見事に勝利を挙げた。桜花賞では16着だったが、古馬になってからも鞍馬Sを制したように、スピード豊富な馬だった。引退後も母として活躍が期待される。

一方、勝ち馬のなかで最も落札価格が低かったのは2008年の勝ち馬マイネレーツェル。11番人気で勝利して桜花賞やオークスに挑戦すると、秋にはローズSを勝利した。

同馬は2006年の八戸市場で、210万円にて落札。青森県産の活躍馬として名を馳せた。かつて青森県はカブトシローやグリーングラスなどを出した一大産地だった。直近では3月1、2日にハヤテノフクノスケやヴルカーノが勝利と青森県産馬が活躍しており、復活の兆しがある。

早逝した名牝、アストンマーチャンとラインクラフト

上述のマイネレーツェルは11番人気で単勝53.1倍と、単勝オッズが最も高い勝ち馬でもある。次点は2019年勝ち馬のノーワン。12番人気で単勝オッズは46.3倍だった。ただしこの年は1着同着のため、単勝配当は2,060円となった。

3位は2024年勝ち馬エトヴプレで、11番人気、単勝オッズ35.2倍。2桁人気で勝利した馬は上記3頭のみとなる。一方で、人気を集めて勝利した馬たちのランキングは以下の通り。

1位 1.1倍 アストンマーチャン(2007年)
2位 1.8倍 ラインクラフト(2005年)
3位 2.5倍 ムーヴオブサンデー(2004年)
4位 3.3倍 ヤマカツリリー(2003年)
5位 3.5倍 アイムユアーズ(2012年)

1位のアストンマーチャンは3歳秋にスプリンターズSを、2位のラインクラフトは桜花賞とNHKマイルCを制覇。当時を代表する実力馬たちだったが、いずれも4歳の時に急性心不全で急逝している。3位のムーヴオブサンデーも第一仔を送り出したのち、この世を去っている。

4位のヤマカツリリーは母としても活躍し、初仔のヤマカツハクリュウはマイラーズC4着、京王杯SC5着、新潟ジャンプS2着など、平地と障害競走それぞれで結果を残した。

5位のアイムユアーズは第一仔のユアーズトゥルーリが種牡馬となった。ユアーズトゥルーリ産駒のアイランドピークは中央で2度3着に入り、金沢移籍後には4連勝を挙げるなど存在感を見せている。

また、上記5頭のうちラインクラフトを除く4頭は、3、4コーナーで3番手のポジションを確保する競馬で勝利していた。レース中は、道中のポジション争いにも注目したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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