【ダイヤモンドS回顧】ヘデントールが4馬身差圧勝、春の盾獲りへ弾み ヴェルミセルの3着も価値あり
SPAIA編集部

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菊花賞2着馬が完勝
3400mの超長距離を舞台とするダイヤモンドSはハンデ戦なのも相まって、例年メンバーがあまりそろう重賞ではない。「古馬最高の栄誉」天皇賞(春)の前哨戦というより、中距離重賞で苦戦を強いられ、長距離に活路を見出したステイヤーたちの貴重な稼ぎ場という色が濃い。
ところが今年は菊花賞2着馬ヘデントールに、メルボルンC僅差2着のワープスピード、GⅡ・2勝馬シュトルーヴェら強豪が参戦した。「前走GⅠで3着以内の馬」がダイヤモンドSに出走すること自体、2013年2着ジャガーメイル(前走香港ヴァーズ2着)以来で、1986年以降でもわずか2度目というレアな出来事であった。
レースはセイウンプラチナがハナを切り、1000m通過63.6秒の淡々としたペース。それでも馬群は縦長に広がり、2周目1コーナー地点で先頭からシンガリまでおよそ5秒もの差があった。1000~2000m区間も63.6秒で流れ、上がり3Fは11.4-11.6-11.9。後方勢はさすがに大事に構えすぎた。
勝ったヘデントールはやや出負け気味のスタートから、鞍上が軽く促して先行集団の背後につけた。道中は終始行きたがる素振りを見せながらギリギリのラインでこらえ、じっと勝負の時を待った。
2周目3角に差し掛かるあたりでワープスピードが外から被せるように仕掛けてくると、それに呼応してスパート開始。鋭く加速し、一瞬で前の数頭をかわして先頭に躍り出た。直線はワープスピードを返り討ちにして他馬を突き放す一方。ステッキを使うシーンもなく4馬身差を付け、まさに完勝という内容であった。
「4馬身差」は1986年以降のダイヤモンドSでは最大タイの着差。例年と比べてハイレベルなメンバーが揃ったなかでこの勝ちっぷりなら、天皇賞(春)でも好勝負になるだろう。
勝ち時計3:22.2は近10年で8番目と遅めだが、この日の東京芝は良馬場発表ながら途中で雪が舞うシーンがあった。それが馬場に影響していたものと思われる。時計で評価を下げる必要はない。
力を示した3着ヴェルミセル
2着ジャンカズマはスローペースの2番手で軽ハンデと展開を味方につけた。味があったのは2周目4角の立ち回りで、外からワープスピードとヘデントールが動いてきても野中悠太郎騎手は抵抗せず、仕掛けのタイミングを待った。
見方によっては「消極的」ととられてしまうかもしれないが、そこで脚を使っていたらバテて着順が下がった可能性もある。勝ち馬との着差からしても今日はこれが最善の騎乗、最善の着順だったろう。OPに上がってからは苦戦中だが、3000m以上のレースでは4着、9着、4着、2着。長距離は合う。
3着ヴェルミセルは道中で先頭から4秒ほど離れたポジションを追走していた。前述の通り先頭ですらスローペースであり、少々後ろすぎた感は否めない。実際、後方集団から掲示板に載った(5着以内)のはこの馬だけだった。
展開不向きのなかでワープスピードとシュトルーヴェを捕まえた内容はハンデ差を加味しても評価すべきもの。ゴールドシップ×コンデュイットの血統らしくスタミナ豊富で、今後も3000m前後のレースで活躍していきそうだ。
4着ワープスピードは2周目3角あたりで勝負をかけたが、ヘデントールに抵抗され、内から4頭目を回される形になり距離ロスを被った。直線は残り300mあたりで左右にフラフラしはじめ、ジャンカズマに差し返された。長距離実績はあるものの、ロングスパート型ではなく、メルボルンCのようにインで溜めて直線にかける競馬が合っているのではないか。
5着シュトルーヴェは縦長になった馬群の切れ目、ワープスピードを見るような位置で運んだ。外から動いたワープスピード、ヘデントールとは対照的に内目で追い出しを我慢。直線は馬群を割ってジリジリと伸びているが、いまひとつ前との差が詰まらなかった。
斤量が59kgもあり、距離も少し長かったように感じる。昨年連勝した2500mのGⅡで見直したい。

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