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【京都記念回顧】「13.3から11.8」残り4Fでのギアチェンジが明暗わける 2000m以上では崩れない7歳馬ヨーホーレイク

2025/02/17 11:39
勝木 淳
2025年京都記念、レース結果,ⒸSPAIA

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昨年3着バビットの逃げ

チェルヴィニア、ソールオリエンスとGⅠ馬が出走馬に連なる伝統のGⅡはヨーホーレイクが勝ち、2着リビアングラス、3着マコトヴェリーキーで決まり、1~3番人気が総崩れだった。京都記念で3番人気以内がすべて3着以内を外したのは、1986年以降では1993年(勝ち馬パリスハーリー)、2003年(勝ち馬マイソールサウンド)、2022年(勝ち馬アフリカンゴールド)の3度しかない。2022年は阪神で行われたので、京都となると、22年ぶりになる。

では波乱はなぜ起きたのか。もちろん、見せ場なく敗れた9着チェルヴィニア、良・稍重馬場だとなかなか届かない5着ソールオリエンスの凡走が要因だが、レースの流れにも理由は隠されている。

昨年、2番手から3着と健闘したバビットが今年も出走し、レーススタイルを考えると、ハナはどうみてもこの馬。昨年はアフリカンゴールドが逃げ、1000m通過59.7で後ろを離し、縦長の隊列を利用してスパートするという味な競馬をみせた。ギリギリまでペースは上がらなかったので、実質は残り400m11.6-11.8の決め脚比べになり、プラダリアとベラジオオペラが弾けた。

自ら逃げた今年はニュアンスがかなり異なる。1400m通過までに13秒台が3度も刻まれる昨年以上のスローペース。前半1000m通過は1:02.9と昨年より3秒2も遅く、セイウンハーデス、リビアングラス、マコトヴェリーキーら好位勢が余裕で追走できた。縦長の隊列にならないので、バビットはスパートを待つ余裕はなく、ラップは残り800mから上昇。13.3-11.8と一気にスイッチが入った。ここでもたつくと勝負にならない。中団から差すためには、下りを利用したギアチェンジがポイントになった。

一方で後半800mは11.8-11.4-11.3-11.9と4ハロン型のロングスパート戦になったため、瞬時に動ける脚力に加え、長くいい脚を使えないと厳しい競馬になった。全体的に速いのではなく、ある一点から急に速くなり、ゴールまで持続するという構成は勝負所に上り下りがある京都ではよくある。

終盤で一気に厳しい流れに変化したからこそ、ポジション取りが重要だった。追走が楽な序盤に好位置を確保し、厳しい流れを前からしのぐ。勝ったヨーホーレイクも2着リビアングラス、3着マコトヴェリーキーも好位置確保が好走を呼びこんだ。後ろに有力勢がいる競馬ではシンプルながら有効な作戦だ。


馬体重20キロ増で勝ったヨーホーレイク

勝ったヨーホーレイクは21年ダービー以降、重賞【3-0-2-1】。屈腱炎による長期休養を挟んでも、崩れていなかった。もっとも負けたのは昨年毎日王冠での7着だけ。スピード勝負は辛いが、溜めをいかせる2000m以上は確実に走る。

7歳で重賞3勝目。母クロウキャニオンの系統はどの馬も堅実に活躍するが、カミノタサハラなど3歳春以降に体調を崩す傾向もあった。POG向きの血統もヨーホーレイクによってイメージが変わった。大事に使っていけば、再び花を咲かせる。馬券を買う側もあきらめずに我慢強く付き合いたい。

馬体重が20キロ以上増えての重賞勝利は、クロワデュノールの東スポ杯2歳Sなど若駒ならたまにあることだが、7歳以上となるとそうはいない。1986年以降の記録では、17年キーンランドCのエポワス(セ9歳、20キロ増)だけで、ヨーホーレイクは2頭目。20キロ増という数字をみた瞬間に切った方も多かったのではないか。だが、希少な例であり、ヨーホーレイクが勝ったことで自説を曲げなくていい。


相性が悪い前走ジャパンC組

2着リビアングラスは一昨年の京都新聞杯3着、菊花賞4着馬であり、京都の重賞との相性がいい。京都特有の上り下りで上手にリズムをつくる。残り800mでのギアチェンジに対応できたのも京都巧者らしい。昨年はサウジ、ドバイに遠征するなど、経験を積み、着実に上昇気配にある。4コーナー先頭から粘り込みを狙った菊花賞をみても、京都の長距離戦に可能性を感じる。逞しくなった今なら、天皇賞(春)で菊花賞以上の結果を残すこともできそうだ。

3着マコトヴェリーキーは昇級初戦の中日新聞杯で11着と崩れたが、相手関係を見越した思い切った先行策で浮上した。北村友一騎手は昨年、クロワデュノールとコンビを結成してから以前の輝きを取り戻しつつある。この春、注目のジョッキーだ。4コーナーで前にいるバビット、セイウンハーデスが外に動き、接触する場面もあったが、見事に立て直した。オルフェーヴル産駒らしい体幹の強さも光った。だが、展開に恵まれた好走であることもぬぐえない。重賞を勝てる力があるかどうかは、次走次第だろうか。

1番人気9着チェルヴィニアは直線での反応がなかった。休み明けの状態で、瞬時のギアチェンジが求められる競馬は辛かった。ゴチャつく場面もあり、敗因は色々考えられるが、それにしても負けすぎた。これで前走ジャパンC組は2000年以降、京都記念で【0-2-3-11】。好相性の有馬記念【8-3-7-18】と比べると、かなり悪い。馬体をそれほど緩めずにいける有馬記念と違い、間隔的に調整が難しいのではないか。

2番人気5着ソールオリエンスもジャパンC以来の出走だった。くわえて、やはり良・稍重馬場だとやや足りない。一方で上がり最速の34.1を記録しており、決して悪い走りではなかった。やはり重馬場まで悪化した道悪で狙おう。

2025年京都記念、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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