【シンザン記念】アーモンドアイ、オルフェーヴルら三冠馬を輩出 出世レースの「記録」を振り返る

緒方きしん

シンザン記念の思い出の『記録』,ⒸSPAIA

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アーモンドアイ、オルフェーヴル、ジェンティルドンナを輩出した出世レース

今週はシンザン記念が開催される。三冠馬シンザンを称えたレースとして、過去にアーモンドアイ、オルフェーヴル、ジェンティルドンナといった三冠馬を輩出している。例年多くの素質馬が集まり、春のクラシックを占う上でも重要な一戦だ。今回は1986年以降のデータからシンザン記念の記録を振り返る。

これまで多くの出世馬を送り出しているシンザン記念。後々になって多くの賞金を積み上げた出走馬も多数いる。

中央での獲得総賞金をランキングにすると、5位はダイタクヘリオス(6億8,320万円)、4位はダイワスカーレット(7億8,668万円)、3位はジェンティルドンナ(13億2,621万円)、2位はオルフェーヴル(13億4,408万円)、1位はアーモンドアイ(15億1,956万円)となる。牝馬は上位5頭のうち3頭を占めており、優勢というのがわかる。

獲得総賞金5位のダイタクヘリオスは父ビゼンニシキ、母父ネヴァービートという血統で、1989年〜1992年に活躍。シンザン記念は4番人気2着で、同レースの勝ち馬ニチドウサンダーは皐月賞でも5着に食い込んだ。一方のダイタクヘリオスはクラシック未出走だったが古馬になってさらに才能を開花。1991年にマイルCS制覇から有馬記念5着となると、翌年は宝塚記念5着から毎日王冠を制し、さらにマイルCSを連覇するなど、様々な距離で活躍した。

4位のダイワスカーレットは12戦8勝2着4回と連対率100%だった安定感抜群の名牝。シンザン記念では2着と敗れたが、次走のチューリップ賞で生涯のライバルとなるウオッカ相手にクビ差の接戦。その後も、ウオッカと数々の名レースを繰り広げたことでも知られる。

3位のジェンティルドンナは、ダイタクヘリオス、ダイワスカーレットとは異なり、シンザン記念を勝利。トウケイヘイローやオリービンといった評判馬を撃破して重賞初挑戦で初制覇を達成した。続くチューリップ賞では4着に敗れたものの、そこから5連勝で牝馬三冠&ジャパンC制覇を成し遂げる。ジャパンCでは1歳上の三冠牡馬オルフェーヴルを相手にしての勝利で、その勝負根性に驚かされたファンも多かった。

2位は2011年シンザン記念2着のオルフェーヴル。この年はマルセリーナやドナウブルー、マーベラスカイザーといった後の活躍馬が多く出走していた。そのなかで勝利したのはレッドデイヴィス。セン馬のためクラシック出走は叶わなかったが、『最強のセン馬』候補の1頭として、その名はファンの心に刻まれている。

オルフェーヴル自身はその後、牡馬三冠を達成。古馬になってからは凱旋門賞に2度挑戦し、どちらも2着と惜敗したことも含め、ファンにとっては忘れられない1頭であることは間違いない。

1位のアーモンドアイは、デビュー戦こそ2着に敗れたものの、次走の未勝利戦を制し、続くシンザン記念も快勝。そこから桜花賞、オークス、秋華賞、ジャパンCと連勝し、年間無敗で年度代表馬にも選出された。翌年は安田記念、有馬記念では敗北したものの、ドバイターフ、天皇賞(秋)を勝利。現役最終年もヴィクトリアマイル、天皇賞(秋)、ジャパンCを制して日本馬のGⅠ最多勝利記録を更新する活躍をみせ、2度目の年度代表馬に選出された。

引退後は母としての活躍も期待されており、昨年は初仔アロンズロッドがデビューした。2番仔はモーリス産駒。ちなみに、モーリスもシンザン記念の出走馬(結果はミッキーアイルの5着)で、当レースに出走経験がある2頭の仔ということになる。

過去39年で勝ち馬は1番人気が14頭、2番人気が10頭

アーモンドアイはシンザン記念を1番人気で勝利。過去、当レースを制した馬は1番人気が14頭、2番人気が10頭と堅い決着が多い。ただし、アーモンドアイは単勝2.9倍と、後々の活躍を思えばそれほど人気を集めておらず、配当の低さでは10位タイとなる。

単勝配当が低い順でランキングにすると3位がミッキーアイルの1.6倍、1位タイがペールギュント、ナムラコクオーの1.5倍。牝馬のトップはシーキングザパールの2.0倍である。

ペールギュントは前年に朝日杯FSで1番人気3着となると、年明けすぐにシンザン記念に挑戦。ここで圧倒的な人気に応えたが、同年のクラシックにはディープインパクトというあまりにも分厚い壁がそびえ立っており、皐月賞、ダービーともに大敗した。

しかし、その間に出走したNHKマイルCではラインクラフト、デアリングハートの牝馬決着のなか4着と、掲示板に食い込んだ。その後、中距離でも勝利をあげたが、現役後半ではスプリント戦での才能を見出され、京阪杯で2着など存在感を見せた。

ナムラコクオーはシンザン記念の勝利後は弥生賞3着、NHK杯勝利と実力を見せる。古馬になってからはダート戦のプロキオンSを制覇し、高知に移籍。高知では32戦21勝と地方競馬を盛り上げ続け、2003年の黒船賞にはメンバー最年長の12歳で出走し、ノボジャック、ノボトゥルーらと激突した。長期間にわたって高知を支えた1頭と言える。

過去、単勝10倍を超える勝利は9度のみ、50倍を超える勝利は52.1倍で勝利した2001年ダービーレグノ一頭だけ。オルフェーヴルやダイワスカーレットが敗れた重賞といえども勝ち馬が伏兵というケースはそれほど多くない。

伏兵評価だったとはいえ、ダービーレグノも皐月賞では5着に食い込み、5歳シーズンに新潟記念を制するなど実力十分の馬だった。6歳シーズンには8月までに8戦するタフネスぶりを見せたが、札幌記念のレース中に発生した事故により予後不良となってしまった。今年の出走馬たちは引退まで無事に走り切れるよう、見守りながら応援したい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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