【ジャパンC】1999年は「日本総大将」スペシャルウィークが欧州最強馬モンジューを撃破 外国馬と激戦が繰り広げられた3レースを振り返る
高橋楓
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今年は強力な外国馬が参戦 2006年以来の好走なるか
今年もジャパンCの時期がやってきた。第1回は天皇賞馬ホウヨウボーイや、当時は無冠のプリンスと呼ばれていたモンテプリンスが出走するも上位争いには加われず。それどころか4着までを外国馬が占め、当時の日本レコードを塗り替えられるという衝撃の幕開けだった。
1986年以降の外国馬の成績は【11-9-10-178】で勝率5.3%、連対率9.6%、複勝率14.4%を記録。しかし、過去10年は【0-0-0-25】で一度も3着内がない。馬券圏内は2006年ウィジャボードの3着まで遡らなければならない。やはり、凱旋門賞において日本馬が苦戦しているように、外国馬から見た日本の高速馬場も異質なのかもしれない。
しかし、今年はGⅠ・6勝馬オーギュストロダン、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを制したゴリアット、バーデン大賞勝ち馬で凱旋門賞ではシンエンペラーに先着したファンタスティックムーンが参戦する。
特にディープインパクト産駒のオーギュストロダンが日本の馬場でどのようなレースを見せるのか。注目が集まる。そこで今回は、過去のジャパンCで外国馬の参戦が思い出深い、3レースを振り振り返る。
1999年 凱旋門賞馬モンジューVS「日本総大将」スペシャルウィーク
この年の話題はなんと言っても、凱旋門賞馬モンジューの出走だろう。その年のフランス、アイルランド2か国のダービーを制し、凱旋門賞ではエルコンドルパサーを破ったまさに “欧州最強馬”が参戦してきた。
そして、ファンは欧州最強馬モンジューを1番人気に支持した。この年は他にも、バーデン大賞勝ち馬タイガーヒル、フォワ賞でエルコンドルパサーと接戦を演じたボルジア、前年のイギリスダービー馬ハイライズ、M.ロバーツ騎手騎乗のフルーツオブラヴ、香港の年度代表馬インディジェナスと超豪華メンバーが顔をそろえた。
対する日本の総大将はスペシャルウィーク。昨年の3着馬で1999年シーズンは天皇賞春秋制覇を達成。また、菊花賞3着から挑むラスカルスズカ、GⅠで好走が続いていたステイゴールドなども出走してきた。
レースはスタート前の歓声にモンジューが驚く場面も見られたが、M.キネーン騎手になだめられすぐに落ち着きを取り戻した。
ゲートが開くと日本馬アンブラスモアがハナを奪い、スペシャルウィークは中団に待機。その後ろにモンジューとボルジアが並んで続く展開。大欅(けやき)を過ぎたあたりから有力馬が進出を開始。4コーナーを過ぎるころにはスペシャルウィークが外からスパートを開始。さらに外にモンジューが持ち出し追い出した。
ラスト200m地点でスペシャルウィークが抜け出し先頭に立つと、場内から割れんばかりの大歓声があがった。追いすがる香港最強馬インディジェナス、イギリスダービー馬ハイライズ、欧州最強馬モンジューの追撃を最後までしのぎ、スペシャルウィークが堂々と先頭でゴールを駆け抜けた。
並みいる強豪を退けた「日本総大将」スペシャルウィーク。その年、海の向こうで戦い続けた同期エルコンドルパサーとともに、世界に日本馬の強さを見せつけた。
2005年 レコード勝ちで歴史の壁を塗り替えたアルカセット
1989年にホーリックスがジャパンCで樹立した「2分22秒2」の世界レコードは多くの競馬関係者を驚かせた。当時、このレースの時期になると芝生は茶色く枯れていた時代。その中で記録されたタイムだけに、驚きも大きかった。
2005年のジャパンCも超豪華メンバーだった。サンクルー大賞の勝ち馬アルカセット、前年の凱旋門賞馬バゴ、前年のBCフィリー&メアターフなどを制し、2004年の欧州年度代表馬ウィジャボード、BCターフ勝ち馬ベタートークナウ、米国GⅠ馬キングスドラマ、バーデン大賞連覇中のウォーサンと、6頭すべてがGⅠ馬だった。
迎え撃つ日本勢は、前年に秋古馬三冠を制して年度代表馬に輝いたゼンノロブロイ、同年の宝塚記念2着馬のハーツクライなどが出走した。
レースはスタートすると、2年前に9馬身差でジャパンCを制したタップダンスシチーが積極的にハナを主張。スローペースとはならずに1ハロンあたり11.8~12.0秒というラップが淡々と刻まれ、最初の1000mの通過は58秒3のハイペースとなった。
ラスト200mで先頭争いが横一線となり、ゼンノロブロイが抜け出そうとするも、内からアルカセットが追いすがった。そしてラスト100mになるとハーツクライが馬群の間からもの凄い脚で追い込み、アルカセットとの叩き合いに。そのまま並んでゴールした。
最後はアルカセットがハーツクライをハナ差しのぎ勝利した。驚いたのは表示された勝ちタイムの「2分22秒1」という数字。不滅と思われたホーリックスの記録が16年のときを経て破られた瞬間だった。
2006年 無念の帰還から改めて最強を証明したディープインパクト
第26回にして過去最少の頭数で行われた2006年ジャパンC。この年の主役は何といってもディープインパクトだ。前走は凱旋門賞に参戦。日本馬の悲願達成が期待された一戦だったが、結果は無念の3着(レース後に失格)。しかし、ファンはディープインパクトを単勝1.3倍の1番人気に支持した。
2番人気は前年の有馬記念でディープインパクトに土をつけ、前年のジャパンCでアルカセットと接戦を演じたハーツクライ。3番人気が昨年の5着馬ウィジャボード、4番人気がその年の二冠馬メイショウサムソンと続き、道営のエースであり英雄のコスモバルクや、ヴェルメイユ賞4着のフリードニアも出走していた。
レースは逃げ馬不在の一戦だったが、敢然とハナを奪ったのはコスモバルク。ただ最初の1000mは前年とうって変わって61秒1というスローの流れ。ディープインパクトは最後方につけ、全馬を見るような形でレースを進めた。
ディープインパクトはラスト800mを切った辺りで一気に上がっていき、その姿はいつもの走りだった。4コーナーで大外をまわり、最後の直線では一頭ずば抜けた脚で前にいた馬たちを差し切った。
ゴールと同時に武豊騎手の右手が力強く握りしめられた。ラストランの有馬記念で挑むはシンボリルドルフ、テイエムオペラオーに並ぶGI・7勝目。果たしてどのようなレースを見せてくれるのか。誰しもが伝説の最終章を想像し、胸を熱くした。
歴史が織りなす2024年ジャパンC
凱旋門賞馬モンジューを「日本総大将」スペシャルウィークが迎え撃ってから、四半世紀の月日が経つ。今年の「日本総大将」は2022年ダービー馬で、前走で天皇賞(秋)を制したハーツクライ産駒のドウデュースだ。
その背にはスペシャルウィーク、そしてディープインパクトの手綱を握ってきた武豊騎手。どこか運命のようなものも感じる。そして何より競馬は血統や歴史が色濃く紡がれていることが分かる。
そして今年挑戦してくる外国馬の筆頭は、ディープインパクト産駒でモンジューと同じ勝負服のオーギュストロダンという点も実に面白い。今年のジャパンCは一体どのような結末を迎えるのか。楽しみにその時を待ちたい。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
サクラローレルの馬体の美しさに魅せられて競馬の世界に惹きこまれる。他に好きな馬はホクトベガ、サイレンススズカ。一口馬主を趣味とし、楽しさを伝える事にも注力している。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。
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