【京成杯AH】アスコリピチェーノは斤量がカギに 「前走関屋記念の連対馬」ディオがデータ上優勢
勝木淳
ⒸSPAIA
馬場も変わり、大波乱は減ったハンデ戦
それにしてもアスコリピチェーノの登録には驚いた。路線としては秋華賞ではなく、古馬相手のマイル戦線に進むというメッセージは明確になったものの、京成杯AH出走は意外だった。初の中山、ハンデ戦と難しいシチュエーションだ。
今夏、ピューロマジックが3歳馬としては重い55.5kgというハンデを嫌って、CBC賞を回避したのは記憶に新しい。ピューロマジックは計算上、56kgでもおかしくなく、実は0.5kg得をしていたわけだが、それでもやっぱり重い。GⅠ馬で前走GⅠ・2着のアスコリピチェーノも厳しいハンデは避けられそうにない。いったい、どうするのか。
それでもここから始動と決めたのは、マイルCSまでのレース間隔を考えてのことだろう。約2カ月半と、一旦緩めて仕上げるには十分すぎる時間を稼げる。
いや、もしかすると、結果と手応え次第ではデルマーのブリーダーズCも視野に入っているのではないか。芝8ハロンのブリーダーズCマイルは3歳馬が結果を出すレースでもある。11月上旬をターゲットにするなら、京成杯AHからの始動も納得できる。
まずは古馬相手に結果を残せるかどうかだ。データは過去10年分を使用する。
1番人気は【4-0-1-5】勝率40.0%、複勝率50.0%。かつては荒れるハンデ戦だったが、サマーマイルシリーズ定着とともに堅い決着も目立ってきた。これは馬場も関係していそうだ。野芝で行われる秋の中山はかつて超高速決着が頻発し、開幕週は逃げ先行が圧倒的だった。人気薄が一発を狙い、先行して残ることもあれば、その意識が厳しいペースを生み、追い込みを誘発し波乱が巻き起こることもあった。
近年は野芝でも馬場造園課が開幕前に馬場をほぐし軟らかくつくるので、速いは速いが超高速というほど速くない。それに伴い極端なイン先行優位にならず、差し馬もペース次第で届くようになった。自然と極端なペースは影を潜め、京成杯AHも脚質不問の真っ向勝負に変わり、大波乱とまではいかなくなってきた。
4番人気以内8勝とイメージほど荒れないものの、10番人気以下【1-4-2-51】勝率1.7%、複勝率12.1%と2、3着は油断できない。さすがは中山のハンデ戦。そう単純には終わらない。
この時期、優位の3歳は【1-1-2-16】勝率5.0%、複勝率20.0%とこのレースではそこまで数字が出ていない。4歳も【1-0-2-22】勝率4.0%、複勝率12.0%と勢いを感じず、5歳が【7-4-3-38】勝率13.5%、複勝率26.9%と結果を残す。6歳も【0-5-3-28】複勝率22.2%なので、ベテランの経験値がトリッキーなコースで生きる。これも極端なスピード比べにならなくなった秋の中山らしいデータだ。
似た境遇のグレナディアガーズは3着
サマーマイルシリーズ王者を目指す関屋記念2着ディオ、パラダイスSで古馬OPを勝ったオーキッドロマンスなど勢いある馬たちがそろった。アスコリピチェーノやコラソンビートの3歳牝馬との力関係はどれほどだろうか。
それにしても除外になったとはいえ新潟記念で始動したライトバックといい、今年の3歳牝馬は既存の考えに囚われないローテーションが目立つ。
アスコリピチェーノの前走NHKマイルCは【0-0-1-5】複勝率16.7%。21年グレナディアガーズが1番人気に推され3着に敗れた。これが最高着順だ。性別は違うが、2歳GⅠ馬、NHKマイルC惜敗とプロフィールがアスコリピチェーノに似ており気になる。グレナディアガーズは56kgだった。アスコリピチェーノは55kgだろうか。54kgではないような気もするが。
古馬勢は前走GⅢ【6-7-7-70】勝率6.7%、複勝率22.2%に注目する。レース内訳では中京記念【3-1-2-13】勝率15.8%、複勝率31.6%が目立つが、今年は小倉芝1800mで行われ、当てはめられそうにない。と思いきや、小倉芝1800mの中京記念は【2-0-0-4】勝率、複勝率33.3%で意外とつながる。ただし、勝った2頭は前走2、3着と好走しており、今年のカテドラル、セルバーグは推しづらい。
となると頼りないが、前走関屋記念【2-4-3-42】勝率3.9%、複勝率17.6%か。その着順別の内訳は、1、2着【2-1-0-4】、3~5着【0-2-2-12】、6着以下【0-1-1-26】。新潟外回りと中山では正反対のレース傾向になりやすく、適性を踏まえれば負けた馬の評価を上げたくなるが、実際は勢い重視。掲示板は確保しておきたいところだ。
勝てばシリーズ制覇がかかるディオの意気込みはぜひとも買いたい。春には中山で東風Sを制しており、コース相性もいい。ちなみに関屋記念で逃げ先行の5~9番人気は【1-0-2-4】とデータも背中を押す。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・【京成杯AH】過去10年のレースデータ
・【競馬】東大HCが中山巧者を徹底検証 シルバーステート産駒が芝・内枠で高い回収率、M.デムーロ騎手は道悪◎
・【紫苑S】前走格が重要、オークス組は着順問わず優勢 ミアネーロ、ホーエリートに妙味あり
おすすめ記事