【紫苑S】前走格が重要、オークス組は着順問わず優勢 ミアネーロ、ホーエリートに妙味あり
勝木淳
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開幕週でも8枠に注意
アスコリピチェーノが翌日の京成杯AHを始動戦に選び、マイル路線へ進む意思を示し、紫苑Sは例年ほどのハイレベルな争いではなくなった。重賞昇格後は、秋華賞につながるトライアルへと変貌を遂げ、昨年からGⅡに格上げされた。勢いに乗るトライアルも今年はオークス上位組の出走がない。
しかし、ボンドガールの名がある。2歳秋はクラシック有力候補に推され、その後、順調さを欠いた。立て直した春はNHKマイルC17着と大敗を喫したが、夏のクイーンSでは復活を予感させる末脚を披露し、2着好走。ここで結果を残せば、自信をもって2000mの秋華賞へ進むことができる。
一方で、6、7月に2勝目をあげ、きっちり夏を休み、逆転を狙う上がり馬の存在も目につく。オークスと同週に行われたカーネーションCを勝ったカンティアーモ、北海道で3勝目を手にしたエラトー。どちらも春クラシック出走が叶わなかった。ボンドガールを破り、反撃の狼煙をあげたい。データは重賞昇格後の過去8年分を使用する。
1番人気【3-1-1-3】勝率37.5%、複勝率62.5%、2番人気【3-2-0-3】勝率37.5%、複勝率62.5%は強力。1、2番人気のうち、前走オークスが【3-3-1-1】。あくまで格がものをいう。今年のオークス組は10着ホーエリート、14着ミアネーロ。ミアネーロはフラワーCでホーエリートを破っており、2番人気以内に支持される可能性はある。そうなれば、逆らえないか。
4月以来の開催となる中山は絶好の馬場状態で迎える。そうなると、イン先行有利が定番になるが、紫苑Sでは8枠が【4-2-2-13】勝率19.0%、複勝率38.1%と抜けているから不思議だ。もちろん、馬場のつくり方が変わり、開幕週でも内外の差が小さくなったこともある。
だが、それ以上に外目追走のアドバンテージが大きい。紫苑Sは重賞昇格後、前半5F58秒台の厳しい流れになったのは昨年の1回しかない。
有力馬が出走し、全体的にレースの中心が後ろにあり、さらにトライアルとなれば飛ばすことはそうない。厳しいペースならタテ長もあるが、そうでないなら団子状態で進みやすい。当然、勝負所では激しいスペース争いが起こる。自然と内で抜けるスペースを失い、下がる馬や不利を受ける馬が目立つ。外枠ならそういった心配は少ない。多少、外を通っても気分よく走らせるのは3歳牝馬にとって大切。これが8枠優勢のデータの向こうにある。
逆転候補はフォーザボーイズ
春の重賞で結果を残しGⅠ出走を果たした組と、春は結果を残せず秋にかける馬たちの争い。今年はその差が例年ほど大きくなく激戦が予想される。混戦を抜け、GⅠ出走を叶えるのはどの馬だろうか。
前走オークスは【4-5-4-21】勝率11.8%、複勝率38.2%。2、3着【2-0-1-2】、5~9着【0-3-1-7】に対し、10着以下は【2-1-2-12】と決して見劣らない。オークスに出走した事実は重く、着順に囚われなくていい。ホーエリート、ミアネーロはどちらも中山の重賞で結果を残した。有力視できる存在だ。上がり馬に人気がいくなら、むしろ妙味すら出てくる。
上がり馬は必ずしも優勢とはいえないものの、レース間隔はポイント。中3週【1-0-0-7】勝率、複勝率12.5%、中4~8週【1-2-2-20】と適度に間隔をとり、重賞に備えたローテが理想だ。
ただ、中9週以上【0-0-0-22】で休みすぎもよくない。カンティアーモは中15週と今年は10週以上間をあけた組が目立つので微妙。3勝目を函館であげたエラトーも中9週で、中8週は小倉芝1800mで2勝目をあげたハミングぐらい。京都、小倉の芝1800mで連勝を飾っており、2000mは新馬4着以来になる。
3勝目を函館であげたエラトーも中9週で、中8週は小倉芝1800mで2勝目をあげたハミングぐらい。京都、小倉の芝1800mで連勝を飾っており、2000mは新馬4着以来になる。
ブリックスアンドモルタル産駒は今年の8月25日までで芝2000m【6-5-8-58】勝率7.8%、複勝率24.7%に対し、芝1800m【10-10-6-71】勝率12.0%、複勝率31.3%。数字の並び方をみても、1800mと2000mの間に壁がありそうだ。
レース間隔とは別に距離のデータも。前走2000mは【2-1-1-9】勝率15.4%、複勝率30.8%。2000m未満【0-1-2-43】複勝率6.5%、2000m超【0-0-0-6】と、2000mへのこだわりが結果につながる。
レース間隔では厳しかったフォーザボーイズは前走東京芝2000mで2勝目をあげ、ここにかけてきた。母カゼルタはエルダンジュの系統で、エルデュクラージュ、アドマイヤスピカなど晩成の血でもある。父エピファネイアも菊花賞5馬身差、翌年ジャパンC4馬身差Vなど晩成血統。フォーザボーイズも2000mに舞台が移る秋は春とはひと味違う。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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