【キーンランドC】ビッグシーザーはレース前半次第 ナムラクレア、サトノレーヴらPP指数上位3頭が強力
山崎エリカ
ⒸSPAIA
今夏は高速馬場で内側もそこまで悪くない
キーンランドCは札幌開催12日目で行われる。札幌は寒冷地対策として欧州と同じ洋芝が使用されており、野芝より耐久性が低い。よって開催が進むほど馬場の傷みが進行し、時計が掛かる。しかし、今年は開催日が晴天に恵まれることが多く、先週の時点でも高速馬場で、馬場の内側も例年ほど悪化していない。
キーンランドC当日も晴れ模様。例年は馬場悪化の影響もありハイペースになりやすく、後方外々からでも勝負になるレースではあるが、今年は届かない可能性が高い。今回はそれを踏まえて予想したい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ナムラクレア】
2歳時から重賞で活躍し、3歳夏に函館スプリントSを勝利。芝1400m以下では【5-5-2-1】の安定感と実績を誇る。唯一、馬券圏外に敗れたのは高速馬場で1分7秒9の決着となった2022年のスプリンターズSのみ。中団外目を追走し、3~4角でロスを作って5着に敗れた。その後に重馬場で行われたGⅠ高松宮記念で2着。高速馬場で行われた2023年のスプリンターズSでは1番枠からやや出遅れ、好位の直後まで押し上げたものの、3~4角で外を狙ってまたもロスを作ってしまうも、ここでは3着に善戦している。
重馬場となった2024年の高松宮記念は、3番枠からまずまずのスタートを切ったが、促してもあまり進まず、中団中目からの追走。道中はビッグシーザーの後ろでスペースを維持して進め、3~4角では最内を通って3列目で直線へ。序盤で抜け出したマッドクールの後ろから最内を通って2列目まで上がり、ラスト1Fでしぶとく伸びて猛追したが、アタマ差で惜敗した。
3着のビクターザウィナーに3馬身差をつけており、自己最高指数を記録。ただし、内が圧倒的に有利な馬場で、逃げながらも最後の直線で外に誘導されたビクターザウィナーが自滅する形。一方、最短距離を通ったマッドクールやナムラクレアは馬場に後押しされた面がある。
昨年までと比べるとスタートと二の脚がやや甘くなっている印象だが、ここでは能力、実績ともに一枚上の存在。京都牝馬Sでもクビ差2着、高松宮記念でアタマ差2着と抜群の安定感を見せている。今回は2番枠と枠にも恵まれた。
ここは秋のスプリンターズSに向けての始動戦という位置付けの一戦だが、昨秋のスプリンターズS時のようなロスを作らなければ、あっさり勝ち負けしても不思議はなく対抗評価だ。
【能力値2位 サトノレーヴ】
3歳4月の遅いデビューとなった芝1600mの未勝利戦を見事に勝利し、その後は条件戦で一度も連対を外すことなく芝1200mで順調にキャリアを積み、今年2月の阪急杯では、重賞初挑戦ながら4着とOPでも通用する能力をアピール。前々走のOPの春雷Sを勝利すると、前走の函館スプリントSで重賞初制覇を達成した。
前走は4番枠から五分のスタートだったが、そこから促して、好位の内目から上手く3列目の最内のスペースに収まった。3~4角では2列目の内のスペースを拾って進路がないまま直線を向いたが、序盤で狭い内を捌いて先頭列へ。ラスト1Fでそのまましぶとく抜け出し、1馬身1/4差で完勝した。
前走は開幕週の高速馬場で内枠に恵まれ、好位の内を追走できたことは確かだが、3~4角で詰まらないように我慢し、直線序盤で一気に抜け出した脚に素質の高さがうかがえた。
ここまで大事に使われ、ほぼ底を見せず上昇一途。この勢いなら、ここも突破してしまう可能性は十分ある。重い印を打ちたい馬だ。
【能力値3位 ビッグシーザー】
2歳秋の未勝利戦から芝1200mで4連勝し、3歳春の葵Sでは断然の1番人気に支持された馬。3歳秋以降が不振だったが、今年1月の淀短距離Sで重賞勝ちレベルの好指数を記録し、完全復活を果たした。
淀短距離Sでは7番枠から五分のスタートだったが、二の脚で楽に2番手まで挽回して追走。道中で先頭のカルネアサーダとの差を徐々に詰めて3角では同馬と2馬身差。3~4角では動かずに最短距離を通り、4角出口でカルネアサーダの1馬身差まで詰めた。直線序盤で伸びてカルネアサーダに並びかけ、ラスト1Fで抜け出した。外からメイショウソラフネが強襲したが、寄せつけずに1馬身半差の完勝だった。
次走のオーシャンSでも2着。ここでは10番枠からやや出遅れ、そこから押して中団中目まで挽回した。3~4角でも中団中目を通って、4角で勝ち馬トウシンマカオの後ろを取り、4角出口で窮屈になっても前に出し切って直線へ。そこから伸びて2着に入った。
2~3歳時はそこまでスタートも二の脚も速くないのに、無理目に前の位置を取りに行くところがあった。それが3歳秋の不振に繋がった面もあったが、坂井瑠星騎手に乗り替わってからは前半でそこまで無理をさせていない。
前々走の函館スプリントSは、内有利の馬場を2列目の外から3~4角で3頭分外を回るロスを作りながらもサトノレーヴとは1馬身1/4差+クビ差の3着を死守。鮫島克駿騎手に乗り替わった前走の青函Sは、内有利の馬場&前有利の展開のなか斤量59kgを背負って外枠からかなり追っていく形。展開にこだわりすぎて、前半で無理をさせすぎたことも6着に敗退した理由だ。
今回も12番枠と外目だが、近2走ほど内有利の馬場ではない。再び坂井瑠星騎手への手替わりとなり、前半で無理をさせなければチャンスは十分と見ている。今回の本命候補だ。
【能力値3位タイ モリノドリーム】
前走でOPの青函Sを勝利した上がり馬。前走は8番枠から五分のスタートだったが、促して流れに乗せ、3角では好位中目の直後を確保した。3~4角ではビッグシーザーを目標に動いて4角では同馬の後ろから外に誘導。3列目付近で直線へ向いた。序盤の伸びは冴えなかったが、ラスト1Fでしぶとく伸びて逃げ粘るカンティーユをクビ差で捉えた。
この馬は輸送減りが激しく、2022年に札幌で未勝利と1勝クラスを連勝した後の中山の2勝クラスで大幅に体を減らしたことがあった。最近はそれを考慮してか、レース間隔を明けて使うことで体重調整をしているふしがある。
これまで札幌、函館の滞在競馬で結果を出してきた馬で、C.ルメール騎手を配して挑むここは勝負気配も感じる。
ただし、重賞で好走するには前走からさらにパフォーマンスを上げる必要があると見ている。
【能力値5位 プルパレイ】
4走前の鞍馬Sでは10番人気の低評価を覆して2着に好走した。同レースでは6番枠からまずまずのスタートを切ったが、ひとつ外からトップスタートを決めたジャスパージャックがぶっ飛ばしていく展開。外枠の各馬も掛かり気味に内に切れ込んできたので控えて中団中目を追走した。道中も我慢して、4角ではジャスティンスカイの後ろから外に誘導。直線序盤でしぶとく伸びて2列目付近まで上がり、ラスト1Fでジャスティンスカイに食らいついて半馬身差の2着を死守した。
前後半3Fは33秒7-33秒2の緩みない流れ。3~4角でロスを作りながら、最後までしっかりと伸びてはいたが、前崩れの展開を差し切ったもので、そこまで高く評価できるものではなかった。
前走UHB賞では2番枠からやや出遅れたものの、二の脚を使って、2列目の最内を確保。道中では前のスペースを維持しながら楽な手応えで進めて、3~4角でそのスペースを潰して4角出口で逃げ馬カンティーユの外に誘導された。直線序盤でしぶとく伸びてカンティーユに並びかけ、ラスト1Fで抜け出した。そこを外からキミワクイーンに強襲されたが、振り切って3/4差で勝利した。
上手く最短距離を通ってはいたが、前後半3F33秒3-34秒7のかなりのハイペースを先行するという強い勝ち方。ここにきて着実に強くなっているようだ。
しかし重賞では、モリノドリーム同様に前走からの上積みか、あるいは能力値上位3頭に何かしらのほころびがあればチャンスがある、という評価だ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ナムラクレアの前走指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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