【キーンランドC】回収率は後方待機組に軍配 ダノンマッキンリーは血統から洋芝適性あり
坂上明大
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傾向解説
サマースプリントシリーズ第5戦キーンランドC。シリーズ終盤戦としても目が離せない一戦ですが、他方ではGⅠスプリンターズSの前哨戦としても重要度の高いステップレース。既存勢力と新興勢力の勢力図にも大きな影響を与える一戦といえるでしょう。本記事では血統面を中心に、キーンランドCのレース傾向を整理していきます。
まず紹介したいデータは初角位置別成績。基本的に短距離戦は先行有利になることが多いカテゴリーですが、キーンランドCにおいては後方待機組の台頭も目立つのが大きな特徴。札幌芝1200mはスタートから初角までの距離が400m以上あるため先行争いが長引きやすく、コーナー角が緩いことから外を回しても大きなデメリットになりません。データ上でも、複勝率こそ先行勢に分があるものの、回収率では後方待機組に軍配。小回りコースで力を出し切れなかった末脚型には絶好の舞台といえるでしょう。
<初角位置別成績(過去10年。単勝オッズ49.9倍以下)>
真ん中から前【6-6-8-46】勝率9.1%/連対率18.2%/複勝率30.3%/単回収率38%/複回収率81%
真ん中より後ろ【4-4-2-33】勝率9.3%/連対率18.6%/複勝率23.3%/単回収率181%/複回収率94%
また、同様の理由から枠番別成績も外枠有利の傾向に。元々、札幌芝1200mは外枠有利の傾向が強いコースですが、キーンランドCにおいては連続開催の後半に行われるため、内目の傷んだ馬場状態も外枠有利の傾向に拍車をかけています。今年も先週や、今週中の雨により内目の馬場が悪化することが予想され、外枠有利の傾向は今年も継続されそうです。
<枠番別成績(過去10年。単勝オッズ49.9倍以下)>
1枠【0-0-1-10】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率9.1%/単回収率0%/複回収率26%
2枠【0-0-1-8】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率11.1%/単回収率0%/複回収率61%
3枠【0-2-0-12】勝率0.0%/連対率14.3%/複勝率14.3%/単回収率0%/複回収率25%
4枠【2-3-1-8】勝率14.3%/連対率35.7%/複勝率42.9%/単回収率133%/複回収率168%
5枠【0-1-2-11】勝率0.0%/連対率7.1%/複勝率21.4%/単回収率0%/複回収率71%
6枠【3-1-1-13】勝率16.7%/連対率22.2%/複勝率27.8%/単回収率165%/複回収率73%
7枠【4-1-2-8】勝率26.7%/連対率33.3%/複勝率46.7%/単回収率328%/複回収率126%
8枠【1-2-2-9】勝率7.1%/連対率21.4%/複勝率35.7%/単回収率40%/複回収率121%
血統面ではSadler's Wellsなどの欧州血統に注目。比較的力を出し切りやすいコース、かつ別定戦ということから血統による適性評価の重要度は高いとはいえません。ただ、傷み始めた洋芝でのスプリント戦とあって、米国血統の単調なスピードだけでなく、欧州血統の底力も非常に重要な資質。特に欧州血統の代表格であるSadler's Wellsの血を内包する馬が短距離戦でこれだけ好走しているのはキーンランドCの大きな特徴といえるでしょう。
<Sadler's Wells内包馬(過去10年)>
該当馬【2-3-3-17】勝率8.0%/連対率20.0%/複勝率32.0%/単回収率142%/複回収率127%
有力馬の血統を解説
・ナムラクレア
昨年のキーンランドC勝ち馬で、芝1200mのGⅠでは5、2、3、2着という現役屈指の芝スプリンターです。3代母Coup de Genie(1993年モルニ賞、サラマンドル賞)はMachiavellian(1989年モルニ賞、サラマンドル賞)の全妹という良血。Northern Dancerの血量が多い反面、母母Fountain of Peaceが同血脈を持たない配合のバランスも素晴らしいです。牝馬が調子の良い夏場でもあり、今年も主役の一頭であることは間違いありません。
・サトノレーヴ
芝短距離GⅠ・2着2回のハクサンムーンの半弟。ロードカナロア×サクラバクシンオーの本馬も芝短距離路線で活躍し、父母の組み合わせからも晩成気味の成長曲線を描いています。北米血統のワンペースなスプリンターではないため、キーンランドCの舞台適性も低くありません。別定戦でさらに相手関係は強くなりますが、まだ底を見せていないことから今回も注目の一頭となりそうです。
・ダノンマッキンリー
母ホームカミングクイーンは2012年英1000ギニー優勝馬で、本馬の半姉にはアイルランドの2歳GⅠ馬Shale(2020年モイグレアスタッドS)などがいます。デインヒル系Holy Roman Emperorの影響から早熟性とスピードに優れ、Sadler's Wellsの血を持つことからも洋芝適性は十分。脚が溜れば強烈な末脚を発揮できる馬であることから、序盤の運び方次第で一変まで期待できる素質馬です。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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