新潟芝1600mは“日本最長の直線”だからこそ逃げ先行馬に妙味 東大HCがデータで考察

東大ホースメンクラブ

新潟芝1600mのコースレイアウト,ⒸSPAIA

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コース紹介

今週は新潟芝1600mのコースデータを特集する。2024年8月11日に開催されるGⅢ関屋記念や新潟2歳Sの2重賞がこのコースで行われる代表的なレースとして知られる。

この新潟芝1600mコースについて、枠順、脚質、産駒、騎手の4つの観点からデータ分析をする(使用するデータは2019年8月10日~2024年8月4日の過去5年分)。

まずはコース紹介。向正面直線の真ん中よりもやや2コーナー寄りからスタート。3コーナーまでは550mの直線が続いている(Aコース時)。内回りと外回りの分岐点付近から約1.7mの坂を上り、外回りコースに入る。3~4コーナーのスパイラルカーブに突入し、直線入り口にかけては下り坂となっている。最終直線は日本最長の658.7mで、この部分はほぼ平坦である。


日本最長の直線≠差し、追込有利

新潟芝1600m・過去5年の枠別成績,ⒸSPAIA


<新潟芝1600m・過去5年の枠別成績>
1枠【11-10-10-194】勝率4.9%/連対率9.3%/複勝率13.8%/単回率38%/複回率40%
2枠【17-12-13-195】勝率7.2%/連対率12.2%/複勝率17.7%/単回率81%/複回率50%
3枠【11-17-16-201】勝率4.5%/連対率11.4%/複勝率18.0%/単回率27%/複回率53%
4枠【14-15-16-209】勝率5.5%/連対率11.4%/複勝率17.7%/単回率68%/複回率92%
5枠【22-28-19-200】勝率8.2%/連対率18.6%/複勝率25.7%/単回率72%/複回率88%
6枠【14-16-38-213】勝率5.0%/連対率10.7%/複勝率24.2%/単回率25%/複回率82%
7枠【28-30-13-267】勝率8.3%/連対率17.2%/複勝率21.0%/単回率83%/複回率60%
8枠【29-18-21-283】勝率8.3%/連対率13.4%/複勝率19.4%/単回率54%/複回率74%

最初は枠別成績から見ていく。複勝率を見ると外枠がやや優勢だ。一方、1枠が他に比べて明らかに好走率が低い。単複回収率も低く、人気馬が最内枠に入った場合は疑ってみるのも手だろう。

過去5年の重賞(計10レース)ではさらに外枠有利の傾向。1~4枠【4-2-3-53】複勝率14.5%、複回収率44%に対して、5~8枠【6-8-7-62】複勝率25.3%、複回収率61%となっている。特に、7枠【2-5-1-14】複勝率36.4%、8枠【3-1-2-17】同26.1%が好調だ。

新潟芝1600m・過去5年の脚質別成績,ⒸSPAIA


<新潟芝1600m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【15-17-17-97】勝率10.3%/連対率21.9%/複勝率33.6%/単回率111%/複回率140%
先行【56-53-40-390】勝率10.4%/連対率20.2%/複勝率27.6%/単回率97%/複回率95%
差し【61-62-69-679】勝率7.0%/連対率14.1%/複勝率22.0%/単回率56%/複回率71%
追込【14-14-20-595】勝率2.2%/連対率4.4%/複勝率7.5%/単回率11%/複回率26%

次に脚質別成績について。「日本最長の直線=差し追込有利」というイメージがあるが、道中でペースが緩みやすいからか逃げ先行がやや優勢となっている。ただ、差しも全くダメということはない。前が有利になりやすい他競馬場に比べて、逃げ先行脚質と差しの複勝率差は小さく、逃げ~差しなら勝負になる、といったところだ。注意が必要なのは回収率で、逃げ先行の方が高めとなっている。直線が長い新潟のイメージから、逃げ先行馬の妙味が生まれているようだ。

また、上がり勝負になりやすく、上がり3F最速を記録した馬は【66-35-20-53】勝率37.9%、単回収率233%と抜群だ。過去5年の重賞でも、上がり3F最速の馬は【6-0-1-5】勝率50.0%、単勝回収率277%と強い。そのほか重賞では逃げ馬が【0-3-1-6】複勝率40.0%、複回収率263%にも注目。22年関屋記念で12番人気2着のシュリや23年新潟2歳Sで10番人気2着のショウナンマヌエラなど、逃げ馬は人気の盲点になりやすい。連系の馬券を購入する際は、人気薄でも紐に入れておこう。


1番人気の三浦皇成騎手は信頼度抜群

新潟芝1600m・過去5年の種牡馬別成績,ⒸSPAIA


<新潟芝1600m・過去5年の種牡馬別成績>
ロードカナロア【12-8-11-90】勝率9.9%/連対率16.5%/複勝率25.6%/単回率71%/複回率91%
ディープインパクト【11-9-8-98】勝率8.7%/連対率15.9%/複勝率22.2%/単回率32%/複回率60%
エピファネイア【11-8-4-58】勝率13.6%/連対率23.5%/複勝率28.4%/単回率87%/複回率57%

続いて各種牡馬の産駒別成績について。最多勝はロードカナロア産駒で12勝。特に逃げ先行馬の活躍が目立っており、前走で4角2番手以内だと【3-1-0-9】単回収率316%、複回収率123%と妙味十分だ。20年の関屋記念で逃げて8番人気2着に入ったトロワゼトワルや今年の谷川岳S(L)で道中2番手から勝利を挙げた11番人気メイショウチタンなど、上級条件からも該当馬が波乱を演出。先行力のある馬を中心に狙っていきたい。

2位はディープインパクト産駒。単回収率32%と過剰人気気味で狙い所が難しい。内枠成績が悪く、1~3枠では【2-2-0-38】単回収率15%、複回収率20%と大苦戦している。一方、8枠では【3-1-1-7】勝率25.0%、単回収率115%と優秀で、5~7枠もそれぞれ複勝率25%を上回る。包まれるリスクが小さく、末脚を生かしやすい外枠、特に大外に入った時が狙い目だ。

3位はエピファネイア産駒。新馬戦に滅法強く【8-1-0-9】勝率44.4%、単回収率163%の好成績。期間内の11勝中8勝がここからで、見かけたら必ず押さえておきたい。一方、1勝クラス以上の条件では【0-5-0-28】と勝ち切れておらず、複回収率も26%と低調。新馬戦と未勝利戦を中心に狙っていくのが無難だ。

2024年の関屋記念では、グランデマーレ、タイムトゥヘヴンがロードカナロア産駒、ラインベックがディープインパクト産駒に該当。ジュンブロッサムやメイショウシンタケが該当するワールドエース産駒は【0-2-0-21】複勝率8.7%、ディスペランツァが該当するルーラーシップ産駒は【4-4-7-55】同21.4%となっている。

新潟芝1600m・過去5年の騎手別成績,ⒸSPAIA


<新潟芝1600m・過去5年の騎手別成績>
戸崎圭太【13-4-3-40】勝率21.7%/連対率28.3%/複勝率33.3%/単回率100%/複回率59%
川田将雅【10-3-6-9】勝率35.7%/連対率46.4%/複勝率67.9%/単回率109%/複回率95%
三浦皇成【9-5-3-48】勝率13.8%/連対率21.5%/複勝率26.2%/単回率122%/複回率82%
※集計期間:2019年8月10日~2024年8月4日

最後に騎手別成績について。勝利数トップは戸崎圭太騎手で13勝。1枠では【3-1-0-6】勝率30.0%、単回収率153%とプラス域だ。コースデータでは1枠は割引だが、戸崎騎手の場合は買い要素だ。脚質では逃げ、先行、差しのいずれも好成績でオールマイティさが光る。なかでも末脚を生かす騎乗に長けており、前走で上がり3F最速の馬に騎乗した際は【5-1-0-6】勝率41.7%、単回収率213%と妙味も含め優秀だ。

2位は川田将雅騎手。1~3番人気だと【10-3-6-5】勝率41.7%、複勝率79.2%、単回収率127%、複回収率110%。人気馬をきっちり馬券圏内に導く頼れる存在だ。2、3番人気だと【4-0-3-2】勝率44.4%、複勝率77.8%、単回収率215%で、1番人気を含んだ時よりも回収率が良くなる。やや疑われた上位人気の場合がベストだ。

3位は三浦皇成騎手。OP以上では【3-2-0-5】複勝率50.0%、複回収率114%と好成績を収めている。上級条件でも積極的に信頼していきたい。1番人気に支持された際は【5-0-0-1】勝率83.3%と抜群の安定感を発揮。これは川田騎手【6-3-3-3】同40.0%を大きく上回る数字であることは覚えておきたい。

2024年の関屋記念では、戸崎騎手がジュンブロッサム、三浦騎手がパラレルヴィジョンに騎乗予定。ディスペランツァに騎乗予定のM.デムーロ騎手は【4-7-6-37】複勝率31.5%、ロジリオンに騎乗予定の永野猛蔵騎手は【0-0-0-25】と1度も馬券に絡んでいない。

新潟芝1600mのコースインフォグラフィック,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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