【小倉記念】16番人気ダンスアジョイが最高齢V 真夏の中距離ハンデ重賞を「記録」で振り返る

緒方きしん

小倉記念に関する「記録」,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

3歳馬でも8歳馬でも勝利した角田晃一騎手

今週は小倉記念が行われる。中京開催である今年は、テイエムオオアラシが制した1998年(京都開催)以来となる、小倉競馬場「以外」での小倉記念となる。古くはワカクモ、ラフオンテースといった懐かしの競走馬が制した歴史ある一戦に、どのような新しい1ページが刻み込まれるのか。今回は1986年以降の小倉記念の記録を振り返る。

小倉記念の勝ち馬を世代別に並べると、期間内では3歳が2勝、4歳が12勝、5歳が16勝、6歳が4勝、7歳が3勝、8歳が1勝となる。5歳世代が最も勝利を挙げているだけでなく、6歳以上の活躍も多く見られ、ベテラン勢の飛躍が多い重賞ということが窺える。

3歳馬があげた2勝はナイスネイチャ(1991年)、ヒシナタリー(1996年)によるもの。ナイスネイチャはデビューから2勝目が3歳7月と遅かったものの、続く条件戦も快勝。3連勝を目指して出走したのが小倉記念だった。続く京都新聞杯も勝利し、4連勝を飾ったナイスネイチャは同年の有馬記念で3着と好走。以降、ブロンズコレクターとしての日々を歩み始めた。

ヒシナタリーは3歳というだけでなく、牝馬ながら小倉記念を勝利。春にはフラワーCを制し、そこから忘れな草賞→NHKマイルC→白百合S→宝塚記念という珍しい道のりを歩んだ。7月の宝塚記念4着から挑んだ8月の小倉記念を制すると、9月のローズSも勝利。そのタフネスぶりを見せつけた。宝塚記念からの3戦の鞍上は「牝馬の角田」として知られる角田晃一騎手だった。

一方のベテラン勢も見ていく。7歳で勝利したのは、ロサード(2003年)、ニホンピロレガーロ(2010年)、クランモンタナ(2016年)の3頭。そして最年長で勝利したのが、8歳のダンスアジョイ(2009年)である。こちらも、最年少勝利のヒシナタリーと同じく、角田晃一騎手が鞍上を務めた。

ダンスアジョイは中央デビューするも未勝利で門別に移籍。そこで2勝を挙げると中央に復帰し、ダートを主戦場として活躍。6歳シーズンに、角田晃一騎手とのコンビで中央2勝目をあげると、その次走で久々の芝レースに挑戦して3着と好走。同年には重賞初挑戦も果たし、同騎手を背に京都大賞典、アルゼンチン共和国杯でともに4着と健闘した。以降も善戦はするが、重賞の馬券圏内に手が届かない状況下で迎えたのが、8歳シーズンの小倉記念。前走で13着と大敗していたダンスアジョイは18頭中16番人気だった。

しかし、レースでは内から早めに仕掛けると、そのまましぶとく伸び続け、後続を振り切って勝利した。単勝16番人気、64.7倍はいずれも勝ち馬として期間中トップの記録である。

0.8秒、5馬身差の圧勝劇を演じたマリアエレーナ

ダンスアジョイの勝利は、タイム差なしのハナ差決着。期間内では11回、タイム差なしで決着している(京都開催の1998年を含む)。イクノディクタスやロサード、メールドグラースといった馬たちも、タイム差なしでの小倉記念勝ち馬である。その他、0.1秒差は6回、0.2秒差は7回、0.3秒差は6回と、接戦での決着が多い。

その中で大きくタイム差をつけて勝利した馬をランキングにすると、3位タイが0.5秒差のドリームジャーニー(2008年)、トリオンフ(2018年)で、2位が0.7秒差のダンツミラクル(1989年)、1位が0.8秒差のマリアエレーナ(2022年)。圧勝劇を演じた上位2頭は、いずれも牝馬である。

ドリームジャーニーは2歳マイル王者となって以降は暫く低迷を続けていたが、新しく迎えた鞍上・池添謙一騎手との2戦目である小倉記念で5戦ぶりの勝利。ここでの圧勝から、翌年の宝塚記念、有馬記念の両グランプリ制覇へと繋がっていった。トリオンフは北海道サマーセールにて864万円で落札された馬で、この小倉記念勝利は同年の小倉大賞典に続く重賞2勝目だった。翌年には中山金杯も制したが、屈腱炎で無念の引退となった。その獲得賞金は2億を超える非常に馬主孝行な馬だったとも言える。

ダンツミラクルはあがり最速で勝利をあげた素質馬。引退後も繁殖牝馬として期待されたものの、産駒がいずれも牡馬で、現在はその血は残っていない。マリアエレーナは叔父にワグネリアンがいる良血ぶりと鋭い末脚で期待された牝馬。重賞5度目の挑戦で念願のタイトルを手にしたのが、この小倉記念での5馬身差圧勝劇であった。

舞台が替わる今年は、圧勝劇が見れるのか、それとも大接戦なのか。ベテランvs若馬の構図にも注目しつつ見守りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

《関連記事》
【小倉記念】レースとコースの傾向を分析 浮上したのは鳴尾記念組ディープモンスター
【関屋記念】NHKマイルCの「中団~後方勢」に好データ 舞台適性見込めるディスペランツァに好機
【小倉記念】過去10年のレース結果一覧

おすすめ記事