【関屋記念】NHKマイルCの「中団~後方勢」に好データ 舞台適性見込めるディスペランツァに好機
勝木淳
ⒸSPAIA
新潟が合いそうなディスペランツァ
越後平野に豊かな恵みをもたらす信濃川は全長367kmの日本一の川だ。だが、北アルプスから日本海にそそぐ大河と新潟県民の共生は戦いの歴史でもあった。度重なる水害や地盤沈下に悩まされ、越後の民は江戸時代から信濃川の治水事業に心血を注ぎ、それが昭和47年に通水した関屋分水路にたどり着く。工事着手の昭和39年、新潟競馬場は関屋から現在の新潟市北区笹山に移転した。新潟競馬場は新潟の人々と信濃川との共生にひと役買ったのだ。関屋記念はその歴史を今に伝えている。
そんな関屋記念の有力馬を過去10年分のデータから探っていく。
信濃川のごとく長い向正面と正面直線を使って争われる新潟芝外1600mは、紛れの少ない真っ向勝負の舞台。序盤からスピードに乗り、最後に瞬発力を発揮する。そんな理想的な形を求められるせいか、1番人気【3-1-3-3】勝率30.0%、複勝率70.0%を筆頭に4番人気【4-1-1-4】勝率40.0%、複勝率60.0%まで4番人気以内9勝と大穴一発の機会は少ない。複勝率ベースでも6番人気【0-3-2-5】複勝率50.0%まで。7番人気1勝があるものの、基本は上位人気同士のレース。人気薄が展開を味方につけて激走という回はそう多くない。
出走数こそ多くないが、3歳は【1-0-2-5】勝率12.5%、複勝率37.5%。前走NHKマイルC【1-0-2-4】勝率14.3%、複勝率42.9%。かつ中団より後ろから差した馬は【1-0-2-3】。4コーナー10番手から差して7着に敗れたディスペランツァはデータに合う。5~9着【1-0-1-2】で着順も問題ない。春は阪神芝1600mで1勝クラス、アーリントンC連勝。上がりは33.1、32.4と上がりは古馬相手でもそん色なく、新潟は合いそうだ。時折みせる発馬の遅れさえなければチャンスだろう。もう一頭のロジリオンはパラダイスSこそ人気を裏切ったが、NHKマイルC3着で実績は上。状態面に問題なければ有力だ。
古馬勢は4歳【2-1-2-25】勝率6.7%、複勝率16.7%、5歳【5-6-5-50】勝率7.6%、複勝率24.2%、6歳【2-3-1-26】勝率6.3%、複勝率18.8%と5、6歳が優勢。4歳は降級制度廃止後の19年以降に限っても、【1-0-2-17】勝率5.0%、複勝率15.0%とそこまで数字があがってこない。ただ10年間でみても、4番人気以内だと【2-0-2-6】勝率20.0%、複勝率40.0%。多士済々なマイル戦線に入っても、上位人気に推されるほどの裏づけがある馬なら問題ない。
パラレルヴィジョンは位置取りがカギ
サマーマイルシリーズという視点でみると、米子S1、2着トゥードジボン、ディオがポイントの上積みを狙う。どちらもデータで優位な5歳馬であり、ここも有力と考えてよさそうだ。
前走GⅠ【2-2-4-19】勝率7.4%、複勝率29.6%は、古馬に限れば安田記念【0-2-1-7】複勝率30.0%が狙い目。13着パラレルヴィジョンがここから仕切り直しを図る。ただ、前走安田記念組はNHKマイルCの傾向とは正反対で、先行した馬【0-1-1-1】、後方から進めた馬【0-1-0-6】と先行力を評価したい。パラレルヴィジョンは4コーナー9番手だった。ダービー卿CTのように積極的に運んでくれれば、問題ないかもしれないが、構えて進めるようだと危ないかもしれない。直線が長いコースだが、その分、スローに流れることが多く、逃げ、先行が強い。瞬発力重視のステージは同時に位置取りの優位を生かせる舞台でもある。
本来、主力は前走GⅢ【5-7-4-63】勝率6.3%、複勝率20.3%だが、これは中京記念【3-6-2-32】勝率7.0%、複勝率25.6%が大半を占めるので注意だ。今年の中京記念は小倉芝1800m。過去、同舞台の中京記念経由は【1-0-0-1】。21年中京記念5着ロータスランドが勝ち、同1着アンドラステは8着に敗れた。そうなると、GⅢ組ではエプソムC【1-0-2-11】勝率7.1%、複勝率21.4%が有力だが、エプソムC10着以下は【0-0-0-4】で15着タイムトゥヘヴンに期待するのも厳しそうだ。
となると、サマーマイルシリーズの米子S【1-0-1-8】勝率10.0%、複勝率20.0%か。数字は決してよくないが、米子Sがサマーマイルシリーズになった20年以降は【1-0-1-3】で、22、23年に連続好走中だ。どちらも米子S2着以内なので、トゥードジボン、ディオが候補となる。
今年の米子Sは平坦の京都で行われ、1.31.5と速い時計が出た。新潟マイルにつながりそうな予感がある。レースはトゥードジボンが先手を奪い、序盤600m34.6、800m通過46.6と馬場を差し引けば、スローに近い流れだった。後半800m44.9、上がり33.5と後半が非常に速く、ラスト400mは10.9-11.2。トゥードジボンは好位から迫ったディオに1馬身半差をつけ、完勝した。京都芝1600m【3-0-1-1】のコース巧者で、京都だからこそのパフォーマンスにも映るので、新潟は初出走だということに注意したい。ディオは阪神、京都、中山で勝利しており、コースへの対応力を感じる。2頭の力差は米子Sの結果ほど開いていないと見た。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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