【函館記念】一昨年は馬券内独占のRoberto持ちがとにかく強い チャックネイトはベスト舞台での一戦
坂上明大
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傾向解説
サマー2000シリーズ第2戦・函館記念。洋芝、1周距離1651.8m(Bコース)、梅雨時期など、中央場所とは大きく条件が異なり、ハンデ戦のため能力面も比較的平らに均される一戦。暑さも厳しいため状態面も重要なファクターですが、まずは血統面を中心に函館記念で求められる適性を整理していきます。
日本の主流カテゴリーの中では特殊な適性が求められる函館記念ですが、特に連続開催の最終日に行われる点は大きなポイント。ただでさえ重たい函館の芝がより一層スタミナが求められる重厚な舞台に変化している可能性が高く、前走距離別成績を比較しても2000m未満を使ってきた距離延長馬の成績が非常に悪いことがわかります。
<前走距離別成績(過去10年)>
距離延長【4-5-3-70】勝率4.9%/連対率11.0%/複勝率14.6%/単回収率31%/複回収率64%
同距離【3-1-5-38】勝率6.4%/連対率8.5%/複勝率19.1%/単回収率193%/複回収率121%
距離短縮【3-4-2-21】勝率10.0%/連対率23.3%/複勝率30.0%/単回収率107%/複回収率157%
スレンダーな軽量馬の成績が良いことも同じ理由からで、長距離戦を使ってきたようなスタミナ自慢が穴を開けるのが函館記念の特徴といえるでしょう。
<馬体重別成績(過去10年)>
~459kg【1-2-3-22】勝率3.6%/連対率10.7%/複勝率21.4%/単回収率22%/複回収率81%
460~479kg【3-5-6-32】勝率6.5%/連対率17.4%/複勝率30.4%/単回収率45%/複回収率156%
480~499kg【3-2-0-40】勝率6.7%/連対率11.1%/複勝率11.1%/単回収率68%/複回収率70%
500kg~【3-1-1-35】勝率7.5%/連対率10.0%/複勝率12.5%/単回収率227%/複回収率76%
血統面ではRobertoに注目。同馬はサンデーサイレンスの父であるHaloと同じHail to Reason産駒ですが、Blue LarkspurやSir Gallahad=Bull Dogから強靭なパワーを、母が持つSardanapaleの4×4から豊富なスタミナを継承。よって、瞬発力に優れたHalo→サンデーサイレンス系とは異なったパワーとスタミナに優れた父系を築いています。過去5年の馬券圏内馬15頭中11頭がRobertoの血を内包しており、重馬場で行われた一昨年は馬券圏内を独占。二桁人気馬も複数好走しており、函館記念で最も注目すべき血統といえるでしょう。
<血統別成績(過去10年)>
Roberto【4-5-9-50】勝率5.9%/連対率13.2%/複勝率26.5%/単回収率58%/複回収率136%
ステイゴールド【1-1-4-15】勝率4.8%/連対率9.5%/複勝率28.6%/単回収率35%/複回収率110%
その他ではステイゴールドにも要注目。こちらはHalo→サンデーサイレンス系ではあるものの、同馬自身や産駒が海外で大活躍している通り、日本の主流からはややズレた適性が持ち味の名種牡馬です。スタミナや道悪に優れた適性は函館記念にピッタリで、この特徴は後継種牡馬であるドリームジャーニー=オルフェーヴルやゴールドシップにもしっかりと伝わっています。
血統解説
・ホウオウビスケッツ
名種牡馬キングカメハメハの母であるマンファスを3代母に持ち、母ホウオウサブリナはマンファスの3×2を持つ野心的な配合馬。本馬はマインドユアビスケッツ産駒のスピード馬で、父譲りの先行力と母譲りの底力が持ち味となっています。小回りの中距離戦は得意条件のひとつですが、この条件なら軽い馬場が理想。また、巴賞上位馬はメンバーレベルが上がるのにも関わらず斤量を見込まれる形に。巴賞連対馬は過去10年で【0-0-0-14】で1頭も好走しておらず、函館記念へのローテーションとしては鬼門のレースとなっています。
・サヴォーナ
母テイケイラピッドはその父スニッツェル譲りの大型馬。馬体重530kg台の恵まれた馬格は母親譲りで、力のいる馬場やダートも苦にしないパワーが本馬の持ち味です。ただその分ピュアステイヤーではないため、中距離路線への距離短縮は待ちに待った舞台。注目血統は持っていないものの、条件替わりの今回は非常に楽しみな一戦となりそうです。
・チャックネイト
母ゴジップガールは2009年アメリカンオークス馬で、自身は芝で活躍したもののDynaformer(父Roberto)×Kingmambo譲りのパワーが持ち味。本馬の半兄サトノディードはディープインパクト産駒ながらダート中長距離戦で活躍し、ハーツクライ産駒の本馬も不良馬場のAJCCを制した通り、力のいる馬場の中長距離戦がベストといえるでしょう。函館記念の舞台はピッタリの一頭です。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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