【安田記念】セリフォスは〝ジンクス〟を打ち破れるか 中内田充正厩舎に立ちはだかる逆境データとは
逆瀬川龍之介
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中内田充正厩舎の〝ジンクス〟
中内田充正調教師は今後の競馬界を担うトレーナーの1人。この見解に反論する競馬ファンはほとんどいないだろう。14年に開業して、16年からは常に30勝以上をマーク。21年に初の全国リーディングを獲得すると、22、23年は3位。そして今年も先週終了時点で21勝を挙げて、矢作芳人厩舎、堀宣行厩舎に次ぐ3位につけている。昨年に管理馬のリバティアイランドが牝馬三冠を達成したことは記憶に新しく、中内田厩舎を抜きにGⅠ戦線は語れないと言っても過言ではない。
そして今週の安田記念には厩舎のエース格・セリフォスが参戦する。一昨年のマイルCSの覇者で、昨年の安田記念が2着。その後、夏場に体調を崩して秋の2戦は本領発揮といかなかったが、今年の始動戦となったマイラーズCを2着にまとめて復調を示した。鞍上は引き続き全国リーディングの川田将雅騎手。当然、主役候補の1頭となる。
あえて不安材料を探せば「中内田厩舎」ということかもしれない。誤解を恐れないように言っておくが、厩舎力は栗東屈指。そうでなければ2割前後の勝率をキープできるはずがない。しかし、クラシックを期待される逸材が揃っているからこそ、馬に対して早い時期に、かつ大きなものを要求することになる。その結果、後々になって歪みが出ることが多いのではないか。
JRA・GⅠの年齢別成績が興味深い。
・2歳【4-1-1-5】
・3歳【4-4-3-29】
・4歳【0-3-0-7】
・5歳以上【0-0-1-8】
一目瞭然、若い時ほど好成績だ。確かにプログノーシスのように、4歳以降になっても活躍している馬はいる。しかし、圧倒的な強さで2歳王者に輝いたダノンプレミアムは、古馬になってからGⅠタイトルに手が届かず。また、リバティアイランドも4歳初戦となったドバイシーマクラシックで1番人気に支持されながら、まさかの3着に敗れてしまった。幼稚園や小学校(=2歳)の時から英才教育を施し、東大や京大(=クラシック)に合格者を続々と輩出するトップステーブル。しかし、だからこそ後になって反動が出ている可能性は、少なくともデータからは否定できない。
セリフォスも一昨年のマイルCSを制したが、4歳になってからは5連敗を喫している。ここで久しぶりの勝利をつかみ取り、厩舎に4歳以上としては初のGⅠタイトルを届けることができるか。若き名トレーナーの意地が、ジンクスを吹き飛ばすことを期待したい。
《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。
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