【マイラーズC】11番人気を覆したオースミタイクーン 武幸四郎騎手のJRA史上最短日数の重賞制覇など「記録」を振り返る
緒方きしん
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デビュー翌日に重賞制覇、武幸四郎騎手
今週はマイラーズCが開催される。優勝馬の一覧を見ると、2020年以降はインディチャンプやシュネルマイスターなどが並び、少しさかのぼればダイワメジャーやカンパニーといった名馬もいる。今回は、マイル路線における重要な一戦である、マイラーズCの記録を1986年以降のデータを参照して振り返る。
勝ち馬の単勝オッズを見ると、一桁だったのは26回だった。残り12回が二桁だが、単勝万馬券は飛び出していない。04年マイソールサウンドの10.9倍から96年ニホンピロプリンスの19.5倍まで10倍台が8回と、かなり堅実なオッズ傾向。とはいえ、07年コンゴウリキシオーは25.5倍、87年コンサートマスターは44.1倍と、伏兵評価ながら勝利をあげた馬ももちろんいる。そんななかで優勝馬の最高単勝オッズとなったのは97年オースミタイクーン。単勝52.2倍での勝利だった。
オースミタイクーンは半兄に歴史的名馬ジェネラスがいる超良血馬。骨折などもあり順調とはいえない時期もあったが、97年マイラーズCまでに17戦して8勝と勝率はほぼ5割という成績を残していた。しかし、近3走は10、11、10着と重賞で惨敗。加えて8ヶ月ぶりの実戦ということもあり11番人気と低評価だった。
そんなオースミタイクーンの鞍上はそれまでの8勝のうち7勝を挙げた武豊騎手ではなく、レース前日にデビューを迎えたばかりの弟・武幸四郎騎手だった。武豊騎手は同日の中山メインの弥生賞に出走してランニングゲイルと勝利をあげた。すると、その5分後に発走となったマイラーズCでオースミタイクーンと武幸四郎騎手も勝利をあげ、JRA史上最短記録のデビュー2日目での重賞制覇となった。
1番人気でなくとも4勝をあげた中尾正厩舎
オースミタイクーンは武兄弟の父である武邦彦厩舎の管理馬であり、このマイラーズCは親子での重賞制覇でもあった。武邦彦厩舎にとって、これが唯一のマイラーズC制覇だった。86年以降で当レースを2勝している厩舎は、池江泰寿厩舎、伊藤正徳厩舎、梅田康雄厩舎、西園正都厩舎、橋口弘次厩舎、矢作芳人厩舎で3位タイ。そのうち梅田康雄厩舎はダイタクヘリオス、伊藤正徳厩舎はローエングリン、西園正都厩舎はシルポートによる同一馬での2勝だ。今年だと池江泰寿厩舎のソウルラッシュが出走、2年ぶり2度目の制覇を目指す。
2位の勝ち星をあげているのは、音無秀孝厩舎で3勝。99年にエガオヲミセテ、08年カンパニー、20年インディチャンプで勝利を挙げている。ちなみに牝馬のマイラーズC制覇は、このエガオヲミセテが最後。2006~08年にかけてダンスインザムード、スイープトウショウ、ニシノマナムスメと3年連続で牝馬が2着に入ったものの、以降では11年アパパネの4着が最高着順だ(なお、今年は牝馬の出走はない)。
そして、最も勝ち星を挙げているのは中尾正厩舎。87年にコンサートマスター、88年にミスターボーイで連覇し、95年ビッグショウリ、98年ビッグサンデーと同馬主(ビッグ)で2勝を挙げた。特筆すべきはその人気。人気馬が勝利する傾向にあるマイラーズCで、中尾正厩舎の勝ち馬は9番人気のコンサートマスターにはじまり、4番人気ミスターボーイ、5番人気ビッグショウリ、3番人気ビッグサンデーといずれも1番人気ではない。特にコンサートマスターは10頭立ての9番人気で、かなりの低評価を覆したことになる。
今年はセリフォス、ソウルラッシュら本命サイドが勝利するのか、それとも伏兵評価の激走があるのか。注目したい。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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