【中山記念】差し追い込み馬は苦戦必至 データで導く「過信禁物の注目馬」

藤川祐輔

2024年中山記念の過信禁物な注目馬,ⒸSPAIA

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上半期のGⅠへ繋がる伝統の一戦

2月25日、中山競馬場では中山記念(GⅡ)が行われる。時に「スーパーGⅡ」とも呼ばれる伝統ある一戦で、今年もGⅠ戦線を見据える有力馬が数多く出走する。

近年の傾向を見ると、1番人気馬が過去10年で【3-0-0-7】(複勝率30.0%)と振るっていない。実績馬に絶対の信頼は置きにくく、特に人気を集める馬の取捨選択には注意したい。今回は過去10年(14~23年)における当レースのデータを基に、「過信禁物の注目馬」を導いていく。

前走469kg以下の馬は1800mのJRA重賞勝利歴が必須

前走馬体重別成績,ⒸSPAIA


前走の馬体重別に成績をみると、470kg以上だった馬が【8-9-9-71】勝率8.2%、連対率17.5%、複勝率26.8%と好相性だ。馬券に絡んだ馬の大半がこちらの組に含まれている。これに対して、前走馬体重が469kg以下だった馬は【2-1-0-21】勝率8.3%、連対率12.5%、複勝率12.5%と苦戦気味である。

中山芝1800mは急坂を二度駆け上がるタフな条件であり、これを乗り越えるには相応のパワーが要求される。469kg以下の比較的小柄な馬には向かないコースで、データにもそれが表れている。

前走馬体重469kg以下・1800mのJRA重賞実績別成績,ⒸSPAIA


また、この組から好走した3頭は全て、過去に1800mのJRA重賞勝利実績があった。同実績があった馬は【2-1-0-3】勝率33.3%、連対率、複勝率50.0%と抜群の成績であるのに対し、これがない馬は【0-0-0-18】馬券圏内に1頭も入っていない。

馬体重が軽い馬でも、同距離での実績があれば当レースでの好走は十分に可能なようである。反対に、この条件から外れる馬は1頭も好走歴がないことから、469kg以下と小柄かつ1800mのJRA重賞勝利歴がない馬は評価を下げるべきだろう。

前走3角10番手以下は苦戦傾向

前走3角位置別成績,ⒸSPAIA


前走の3角位置に着目すると、9番手以内だった馬が【8-8-7-63】勝率9.3%、連対率18.6%、複勝率26.7%と好成績を残している。一方、3角10番手以下だった馬は【1-1-1-21】勝率4.2%、連対率8.3%、複勝率12.5%と低調だ。

当レースは開幕週に行われるため、馬場の内側をロスなく立ち回る馬が有利である。差し、追込脚質の馬はコーナーで外を回らざるを得ず、直線距離も短いことから先行馬を捉えることは簡単ではない。

このデータには有力馬も多く含まれており、中でも18年ペルシアンナイトは5着、17年アンビシャスは4着と、1番人気の支持を裏切る結果となっている。後方からレースを進める馬は、人気馬であっても重い印は打ちにくい。

前走・有馬記念の馬には要注意

前走レース別成績ⒸSPAIA


各馬のローテーションに着目すると、中山金杯からの転戦組が【3-1-1-4】勝率33.3%、連対率44.4%、複勝率55.6%と抜群の成績を残している。また、今年のメンバーで特に多い前走マイルCS組も、【1-0-2-5】勝率、連対率12.5%、複勝率37.5%と好相性だ。

これに対して、前走が有馬記念だった馬は【1-0-0-6】勝率、連対率、複勝率14.3%と振るっていない。古馬中長距離路線では最もメンバーレベルが高いレースの1つであるが、意外にも過去10年で好走馬は1頭しかいない。

当レースはマイルを主戦場としている馬の出走も多く、中長距離のレースと比べると相対的にペースが速くなりやすい。過去10年では1000m通過60秒以下が7回で、それ以上を要したのは稍重馬場だった14年と15年、あとは17年のみである。

有馬記念からの転戦馬は700mの距離短縮となることから、追走に苦労して力を出し切れていないと推察できる。特に今年はフルゲートでの実施が濃厚であり、スローペースとはならないだろう。前走で有馬記念を走っていた馬には注意したい。

データで導く「過信禁物の注目馬」

ここまで紹介したデータをまとめると、当レースにおける不安要素は以下の通りである。

・前走馬体重469kg以下、かつ1800mのJRA重賞勝利実績なし
・前走3角10番手以下
・前走有馬記念

これを踏まえて、今回はソールオリエンスを「過信禁物の注目馬」として挙げる。

昨年の皐月賞馬であり、京成杯と合わせて中山コースで重賞2勝を挙げている。しかし、この2走は共に馬場の内が荒れた状態で、外を回して差し脚を伸ばすには絶好の条件だった。一転して今回は開幕週の良好な馬場状態であり、後方からレースを進める当馬に有利な条件とは言い難い。

また、1800mの距離は新馬戦以来であり、この時は前半1000mが65秒の超スローペース。近2走は3000、2500mと距離の長いレースを使っていることもあり、一気の距離短縮となれば道中で脚が溜まらず、直線で伸びを欠くことも懸念される。

さらに、今回挙げた3つの不安データにも全て該当している。上位人気になることは間違いなく、馬券的な妙味も考えれば積極的に買い目には入れられない。

《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれ、新進気鋭の若手ライター。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。以前は別媒体での執筆を行っていたが、よりデータを生かした記事を書きたいと考えSPAIA競馬への寄稿をスタート。いつの日か馬を買うのが夢。

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