【AJCC】スタミナや底力勝負で輝くRobertoの血 機動力に優れコース実績あるボッケリーニ

坂上明大

AJCCの注目血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

中山芝2200m(外)を舞台に行われるAJCC(アメリカジョッキークラブカップ)。特殊なコースレイアウトで施行されるため、中山芝2200m巧者には要注意の一戦です。同コースで行われる重賞競走はセントライト記念、AJCC、オールカマーの3レース。古馬重賞の2つはともに別定戦のためリピーターが走りやすく、素直にコース実績を信頼していい舞台といえるでしょう。

◆中山芝2200m重賞(※AJCCを含む)の複数回好走馬
ヴェルデグリーン:2013年オールカマー1着、2014年AJCC1着
ミトラ:2015年AJCC2着、2015年オールカマー3着
ゼーヴィント:2016年セントライト記念2着、2017年AJCC2着
タンタアレグリア:2017年AJCC1着、2017年オールカマー3着
ミッキースワロー:2017年セントライト記念1着、2018年AJCC2着、2019年オールカマー2着
ダンビュライト:2018年AJCC1着、2018年オールカマー3着
ステイフーリッシュ:2020年AJCC2着、2020年オールカマー3着
ラストドラフト:2020年AJCC3着、2021年AJCC3着

血統面での注目はSadler’s Wells。もともと後半の持続力勝負になりやすいコースですが、AJCCは連続開催の最終日にあることから、よりスタミナや底力が必要な舞台となっています。そこで強さを発揮するのが欧州で最大勢力を築くSadler’s Wellsであり、過去10年で5頭の勝ち馬を輩出するなど圧倒的な実績を残しています。

また、同様の理由からRobertoも注目血統のひとつ。元来、Sadler's WellsとRobertoは好走条件が似ており、AJCCにおいても両馬の馬力やスタミナは大きなアドバンテージとなっています。特に、Roberto系ではシンボリクリスエス→エピファネイアなどが出るKris S.系よりもブライアンズタイムSilver Hawk、リアルシャダイなどのスタミナ系統の方が強さを発揮するため、Roberto系の分類にも注目してみるといいでしょう。

日本の最大勢力であるサンデーサイレンス系ではステイゴールドに注目。こちらも、このレースに限らずSadler's WellsやRobertoとは好走条件が似ているため、一昨年11番人気で2着と激走したマイネルファンロン(父ステイゴールド)など複数の穴馬が好走しています。

ちなみに、昨年は父モーリス(Silver HawkとSadler's Wellsを内包)のノースブリッジが1着、Nureyev≒Sadler's Wellsの5×4を持つエヒトが2着、ゴールドシップ産駒かつ母母父ブライアンズタイムのユーバーレーベンが3着という血統傾向通りの決着となりました。

 血統別成績(過去10年),ⒸSPAIA


血統解説

・モリアーナ
4代母Burghclereに遡る名牝系。父はRoberto系エピファネイアですが、サンデーサイレンスの4×3やKris S.≒Habitatの3・5×5など父の瞬発力源を刺激した配合形で、トップスピードに乗った時の爆発力は世代屈指のモノを持っています。その分、適性的には主流条件向き。脚の使いどころが難しい馬でもあるだけに、1番人気では買いづらいタイプといえるでしょう。

・ボッケリーニ
2015年最優秀4歳以上牡馬・ラブリーデイ(2015年宝塚記念、天皇賞秋)の全弟。兄同様に本馬も機動力に優れ、舞台を選ばず安定したパフォーマンスを発揮できるのが大きな強みです。薄くではありますが、母母母父にリアルシャダイの血を持つ点も魅力。本レースでも2022年に3着と好走しており、久々の中山芝2200m戦でも楽しみな一頭です。

・チャックネイト
母ゴジップガールは2009年アメリカンオークスの勝ち馬。その父はブライアンズタイムと血統構成が酷似するRoberto系Dynaformerで、AJCCと相性の良い血を持つ点は高く評価できます。ただ、父ハーツクライはいまだ中山芝2200m重賞の勝ち馬を出せておらず、本馬も下級条件でワンパンチを欠く結果に。堅実なタイプではあるだけに、単系よりも複系の馬券で狙いたい一頭です。


2024年AJCC出走馬の血統と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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