【阪神JF】前走距離、キャリア数、新馬戦の結果で明暗 データで導く「過信禁物の注目馬」

藤川祐輔

2023年阪神ジュベナイルフィリーズ、過信禁物の注目馬イメージ,ⒸSPAIA

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クラシックへと繋がる2歳女王決定戦

12月10日、阪神競馬場では阪神JF(GⅠ)が行われる。過去10年の当レースでは、1~3番人気の馬が【7-6-3-14】(複勝率53.3%)と標準ぐらいの数字だが、各馬、当レースまでの出走数が少なく能力比較が難しい2歳戦とあって、下馬評が覆ることも少なくない。特に上位人気に推される馬については、現時点での実績だけに頼らず、様々な点から精査すべきだ。

今回は過去10回(13~22年)のデータを基に、「過信禁物の注目馬」を導いていく。


距離延長組は苦戦傾向

前走距離別成績,ⒸSPAIA


まず注目するのは、前走距離に関するデータである。前走で1600m以上のレースを使っていた馬が【7-9-6-73】勝率7.4%、連対率16.8%、複勝率23.2%と良好であるのに対して、前走が1500m以下だった馬は【3-1-4-75】勝率3.6%、連対率4.8%、複勝率9.6%と数字が落ちている。

クラシックを見据えた素質馬は1600m以上のレースを選択するケースが多く、1500m以下のレースは相対的にレベルが落ちる。また、精神的に幼さが残る若駒となれば、距離延長によって折り合いを欠くケースもある。もちろん距離延長組からも好走馬が出ているため一概には言えないが、全体の傾向として同距離、もしくは距離短縮の馬が有利である点は頭に入れておきたい。


キャリア4戦以上の馬は不振

キャリア別成績,ⒸSPAIA


出走馬のキャリア別成績に着目すると、これまでの出走数が3戦以下だった馬は【10-9-10-97】勝率7.9%、連対率15.1%、複勝率23.0%となっており、馬券圏内に好走した馬のほとんどがこの組に含まれている。一方で既に4戦以上を経験していた馬は【0-1-0-51】で勝ち星なし、複勝率1.9%と全く振るっていない。

キャリア4戦以上の組にはナムラクレア(21年5着)、クロコスミア(15年8着)といった、後にGⅠで好走する馬も含まれていた。馬体が完成しきっていない2歳馬にとって、レースを使うことによる負担は小さくない。少ないキャリアで賞金を加算し、フレッシュな状態で当レースに臨む馬が優勢なのが、データにも反映されている。キャリア4戦以上からは極端に成績が落ちているだけに、該当馬を買い目に入れることは避けたい。


新馬戦での結果は要チェック

新馬戦での着差別成績,ⒸSPAIA


最後は新馬戦での結果から、当レースの傾向を読み解いていく。新馬戦で勝利した馬、もしくは着差が0.3秒差以内であった馬は【9-9-9-112】勝率6.5%、連対率12.9%、複勝率19.4%と上々の成績を収めていた。

一方、新馬戦で0.4秒差以上の差をつけられていた馬は【1-1-1-36】勝率2.6%、連対率5.1%、複勝率7.7%と低調。シェーングランツ(18年3番人気4着)、デンコウアンジュ(15年2番人気7着)といった人気馬も、この組に属していた。

世代上位の素質馬が集結する当レースでは、能力の高さと仕上がりの早さの両方が要求される。デビューの段階から高いパフォーマンスを発揮できていた馬が結果を残しやすい舞台であり、データにも同様の傾向が表れている。新馬戦で0.4秒差以上で敗れた馬は、評価を下げるべきだ。


データで導く「過信禁物の注目馬」

ここまでに紹介したデータをまとめると、当レースにおける不安要素は以下の通りである。

・前走1500m以下
・キャリア4戦以上
・新馬戦で0.4秒差以上の負け

これらを踏まえて、今回はコラソンビートを「過信禁物の注目馬」として挙げる。

前走の京王杯2歳Sでは牡馬相手に勝利しており、今回は上位人気が想定される。しかし2~4着馬が人気薄だったこともあり、現時点でレベルの高い一戦だったとは言い難い。また、レコードタイムでの勝利は見事だが、反動が気がかりだ。初の関西輸送である点も含めて、状態面には不安が残る。今回紹介した不安データにも全て該当しているだけに、馬券の軸に据えることは避けたい。

《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれ、新進気鋭の若手ライター。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。以前は別媒体での執筆を行っていたが、よりデータを生かした記事を書きたいと考えSPAIA競馬への寄稿をスタート。いつの日か馬を買うのが夢。

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