【東スポ杯2歳S回顧】残り1000mから11秒台連発 厳しい流れを制したシュトラウスの課題

勝木淳

2023年東京スポーツ杯2歳ステークス、レース結果,ⒸSPAIA

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スキのない流れ

サウジアラビアRC3着シュトラウスの勝利によって、同レース優勝馬のゴンバデカーブースの評価がひとつ高まった。次走がGⅠであっても1番人気濃厚だろう。クラシックへ向けた戦いは半ば勝ち抜き戦であり、走らなくても評価が高まることもある。それが過剰なのか、その通りなのかは現時点ではわからないが、現状、事実だけを積み重ねれば、ゴンバデカーブースの優位は動かない。

東京芝1800mという舞台は力関係を推し量るのに絶好の舞台だ。小細工不要の末脚比べになりやすく、展開を味方につけられる要素は少ない。

2023年サウジアラビアRC(前後半800m46.9-46.5、1.33.4)
12.2-11.1-11.6-12.0-12.3-11.7-11.2-11.3

2023年東京スポーツ杯2歳S(前半1000m59.1、後半800m47.4、1.46.5)
12.3-11.2-11.8-12.0-11.8-11.6-11.7-11.7-12.4

ラップを比べると、前半はほぼ同じペースで進むも、今年の東スポ杯2歳Sは中盤でペースの緩みが入っていない。逃げたテリオスルルは、3コーナー付近でも速度を落とさず入っており、結果的に残り1000mから11秒台が続く持久力戦になった。このラップ構成は先月の毎日王冠に近い。

2023年毎日王冠(前半1000m59.5、後半800m45.8、1.45.3)
12.5-11.5-12.0-11.9-11.6-11.7-11.4-11.3-11.4

数字を並べれば、さすがに古馬のGⅡともいえるが、序盤600mは東スポ杯2歳Sの方が速く、いかにテリオスルルが突っ込んで入ったかがわかる。前半でつけた勢いを殺さずに回ってきた印象で、2歳戦でこうなれば、後ろも末脚を削られていく。テリオスルルの意図はそこにあったが、自身も力尽きてしまった。前半が厳しかったため、後ろも脚を溜めきれず、逃げ馬も厳しくなれば、当然ながら出番は好位にいた馬たちに限られる。


血統の傾向も気にしつつ

シュトラウスはサウジアラビアRCと同じく、序盤からかなり行きたがっていた。J.モレイラ騎手が必死になだめて末脚を残せはしたが、最後の200mを12.4とかかっており激走だったことが想像できる。

ブルーメンブラットの仔は毎年、POGでも人気になる。重賞を勝ったので期待は膨らむところだが、この血統は気性が難しい面もありコンスタントに出走できない産駒もいる。その辺の血統面の難しさはシュトラウスの序盤での走りなどにも見え、今後は自分との戦いになりそうだ。母も3歳はじめは勝ち切れない面があり、そこから徐々に力を発揮し5歳秋のマイルCSではインから差し切った。そういった血統面の下地を頭に入れつつ、今後は見守っていこう。

マイル戦のような流れから最後に時計を要したように、どの馬にも比較的厳しく、後ろから速い脚を使いにくいレースだった。これを頭に入れて2着シュバルツクーゲル、3着ファーヴェントを評価しよう。

テリオスルルをかわし、先に抜け出したシュバルツクーゲルからはいかにもキズナ産駒の牡馬らしい我慢強さを感じた。強い競馬をしたのは間違いないが、それはもっとも厳しい競馬をしたことと同義になる。次走は慎重に取捨したいところだ。母ソベラニアはドイツオークス2着馬で、キズナとの組み合わせは少し重そうな印象があるも、その分、このペースと先行策で血統の良さを生かした。兄弟はゼーゲン、シュヴァルツリーゼなど、順調にレースに出走できない面があり、高速馬場には不安があった。シュトラウスと同じく、無理に使ってこない可能性も視野に入れておこう。

ファーヴェントはスローの新潟新馬戦から一転した厳しいレースをよく我慢できた。母トータルヒートは芝ダート兼用の短距離型で、高速決着は得意ではなかった。父がハーツクライなので、距離の守備範囲は広そうだが、出走馬のレベルが高いスローペースの競馬だと、切れ味で劣る可能性はある。今回はラスト200m12.4の展開が味方した。厳しい流れなら話は別で、少し時計を要する冬の馬場ならば面白そうだ。


2023年東スポ杯2歳S、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。

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