【ファンタジーS回顧】3連単230万馬券の大波乱もフロックと侮るなかれ 歴代2位の好時計でカルチャーデイが重賞V
SPAIA編集部
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2歳重賞史上3位の高配当
2013~2022年の阪神JFにおいて、ファンタジーS組の成績は【2-0-2-31】。関西圏の前哨戦でありながら、本番での連対はダノンファンタジー、レシステンシアのわずか2例しかない。実力がハッキリ出る東京コースで本番と同じ1600mを経験できるアルテミスSが優先される、これが最近の風潮だ。その陰でファンタジーSは年々短距離色が強くなり、そして混戦が加速している。
それを反映するかのごとく、今年のファンタジーSも1番人気セントメモリーズが単勝5.5倍という割れたオッズ。そして結果は15番人気のカルチャーデイが好位抜け出しから勝利、2着9番人気ドナベティ、3着12番人気シカゴスティングと続き、3連単は230万6370円という大波乱の決着になった。
この配当はJRAの2歳重賞としては史上3位の記録。1位は12年阪神JF(ローブティサージュ)の304万7070円、2位は昨年ホープフルS(ドゥラエレーデ)の246万6010円だから、GⅠを除くと最高額にもなる。
もっとも今年のメンバーは、距離もコースも相手関係も全く異なる戦績を歩んできた面々がフルゲート18頭を埋め、確たる主役は不在。こういう高配当にも不思議と納得感すら覚える。難解な一戦だった。
勝ち時計1:20.4は優秀
レースは好スタートを決めたシュークリームを内から制してピューロマジックがハナ。600m通過34.1秒もまずまずのハイペースだが、その次区間11.1が速かった。コーナーでこれだけ速いラップを刻まれると、外を回った馬たちは脚が溜まらない。
勝ったカルチャーデイは先行2頭から少し離れた、インの4番手を追走。自身はオーバーペースにならないギリギリの塩梅であり、理想的な位置取りだった。そこから4コーナーは最内を通って直線入り口で外に切り返す芸術的な運び。残り200m付近で先頭に立つと、内から追い上げる各馬をしのぎ切った。
15番人気の低評価、メンバー的にもうひとつだったなかの勝利で「フロック」と片付けてしまいそうだが、それはちょっと待った。勝ち時計1:20.4は京都開催のファンタジーSとしては歴代2位の時計(阪神代替含めると3位)。2006年アストンマーチャン(1:20.3)に0.1秒差と迫る走りだった。
思えば昨年のこの週、単勝10番人気で京王杯2歳Sを制したオオバンブルマイもその後アーリントンCを勝ち、このほどオーストラリアのザ・ゴールデンイーグルを勝って5億円超の1着賞金を手にした。戦前の人気がどうだろうと、レース内容はそれに惑わされず評価したいものだ。ただ、冒頭の通り阪神JFには直結しないレース。暮れではなく、来年のフィリーズレビューや葵S戦線で期待がかかる。
2着ドナベティは道中勝ち馬の背後を追走し、4角、直線も一貫して内から追い上げてきた。夏に1500mのクローバー賞を先行し、最後止まって5着がある経緯も踏まえると、距離はここが精いっぱいだろう。
3着シカゴスティングもそのドナベティと併せるような形で内から脚を伸ばした。上手く乗られた結果であり、内容的な強調点はあまりないが、上位2頭よりは距離に融通が利きそうだ。
ほか、速力を見せた8着ピューロマジックは1200m戦に使ってきたら見直したい。2番人気10着ワイドラトゥールは最後方待機から上がり33.6秒の脚を使うも、勝ち馬から0.7秒差。一言で言えば後ろすぎた。母はフローラS2着ワイドサファイア、兄にかしわ記念勝ち馬ワイドファラオがいる血統で、父はカリフォルニアクローム。もう少し長い距離、あるいはダートで面白い。
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