【天皇賞(秋)】前走圧勝のプログノーシスに不安なデータ データで導く「過信禁物の注目馬」

藤川祐輔

2023年天皇賞(秋)、過信禁物の注目馬像,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

豪華メンバー集う中距離王者決定戦

10月29日、東京競馬場でGⅠ天皇賞(秋)が行われる。当レースは数あるGⅠの中でも屈指の歴史ある一戦。今年も秋の中距離王者を決める戦いに相応しい、そうそうたるメンバーが集まった。

レース傾向を見ると、過去10年で1番人気馬が6勝、複勝率も90%とかなり高く、堅い決着が多い印象だ。こういったレースこそ人気馬を精査し取捨選択をした上で、買い目を絞りたい。今回は過去10年(2013~22年)のデータを基に「過信禁物の注目馬」を導いていく。


前走GⅡ組はGⅠ好走歴を要確認

天皇賞(秋)、前走クラス別成績,ⒸSPAIA


まず注目したいのが、前走クラス別成績だ。過去10年では、前走GⅠ組(海外含む)が【5-7-4-24】勝率12.5%、連対率30.0%、複勝率40.0%と良好だ。一方で前走GⅡ組は【5-3-6-88】勝率4.9%、連対率7.8%、複勝率13.7%と低調な成績となっている。今年の登録メンバーは全て前走がGⅠ、GⅡのいずれかだが、母集団のレベルが高いGⅠからの転戦組を高く評価するべきだ。

前走GⅠ組が優勢なのは間違いないが、好走馬の数を比べると前走GⅡ組も遜色はない。ここで前走GⅡ組の取捨を考えるべく取り上げたいのが、国内GⅠでの好走歴の有無による成績である。

天皇賞(秋)、前走GⅡ組の国内GⅠ実績別成績,ⒸSPAIA


前走GⅡ組のうち、過去に国内GⅠで3着以内に好走した実績のあった馬は【3-1-6-40】勝率6.0%、連対率8.0%、複勝率20.0%とまずまず。これに対して国内GⅠで3着以内の実績がなかった馬は【2-2-0-48】勝率3.8%、複勝率7.7%と好走率が大きく下回る。

日本競馬の中でもトップクラスのレースだけに、過去にGⅠで実力を証明している馬が優勢のようだ。特に前走GⅡを使っていた馬は、過去のGⅠでの好走歴をしっかりと確認しておきたい。


ディープインパクト系の人気馬が苦戦傾向

天皇賞(秋)、種牡馬系統別成績,ⒸSPAIA


次は血統に関するデータを紹介する。単勝オッズが9.9倍以下の人気馬に限ると、キングマンボ系が【4-0-1-1】勝率66.7%、複勝率83.3%と圧倒的な好成績を収めていた。ロベルト系も【2-0-0-2】勝率50.0%と悪くない。

しかし、サンデーサイレンス系は【2-5-3-13】勝率8.7%と意外に勝ち切れておらず、なかでもディープインパクト系は【0-5-1-9】勝率0.0%、連対率33.3%、複勝率40.0%と人気馬に限定した数値としては物足りない。府中とは好相性の血統に思えるが、勝ち馬が1頭も出ていない点には注意が必要だ。

天皇賞(秋)、ディープインパクト系・マイル重賞実績別成績,ⒸSPAIA


この「単勝オッズが9.9倍以下のディープインパクト系」の成績をさらに深堀りするために着目したいのが、過去のマイル重賞での実績である。実はマイル重賞で勝ち鞍があった馬に限定すると、【0-4-1-0】と全ての馬が馬券圏内に好走していた。反対にマイル重賞での勝ち鞍がなかった馬は【0-1-0-9】勝率0.0%、連対率、複勝率10.0%とほとんどが凡走している。

後者の組で唯一馬券に絡んだのはコントレイル(21年2着)だが、捉え方を変えれば「1番人気に支持された無敗三冠馬」ですら2着に敗れている。データ上でも極端に成績が分かれているだけに、マイル重賞での勝利実績がないディープインパクト系は上位人気でも評価を下げたい。


データで導く「過信禁物の注目馬」

ここまでに紹介したデータをまとめると、当レースにおける不安要素は以下の通りである。

・前走GⅡ、特に国内GⅠで3着以内の実績なし
・マイル重賞勝ち鞍のないディープインパクト系種牡馬の産駒

これらを踏まえて、今回はプログノーシスを「過信禁物の注目馬」として挙げる。

前走の札幌記念で2着に4馬身差をつけて快勝しており、今回も注目を集める存在だ。だが前走は洋芝、かつ時計のかかる稍重馬場での結果であり、当レースの舞台条件とは直結しない。意外にも東京でのレースは今回が初であり、関東圏への長距離輸送も含めて未知の要素といえる。

また、春にはクイーンエリザベスⅡ世カップ(香・GⅠ)で2着に好走しているが、この時の3着以下の馬たちは日本馬、外国馬含めて後のレースで1度も3着以内に好走できていない。真の一線級との戦いは今回が初めてであり、絶対能力の差でGⅠの壁に跳ね返される可能性も否定はできない。紹介した2つの不安データにも該当していることから、馬券の中心に据えるべきではないだろう。

《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれ、新進気鋭の若手ライター。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。以前は別媒体での執筆を行っていたが、より「予想」にフォーカスした記事を書きたいと考えSPAIA競馬への寄稿をスタート。いつの日か馬を買うのが夢。

《関連記事》
【天皇賞(秋)】イクイノックス、ドウデュースは条件次第で消し! ハイブリッド式消去法
【天皇賞(秋)】単勝1倍台で制したのはアーモンドアイのみ 秋盾の「記録」を振り返る
【天皇賞(秋)】過去10年のレース結果一覧

おすすめ記事