【シリウスS回顧】ハギノアレグリアスがJRA重賞初V キズナ産駒の買いどころとは
勝木淳
ⒸSPAIA
裾野が広いキズナ産駒
栗東に滞在し、中距離挑戦を目論んでいたレモンポップがハンデ61キロを理由に回避した。登録馬のなかでGⅠ好走は3歳キリンジのJDDぐらいで、例年通りのレベルでは61キロはやむを得なかったか。レモンポップが美浦に戻り、シリウスSもこれまでと同じく、重賞戦線に食い込みたい馬たちによる争いに落ち着いた。結果は出走メンバーでは実績上位のハギノアレグリアスが勝ち、JRA重賞初勝利を飾った。管理する四位洋文調教師もJRA重賞初勝利となった。さらにいえば、キズナ産駒はこれがJRAダート重賞初制覇でもある。どちらも意外といえば意外な気もする。
キズナ産駒は初年度がデビューした2019年6月から9/24までJRA491勝をあげた。芝291勝に対し、ダートは187勝(ほかに障害13勝)と芝ダート兼用で守備範囲の広さによって生産者や馬主から高く評価されている。毎日王冠から米国遠征を控えるソングラインは5歳春に芝GⅠ・2連勝と成長力もある。キズナは父ディープインパクトと比べても色々な面で裾野が広い。
優等生的存在のキズナ産駒だが、ちょっとした癖の強い面もある。ソングラインが関東から出現したので、印象が薄いかもしれないが、キズナ産駒は関東馬116勝、関西馬375勝と西が強い。東の出走回数1386回、西3457回と分母が倍以上違うのに、勝率は東8.4%、西10.8%と確率も西が上回っている。鍛えて強くする関西のスタイルが合うようだ。
2、8枠にツボがある
もうひとつ、枠番別成績では勝率10%以上は2、3、5、7、8枠だが、このうち2枠と8枠は単勝回収値160、139%と極端に高い。産駒デビューから2、8枠のキズナ産駒の単勝をベタ買いすれば、ひと儲けできた。なぜ、2枠と8枠で穴を出すのか。これを理由づけて説明するのは難しく、データがそう語っているとしかいえない。それでも乗るのかどうか。そこは個人の判断だろう。
ダートに限ると、2枠の単勝回収値は77%と下がるので、芝の2枠に限ってもいい。なお、芝の2枠は218%もある。一方、8枠はダートも132%と高いままで、勝率も11.2%と高水準だ。芝の8枠も146%と高いが、勝率がやや下がる。芝が2枠なら、ダートは8枠。これがキズナ産駒を買うコツではないか。
で、ハギノアレグリアスはダート8枠のキズナ産駒だった。レース数が少ない影響もあるが、阪神ダート2000mで8枠に入ったキズナ産駒は【2-0-1-0】と凡走がない。この3頭はいずれも別々の馬で、特定の馬がつくった数字でもない。参考までにほかでは中山ダート1800m【5-1-0-9】が優秀なので、12月まで忘れないでほしい。
歯がゆい状況が続くヴァンヤールの適性
ハギノアレグリアスは6歳馬だが、キャリアはわずか15戦しかない。2歳秋と3歳秋に長期休養があり、4歳シーズンは1度も出走していない。ダート【7-4-0-3】という安定感はキズナ産駒らしさでもあり、四位厩舎はじめ関係者の的確なジャッジが作った数字ともいえる。今年は東海S2着をはじめ、5走して崩れたのは帝王賞4着のみで堅実だ。ようやくハギノアレグリアスが完成の域に入ったとみたい。この先はさらにワンランク上の戦いに入っていくことになるが、どこまで通用するか楽しみだ。
2着はダート2戦目のアイコンテーラー。初ダートのBSN賞は好位から1:50.8の好時計勝ちで、その力を重賞でも証明した。いい位置でしっかり流れに乗り、4コーナー先頭の形はいかにもダートが合う。今回は最後200m13.0と脚が上がってしまい、ハギノアレグリアスに捕まったが、これは距離の影響だろう。ダートなら1800mのオープンも重賞もそれなりに用意されている。もうひと花咲かせてほしい。
3着ヴァンヤールは3月名古屋城Sから【0-2-3-0】と歯がゆい成績が続く。あとワンパンチ足りず、今回のようにうまく流れに乗れてもどうしても決め手で見劣ってしまう。JRA重賞でもっとも着差が小さかったのは、4月阪神のアンタレスSで、重馬場1:49.6だった。プロミストウォリアがつくるハイペースの高速決着だったことを考えると、未出走の東京ダート1600mに適性があるかもしれない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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