【スプリンターズS】フォーティナイナーの血が大活躍 内枠を引けば期待大のウインマーベル

坂上明大

2023年スプリンターズS、傾向と血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

秋のGⅠシーズン第1戦、スプリンターズS。サマーシリーズ組や3歳勢の潜在能力、マイル路線との力関係など、既存勢力との比較が予想の大きなポイントとなる一戦です。本記事では血統面を中心に、スプリンターズSのレース傾向を整理していきます。

まず押さえておきたいポイントは内枠有利という点。短距離戦はゲートを出たなりに隊列が決まってしまうため、スプリンターズSに限らず枠順の影響を受けやすい傾向にあります。特に外ゲートに入る11番枠から外は不利が明確で、新潟開催を除く過去10年で馬券圏内に入った4頭中3頭は3番人気以内、残り1頭は超ハイペースを最後方から追い込んだアウィルアウェイというように、実力馬か展開が向いた馬しか好走できていないというのがスプリンターズSの大きな特徴です。

馬番別成績(過去10年 ※新潟開催を除く),ⒸSPAIA


<馬番別成績(過去10年 ※新潟開催を除く)>
1~5番【3-3-5-34】勝率6.7%/連対率13.3%/複勝率24.4%/単回収率66%/複回収率136%
6~10番【5-4-3-32】勝率11.4%/連対率20.5%/複勝率27.3%/単回収率28%/複回収率78%
11番~【1-2-1-50】勝率1.9%/連対率5.6%/複勝率7.4%/単回収率17%/複回収率27%

血統面ではフォーティナイナーの血が大活躍。ただ、これはスプリンターズSに限ったことではないです。高松宮記念も含めた近年の日本の芝スプリント路線を牽引する血統と言っても間違いではないでしょう。スウェプトオーヴァーボード、アドマイヤムーン、アイルハヴアナザーという3頭の種牡馬がそれぞれ好走馬を出しており、昨年2着のウインマーベルの活躍からもまだまだ軽視できない名血です。

フォーティナイナー(過去10年),ⒸSPAIA


<フォーティナイナー産駒の成績(過去10年)>
高松宮記念【2-2-1-11】勝率12.5%/連対率25.0%/複勝率31.3%/単回収率88%/複回収率208%
スプリンターズS(中山)【3-2-2-9】勝率18.8%/連対率31.3%/複勝率43.8%/単回収率95%/複回収率194%

他ではRobertoDanzig、Lyphardなどの機動力に優れた血統がスプリンターズSでは活躍しています。特に、これらの血は内枠で持ち味を生かす形がベストのため、内枠を引いた機動力型の該当馬には要注目です。昨年の勝ち馬ジャンダルムは母母父にDanzigを持ち、4代前にRobertoの血も併せ持つ配合形。1枠2番からロスなく立ち回って抜け出した競馬っぷりは、まさにこの血統らしいスプリンターズSにピッタリの走りでした。

1~10番枠での血統別成績(過去10年 ※新潟開催を除く),ⒸSPAIA


<1~10番枠での血統別成績(過去10年 ※新潟開催を除く)>
Roberto【2-3-3-11】勝率10.5%/連対率26.3%/複勝率42.1%/単回収率134%/複回収率163%
Danzig【3-3-1-16】勝率13.0%/連対率26.1%/複勝率30.4%/単回収率130%/複回収率80%
Lyphard【2-3-3-21】勝率6.9%/連対率17.2%/複勝率27.6%/単回収率25%/複回収率122%


血統解説

・ナムラクレア
3代母Coup de Genie(1993年モルニ賞、サラマンドル賞)はMachiavellian(1989年モルニ賞、サラマンドル賞)の全妹という良血。Northern Dancerの血量が多いように感じますが、母母Fountain of Peaceが同血脈を1本も持たないという、配合バランスも素晴らしい馬です。父ミッキーアイルがLyphardやDanzigなど機動力に優れた血を豊富に併せ持ち、父自身も本レースで時計差なしの2着がある点も魅力。能力、適性ともに文句なしの一頭でしょう。

・アグリ
父カラヴァッジオは2~3歳時に芝6FのGⅠを制した早熟スプリンターで、種牡馬としてもTenebrism (2021年チヴァリーパークS、2022年ジャンプラ賞)など仕上がりの早いスピード馬を多く輩出するStorm Cat系種牡馬です。さらに、本馬は母父にDanzig系War Frontを持つ機動力型で、持ち味が生かせないなかで2着と好走した前走は強いの一言。内枠を引ければ、昨年のジャンダルムと同じような競馬を見せてくれる可能性は十分にありそうです。

・ウインマーベル
昨年2着のフォーティナイナー系アイルハヴアナザー産駒。さらに、父はDanzigの4×4やLyphard、Robertoの血も内包するため、血統傾向にはピッタリの種牡馬といえるでしょう。競馬の上手さはまさに父譲りの武器。持ち味を生かしやすい内枠を引けば、今年も期待大の一頭です。


有力馬の評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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